赤穂城跡(読み)あこうじようあと

日本歴史地名大系 「赤穂城跡」の解説

赤穂城跡
あこうじようあと

[現在地名]赤穂市上仮屋

江戸時代の平城跡。おもに赤穂藩の藩庁として使用され、加里屋かりや(「前守令公御行業条目」花岳寺文書)ともよばれた。国指定史跡。江戸時代は東は千種ちくさ川最下流部の大川に接し、北は山崎やまさき山・雄鷹台おたかだい山が控え、南は播磨灘に開けた。三方を山に囲まれ、南から西にかけては海浜で満潮時には城壁に波打つ。北西に展開する城下町加里屋の北端から備前街道が西に向かい、帆坂ほさか峠越で備前国に入って山陽道に接続し、同じく城下北端から北上した姫路街道が北方周世すせ峠越で山陽道につなぐ。のち浅野氏時代には東方高取たかとり峠越となる。大川には佐用郡への高瀬舟、海路は大坂や備前牛窓うしまど(現岡山県牛窓町)に通じる防備堅固・交通至便のデルタに立地する。

〔池田氏の時代〕

慶長五年(一六〇〇)播磨一国を領有した姫路城主池田輝政の末弟池田長政が、支城として「一重ノ掻上城、堀、石垣、櫓、屏、門ヲ設ケ、北向ニ二階作リノ黒門ヲ建テ大手口トス」と伝える(赤穂郡志)。同二〇年輝政の第五子池田(松平)政綱が三万五千石で入封し(「校正池田氏系譜」鳥取県立博物館蔵)、大書院・玄関・広間・敷台・土蔵などを築造、元和七年(一六二一)の火事では「城ケ洲ノ屋敷」が残ったという(赤穂郡志)。松平輝興時代絵図には屋敷構・侍屋敷が描かれる。寛永八年(一六三一)池田(松平)輝興が入封して金間・多門・櫓・馬屋などを作ったといわれ(赤穂郡志)、松平輝興時代絵図によると、大川の右岸南端、中洲の堀・汐入りの中に石垣積の長方形に近い屋敷構があり、北に土橋を渡ると蔵屋敷と服部主水屋敷(二五間×一八間)が向き合い、さらに土橋を渡ると堀の内の北と西に三六軒の重臣邸が配置される。

〔浅野氏による本格的築城〕

正保二年(一六四五)浅野長直が五万三千石余で入封(「寛文朱印留」、「浅野赤穂分家済美録」浅野家文書)、長直によって本格的な城の拡大が始まった。入部の翌年設計がなされ、城北の愛宕山に鎮守の愛宕神社が創建された。「赤穂郡志」に「仮屋村今ノ大手口東西三百石ノ地ヲ加ヘテ新タニ城郭ヲ修ス、東西四百間・南北五百間、本丸、二・三の曲輪、櫓九、矢倉台九、天守台一ツ、大小書院・広間・玄関等ヲ作リ備ヘテ昔ノ城ニ三倍ス、家人近藤三郎左衛門ト議シテ縄張ス」とある。慶安元年(一六四八)から寛文元年(一六六一)まで一三年を費やして完成した(前守令公御行業条目)

赤穂城の形式はデルタ上のため東の大川と南の海を利用した完全な海岸平城で、本丸・二の丸・三の丸・天守台も同一平面上で一〇櫓・一二門をもつ変形輪郭式。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

国指定史跡ガイド 「赤穂城跡」の解説

あこうじょうあと【赤穂城跡】


兵庫県赤穂市上仮屋にある城跡。別名、加里屋(かりや)城。千種(ちくさ)川が播磨(はりま)灘に注ぐ海岸近くの右岸、三方を山に囲まれた場所に位置する。本丸を同心円状に囲む二の丸があり、その北側に三の丸が配された、変形輪郭式と呼ばれる配置である。本丸には5層の天守が建てられる予定で、規模の大きい天守台の石垣が残っているが、実際には築かれなかった。現在では櫓(やぐら)のある本丸門、厩口門が復元され、本丸御殿の跡も示され、三の丸の大手門・隅櫓も復元された。江戸幕府開府以来50年が経ってからの築城ながら、戦いを意識した造りで、複雑に折れ曲がった石垣や角度を変える門に特徴がある。もとは15世紀に岡氏が築いた加里屋城があり、1600年(慶長5)に姫路藩主池田輝政の弟、長政が赤穂領主となり、赤穂城の前身である陣屋形式の大鷹城を築いた。その後、笠間藩主であった浅野長直(ながなお)が赤穂に入り、1648年(慶安1)に築城が開始された。設計は家老で軍学師範の近藤正純が行い、二の丸門虎口などに著名な軍学者であった山鹿素行(やまがそこう)の意見も取り入れ、13年の歳月を経て完成した。1701年(元禄14)、赤穂藩主浅野長矩(ながのり)の吉良義央(よしなか)に対する江戸城中での刃傷沙汰のため浅野氏は改易、城は龍野藩主・脇坂安照預かりとなる。翌1702年(元禄15)、大石内蔵助をはじめとする赤穂浪士が吉良邸に討ち入った事件は、『忠臣蔵』として知られている。浅野氏廃絶後、永井氏が入り、1706年(宝永3)に森長直が入城して以来、森氏の居城として明治を迎える。毎年12月14日には赤穂義士祭が行われている。1971年(昭和46)に国の史跡に指定され、本丸庭園と二の丸庭園が2002年(平成14)に国の名勝に指定された。JR赤穂線播州赤穂駅から徒歩約17分。

出典 講談社国指定史跡ガイドについて 情報

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