違う(読み)チガウ

デジタル大辞泉 「違う」の意味・読み・例文・類語

ちが・う〔ちがふ〕【違う】

[動ワ五(ハ四)]

㋐比べてみて同じでない状態を呈する。相違する。異なる。「見方が―・う」「習慣が―・う」「―・った角度から見る」
両者の間に隔たりがある。差がある。また、他と異なってまさっている。「親子ほども年が―・う」「格が―・う」「おつむの出来が―・う」
前に考えていたことや取り決めたことが現実のそれと同じでない。「話が―・う」「約束と―・う」
基準となるもの、正しいものと一致しない状態である。まちがっている。「計算が―・う」「答えが―・っている」「『もしもし市役所ですか』『いいえ、―・います』」
本来の位置からずれたり、正常でない状態になったりする。「足の筋が―・った」「気が―・う」
(動詞の連用形に付いて)すれちがう、交差する、の意を表す。「出迎えと行き―・う」「すれ―・う」
顔を合わせないようにする。
「木曽に―・はんと、丹波路にさしかかって播磨の国へ下る」〈平家・八〉
[動ハ下二]ちがえる」の文語形
[用法]ちがう・ことなる――「考え方がそれぞれ違う(異なる)人の集まり」「事実と違う(異なる)報道」など、同じではないの意では相通じて用いられる。◇「異なる」は比べてみて同じでないことを表すにとどまるが、「違う」は「約束が違う」「答えが違う」「気が違う」など、あるべきこと・状態から外れることをも言う。「格が違う」「性能が違う」など、一定の水準から隔たりがある場合にも使われる。◇「異なる」は、「異なる二点を通る直線は一本のみである」など、数学用語で用いるほか、「記載の金額と現金内容の異なる場合」など文章語的である。◇類似の語に「相違する」がある。「事実と相違する」などでは相通じて用いられるが、「案に相違する」は「相違する」だけの用法。
[下接句]勝手が違う・気が違う・口と腹とは違うけたが違う筋が違う
[類語]異なるたが違えるたがえる食い違う掛け違う畑違い勝手が違うことにする

たが・う〔たがふ〕【違う】

[動ワ五(ハ四)]
相違する。一致しない。ちがう。「寸分―・わない」
ある基準からはずれる。また、従わない。そむく。「予想に―・わぬ結果」「神の教えに―・う」
[動ハ下二]たがえる」の文語形。
[類語]ちが異なる違えるたがえる食い違う掛け違う畑違い勝手が違うことにする

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精選版 日本国語大辞典 「違う」の意味・読み・例文・類語

ちが・うちがふ【違・交】

  1. [ 1 ] 〘 自動詞 ワ行五(ハ四) 〙
    1. [ 一 ] 複数のものの一部または全部が動いて、互いに一致しない動作をいう。たがう。
      1. 反対方向から来たものどうしが、互いにぶつからないで行き過ぎる。また、二つのものが動いてその場所をかえる。行きちがいになる。
        1. [初出の実例]「やりつる人は、ちがひぬらんとおもふに、いとめやすし」(出典:蜻蛉日記(974頃)中)
        2. 「このまぎれにちがひていでばやとおもへども」(出典:あさぢが露(13C後))
      2. 多くのものが、あちこちに行きかう。交錯する。
        1. [初出の実例]「おりたれば、あしのしたに、鵜飼ひちがふ」(出典:蜻蛉日記(974頃)中)
      3. 物に当たらないでそれる。はずれる。
        1. [初出の実例]「此衆は、目をかけて、背をたはめて、ちかひければ、蹴はづして」(出典:宇治拾遺物語(1221頃)二)
      4. うまく合っていたものがはずれる。骨などが本来の位置からはずれる。
        1. [初出の実例]「こしのほねがちがふたやら」(出典:虎明本狂言・飛越(室町末‐近世初))
    2. [ 二 ] 音や調子がくいちがう。また、調和しないでちぐはぐになる。
      1. [初出の実例]「きゃうがったうづらで、なきやうがちがふた」(出典:虎明本狂言・鶉舞(室町末‐近世初))
    3. [ 三 ] 抽象的な物事が一致しなくなる。
      1. 人の考えや思い、あるいは規則道理に反する。そむく。また、理解や判断が誤っている。
        1. [初出の実例]「母や師匠の御心にちがはん事、いかがすべきなれ共」(出典:曾我物語(南北朝頃)四)
      2. 予期したことや平常のことなどと相違する。くいちがう。
        1. [初出の実例]「法皇御夢想に御らんぜられつるに少しもちがはねば、真実の御たくせんよと思召し」(出典:金刀比羅本保元(1220頃か)上)
      3. 他と比較して差がある。異なる。
        1. [初出の実例]「ここらにも人々心のかわりて別々なは、かをのちかうたと同ぞ」(出典:玉塵抄(1563)一)
        2. 「余所の子共と違(チガ)って、気が付ねへでこまり切ます」(出典:人情本・春色梅児誉美(1832‐33)後)
      4. ( から転じて ) 他と異なってすぐれる。並はずれる。
        1. [初出の実例]「長さきの伊左衛門様とはちがふた物」(出典:浄瑠璃・博多小女郎波枕(1718)上)
        2. 「さすがに御祐筆の流れは違うね」(出典:湯葉(1960)〈芝木好子〉)
      5. 血のつながりが異なる。
        1. [初出の実例]「継(チガ)った母様」(出典:小夜千鳥(1901)〈永井荷風〉三)
      6. 関西地方で、体言や体言相当語句に「…とちがう」の形で付いて、上を否定し、「…ではない」の意を表わす。ぞんざいな言い方では「…ちゃう」になったり、「と」が省略されたりすることがある。「あれ、山田はんとちがうか」「お前のさがしてんの、これちゃうか」「そんなん、ちゃう、ちゃう」など。
  2. [ 2 ] 〘 他動詞 ハ行下二段活用 〙ちがえる(違)

