経営感覚に優れ、効率的で安定的な農業経営体を育成する施策を総合的に講じ、日本の農業生産の基盤となるような農業構造を確立するため、1993年(平成5)に成立した法律。農地の流動化を進め、中核的農家への農地の集積をもたらそうと、1980年(昭和55)に制定された農用地利用増進法を全面的に改正し、法律名を改めるとともに、農地流動化の促進だけでなく、経営体育成のためのさまざまな施策を規定している。
たとえば、市町村から農業経営改善計画について認定を受けた認定農業者には、法人化を支援する措置がとられるほか、外農地の集積、課税、融資、研修について特典が与えられる。農業経営改善計画とは、とくに経営規模の拡大など、経営改善に意欲のある農業者が作成するものである。また、1970年(昭和45)から設立された農地保有合理化法人が行う農地保有合理化事業(分散している農地を効率的に農業生産ができるように、経営規模の拡大や、農地の集団化を図ることなどを目的とした事業)について、従来の農地売買等事業のほかに農地信託等事業、農業生産法人出資育成事業、研修等事業が加えられた。なお、農地保有合理化法人は、以下の三つに分類されている。
(1)都道府県農業公社 都道府県単位で事業を実施する主体として、都道府県が社員または寄付財産の拠出者となった民法法人。98年度末現在、47法人。
(2)市町村及び農協 98年度末現在、7市町村、506組合。
(3)市町村農業公社 市町村段階で事業を実施する主体として市町村等が社員または寄付財産の拠出者となった民法法人(92年に追加)98年度末現在、111法人。
[山本 修]
『農林水産省構造改善局著『農業経営基盤強化促進法の解説』(1996・全国農業会議所) 農林水産省構造改善局著『農業経営基盤強化促進法運用の手引き』(1996・全国農業会議所)』
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[農地賃貸借への農水省の対応]
1970年の農地法改正は,農地法外の農地賃貸借の上述のような性格をふまえ,それを法制化し,促進することを狙ったものであるが,すでに述べたように,その意図は十分には実現しなかった。農林水産省は,その後農地法とは別の法律のもとで,農地賃貸借がしやすい事業(農用地利用増進事業,1975発足)と制度(農用地利用増進法,1980制定,農業経営基盤強化促進法に1993改正)を整え,農協の受託農業経営事業もこの制度に吸収される。従来の請負耕作は,正規の制度のもとで進展しうる条件ができたのであるが,これに併せて法律と実態の間隙を埋める事業としての性格を有した農協の受託農業経営事業は,その意義を大幅に減じている。…
※「農業経営基盤強化促進法」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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