出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報
山梨県南巨摩(みなみこま)郡身延町にある山。標高1153メートル。山頂部は準平原遺物とされる平坦(へいたん)面からなり、久遠(くおん)寺の奥の院がある。山地の東と西は断層により限られ急斜面で、山体の下部は安山岩、角閃玢(かくせんひん)岩、上方は集塊岩などからなる。全山久遠寺領で、杉林が美しい。また東方の展望に優れる山頂には久遠寺の西方からロープウェーが運行している。一般に身延山という場合、この山中にある久遠寺を意味する。日蓮(にちれん)宗の総本山で、日蓮が1274年(文永11)西谷に草庵(そうあん)を構えた日を開闢(かいびゃく)とし、11世日朝(にっちょう)により現在の地に移転改修された。山内の菩提梯(ぼだいてい)とよぶ300段に近い石段、段上の祖師堂、大本堂などの大伽藍(がらん)群、東谷、西谷の32の坊などが周辺と調和し、森厳な美しさをみせ、信者ばかりでなく観光客をも引き付ける。
[吉村 稔]
山梨県南西部にある山。標高1153m。東側は1000m近い断層(身延衝上断層)崖で富士川の谷に臨み,西は糸魚川-静岡構造線上の春木川の谷へ下るが,山頂は準平原のなごりをとどめ,平たんである。地質は,第三紀中新世中・後期の地層より成り,山腹の久遠(くおん)寺付近では泥岩,より高所では安山岩(火山角レキ岩および凝灰岩)である。身延山の名称は,一般には山名よりも日蓮宗総本山身延山久遠寺,または日蓮宗法城の域内(北は身延山,南は鷹取山,東は寺平の峰,西は春木川に限られる範囲)を指す。また春木川を隔てた西方の早川町にある七面山(1989m)も,七面天女をまつった霊場で身延山の飛地的存在である。
久遠寺の本院は,身延山の南面中腹にあり,奥之院思親閣のある山頂までは本院脇からロープウェーが通じる。寺域は杉の美林に覆われ,なかでも参道および本院への石段両側の老木は,荘厳な雰囲気をかもし出している。山麓には,八つの谷に32の坊が散在。うち20坊は宿坊も兼ね,身延参詣の信徒の宿泊所としても利用されている。国道52号線に接して建つ総門から始まって三門に至る約1.5kmの参道は,両側に旅館やみやげ物店,飲食店の立ち並ぶ門前町を形成する。JR身延線身延駅からバスの便があり,近くに下部温泉もあるため,参詣と観光とを兼ねて訪れる者も少なくない。久遠寺に伝わる文化財を収蔵する身延文庫や身延山宝物館がある。身延山南麓は,ブッポウソウ繁殖地として天然記念物に指定されている。
執筆者:横田 忠夫+平川 一臣
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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