違うの補助注記

( 1 )「たがう」より新しい語で、「たがう」の変化した語ともいう。
( 2 )[ 一 ][ 三 ]近代になってからの用法という。


たが・うたがふ【違】

  1. [ 1 ] 〘 自動詞 ワ行五(ハ四) 〙
    1. 二つ以上の物がかみ合わなくなる。いっしょにならなくなる。
      1. [初出の実例]「後(しり)つ戸よ い行き多賀比(タガヒ) 前つ戸よ い行き多賀比(タガヒ) うかがはく 知らにと」(出典:古事記(712)中・歌謡)
      2. 「うちより少将、中将、これかれ、さぶらへとてたてまつれたまひけれど、たがひつつありきたまふ」(出典:大和物語(947‐957頃)二)
    2. 事柄の内容がくいちがう。ぴったりと合わなくなる。異なる。
      1. [初出の実例]「諸家の帝紀及び本辞、既に正実に違ひ、多く虚偽を加ふ」(出典:古事記(712)序)
      2. 「かぐや姫のたまふやうにたがはず作り出つ」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))
    3. 物事にそむく。裏切る。さからう。反対する。
      1. [初出の実例]「駿河の海磯辺(おしへ)に生ふる浜つづら汝(いまし)をたのみ母に多我比(タガヒ)ぬ」(出典:万葉集(8C後)一四・三三五九)
      2. 「仏の道にこそは入らせ給はめと故大臣殿のたまはせければ、それにたがはず、若くおはするに、御ぐし下ろし給ひたる」(出典:今鏡(1170)六)
    4. ( 「仲をたがう」の形で ) 人間関係がしっくりいかなくなる。仲たがいをする。→仲をたがう
    5. いつもと変わる。正常でなくなる。おかしくなる。
      1. [初出の実例]「かいにもあらずと見給ひけるに、御心ちもたかひて」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))
      2. 「こほりふたがりたる水を多くかけさせたまけるに、いといみじくふるひわななかせたまて、御いろもたかひおはしましたりけるなむ」(出典:大鏡(12C前)一)
  2. [ 2 ] 〘 他動詞 ハ行下二段活用 〙たがえる(違)

違うの語誌

( 1 )上代から例があり、中古以降もごく一般に用いられた。同様な意味を表わすものに「たがふ」から変化したものともいわれる「ちがふ」があり中古から用いられるが、「たがふ」より例は少ない。
( 2 )「たがふ」は、文章語としては、近世に入っても例が多いが、近世初期の口語資料である「きのふはけふの物語」(一六一四‐二四頃)では、「ちがふ」は見られるが「たがふ」はなく、今日では、口頭語としては、ほとんど用いられなくなった。

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