中世から近世にかけて活躍した運送業者。車力(しやりき),車方(くるまかた)とも呼ばれた。牛に車を引かせて物資を運んだために,道路の整備された都市近郊で発達した。初見史料は11世紀はじめに成立した《新猿楽記》の記事であるが,《東大寺文書》の中に残されている1104年(長治1)の料米下行切符が詳しい様子を伝えている。これによると同年6月20日付で〈泉水(木津)車力三両料〉として米9斗と〈泉水車借三人間食料〉として米3升が支払われており,1人あたり米3斗と間食料1升が給されたことが知られる。また,同年8月には車借26人の車力料が,9月には30人の車借料が支払われていたことから,12世紀初頭の泉木津にはかなりの車借が集住していたことがわかる。このほか中世では鎌倉や京郊の鳥羽,白河の車借が有名である。江戸中期の京都には三条組,四条組の車借組織があり,京組外では東寺,上鳥羽,塔森,久我村,下鳥羽村,横大路村などの組があり,伏見には伏見組があった。下鳥羽組車借に関しては1642年(寛永19)の仲間規則5ヵ条が残っている。
→馬借
執筆者:黒川 直則
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中世に活躍した牛車(ぎっしゃ)を利用する輸送業者。「くるまがし」ともいう。『新猿楽記』には、越方部(おちかたべ)津五郎という人物が、東は大津・三津、西は淀渡(よどのわたし)・山崎の間で車借として活動していたとあり、すでに平安後期の京都周辺での車借の存在が知られる。さらに『庭訓往来(ていきんおうらい)』では車借の代表として鳥羽(とば)・白河(しらかわ)のものをあげている。車借は寺社に所属することが多く、室町期の北野神社社家の記録である『北野社家引付(ひきつけ)』によると、長享(ちょうきょう)3年(1489)に京都今小路・二条坊門烏丸(からすま)のものが同社に所属していた。山がちの日本では車借より馬借による運搬が主力であったが、近世に入っても、大津、京都、伏見(ふしみ)間では牛車が活躍していた。しかし18世紀に入ると牛車にかわって大八車が普及、発達するようになった。
[鈴木敦子]
『豊田武他編『交通史』(『体系日本史叢書24』1970・山川出版社)』▽『『中世の商人と交通』(『豊田武著作集 第3巻』1983・吉川弘文館)』
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中世~近世に車を手段とした運送業者。11世紀半ばに成立した「新猿楽記」にみえるのが早い例。東大寺では,1104年(長治元)美作国からの米・塩の輸送に山城国木津(きづ)の車借26人を動員し車力料を支払っており,当時寺家から相対的に独立した立場で営業活動を行っていた車借が,木津付近に集住していたことがわかる。ほかに京都近郊の鳥羽・白河の車借が有名だが,その活動は道路の整備された畿内・鎌倉周辺にほぼ限られた。荷物運送のほかに商業活動も行った。近世では,下鳥羽と伏見に問屋のもとに組織された大規模な車借集団が存在したが,その労働力である車力の主体は近郊の農民の兼業であった。
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…平安時代初期の延暦年間(782‐806)に清水寺が創建されて以来,人々の信仰を集めたので,この坂も洛中からの参詣路として,やや南方にある五条坂や,北方の八坂方面から当坂に通じる三年坂(一名は産寧坂(さんねいざか))とともに,しだいににぎわうようになった。また,当坂は洛中より渋谷越(ごえ)で洛東の山科に通じ,それより南方の醍醐・宇治・奈良方面へ行く道筋につながり,あるいは北方の東海道にも合流する便利な路線に位置していたので,清水寺の門前一帯を中心として早くから交通の要衝となっていたらしく,おおよそ10世紀末ごろから11世紀にかけての時期には,すでに運輸を生業としていた車借(しやしやく)や,乞食(こつじき)や,坂非人(さかのひにん)たちが相当数ここに集住して,いわゆる宿(しゆく)を形成していたと推察されている。 平安時代の最末期より南北朝時代にかけて,当坂周辺の人口はめだって増えたようであるが,その多くは,やはり車借,乞食,坂非人たちであったらしい。…
…政府はいく度か車載法という,車の荷重制限量の規定を出して規制を加えた。【館野 和己】
[日本中世]
車は中世においても使用されることは比較的少なく,車力による輸送業者車借(しやしやく)あるいは借車の活動も,馬借に比べれば格段の低調である。室町初めの《庭訓往来》に,〈鳥羽・白河の車借〉とあるように,車借の活動は,おもに京都や奈良とその外港との間の短い区間に限られていたようである。…
※「車借」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
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