山形県北西端、飽海郡(あくみぐん)の町。秋田県に接し日本海に臨む。1941年(昭和16)町制施行。1954年(昭和29)稲川(いながわ)、西遊佐、高瀬、吹浦(ふくら)、蕨岡(わらびおか)の5村と合併。町域は、北東端の鳥海山(ちょうかいさん)山頂から南西に成層火山の裾野(すその)が広がり、庄内(しょうない)平野の沖積地へと続く。JR羽越(うえつ)本線と国道7号が南北に通じ、345号が東西に走る。中心の遊佐はすでに平安時代の駅(うまや)にその名がみえ、早くから開発された地。中世は豪族遊佐氏の根拠地で、江戸時代は酒井氏庄内藩領。稲作中心の農業のほか、吹浦漁港を基地とした沿岸漁業、人工孵化(ふか)による月光(がっこう)川のサケ漁などの水産業も盛ん。遊佐西部、鳥海南の二つの工業団地が造成され、企業進出がみられる。北部や沿岸は鳥海国定公園域で、鳥海ブルーラインの入口にあたる吹浦には、鳥海山大物忌神社(ちょうかいさんおおものいみじんじゃ)(吹浦口之宮)や十六羅漢岩などの名所旧跡が多い。小正月行事の遊佐の「アマハゲ」行事と、8月に熊野神社で演じられる「杉沢比山(すぎさわひやま)」は国指定重要無形民俗文化財。なおアマハゲは「来訪神:仮面・仮装の神々」構成する行事の一つ(「遊佐の小正月行事」)として、ユネスコ(国連教育科学文化機関)無形文化遺産にも登録されている。漁業で財をなした青山家の旧住宅は国指定重要文化財。面積208.39平方キロメートル、人口1万3032(2020)。
[中川 重]
『『遊佐町史資料』全20巻(1977~1994・遊佐町)』
山形県北西端,飽海(あくみ)郡の町。人口1万5480(2010)。庄内平野の北端部と鳥海山南西麓からなり,西は日本海に面し海岸沿いに砂丘が連なる。西部をJR羽越本線と国道7号線が通る。中心の遊佐は,古代に遊佐駅の置かれたところで,中世は遊佐荘となり,江戸時代は庄内藩酒井氏の所領であった。周辺で産する良質の庄内米は,中小河川を通って遊佐船通りに集められ,ここから酒田まで運ばれた。現在も米作が中心であるが,砂丘地ではスイカやメロンの栽培,山麓部では畜産も行われている。月光(がつこう)川水系では明治末期以来,サケの人工孵化事業が盛んで,全国有数のサケの水揚げがある。河口の吹浦(ふくら)は漁港で,鳥海ブルーライン(1997年無料開放)の入口にあたり,町南部の蕨岡(わらびおか)とともに鳥海登山の根拠地である。付近の吹浦遺跡は石器時代の遺跡である。海岸沿いには,西浜海水浴場,十六羅漢,湯ノ田温泉などの観光地が並ぶ。鳥海山上には大物忌(おおものいみ)神社があり,南部の杉沢の熊野神社に伝わる神事〈杉沢比山〉(比山番楽)は国の重要無形民俗文化財に指定されている。
執筆者:松原 宏
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