現代の民事裁判では,法律の定めるところに従う訴訟手続の遂行が要請されている(〈法による裁判〉の要請)。もし裁判所または相手方に手続に関する法規違反の行為があれば,これによって不利益をうける当事者は,その行為に異議を述べて,その効力を争うことができる。この当事者が異議を述べる権能を,責問権という。
ところで,訴訟手続はいくつかの訴訟行為を積み重ねながら進行するものであるから,かりにそのなかの一つの訴訟行為が法規違反のために無効であった場合には,論理的には,この行為を前提として手続が進行した後においても,その後の手続もつねにすべて無効となり,手続をやり直さなければならないことになる。しかしそれでは訴訟手続の,したがってまた審理の能率が著しく害される。そこで民事訴訟法は,訴訟手続に関する法規の中には,公益上絶対に遵守すべき規定(強行規定。たとえば,裁判官の除斥,専属管轄,当事者能力等に関する規定)と,主として当事者の利益保護のために存する規定(たとえば,訴状の送達,証拠調べの方式などに関する規定)とがあることから,前者についてはともかく,後者の違反については,これにより不利益をうける当事者がその責問権を放棄する場合(この場合には強いて無効とする必要がない),さらに,当事者がその違反を知り,または知りえたにもかかわらず,遅滞なく異議を述べない場合には責問権を喪失したものとして(民事訴訟法90条),その訴訟行為をそのまま有効とし,手続の円滑と訴訟の経済を図っている。
執筆者:納谷 廣美
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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