会社が数種の株式を発行する場合に,一定の要件のもとに定められた転換率で,ある種の株式から他の種の株式に転換することを請求する権利が与えられている株式を転換株式という。転換権は優先株式(優先株・劣後株)に与えられることが多く,優先株式から普通株式に(ときにはより低位の優先株式に)転換することを認めるのが通常である。すなわち,会社の収益が比較的少ないときには,優先株主として一定の優先配当の支払を受けうる比較的安全な地位を保持し,会社の収益が非常に多くなれば,(非参加的優先株の場合や株式の転換率によっては)普通株式に転換することによって,より多額の配当を受けうる地位を獲得することも可能となるのである。
このように転換株式は,株式投資における安全性と投機性との両面を包含し,このような特徴を株式に付加することによって,投資者の投資意欲を刺激し,会社に必要な資金の吸引を確保ないし拡大することができるのである。
資本調達手段の多様なアメリカの制度をとりいれたものだが,日本では,数種の株式の発行があまり行われないので,転換株式の実例はあまりみられない。転換株式については,商法222条ノ2~222条ノ7に規定がおかれている。
執筆者:菱田 政宏
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2005年(平成17)の会社法制定以前に存在した制度であり、「数種の株式」が発行される場合、他の種類の株式に転換することができる権利(転換権)を与えられた株式であった。たとえば、会社経営に興味がなくもっぱら配当にしか興味がない株主のために最初は優先株を議決権を排除して発行するが、後日、営業成績いかんにより会社経営に関与したいと思えば普通株に転換して議決権を復活させられるものとすれば、新株の募集を容易に行える利点がある。転換が株主の請求によってなされるものを転換予約権付株式(旧商法222条ノ2)、会社が定款の定める事由の発生により転換することができるものを強制転換条項付株式(旧商法222条ノ8)とよんでいた。2005年制定の会社法においては、前者は取得請求権付株式(会社法108条1項5号・2項5号)に、後者は取得条項付株式(108条1項6号・2項6号)に、それぞれ対価として別の種類の株式を交付する場合(108条2項5号ロ、108条2項6号ロ)に相当する。
[戸田修三・福原紀彦]
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…(3)の利益をもって消却されることが予定されている株式を償還株式という。またこのような数種の株式を発行する場合において,ある種類の株式を他の種類の株式に転換することを請求できる株式を発行することも認められ(222条ノ2以下),これを転換株式という。さらに,利益配当に関する優先株については,その株主に議決権がないものとすることができ(242条),これを議決権のない株式という。…
…合併には,株主総会の特別決議を要する(408条)。(3)転換株式の転換,転換社債の転換,新株引受権付社債(〈株式買取権付社債〉の項参照)の新株引受権の行使,新株引受権を付与された取締役・使用人(1997年改正商法280条ノ19の定めるストック・オプション制度に基づく)の新株引受権の行使 それぞれ,転換株主,転換社債権者,新株引受権付社債権者,取締役・使用人に新株が発行される(222条ノ6,341条ノ7‐2項,341条ノ17,280条ノ22‐3項)。ただし,新株引受権行使には払込みが必要である。…
※「転換株式」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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