江戸時代の鹿児島(薩摩(さつま))、佐土原(さどわら)、飫肥(おび)、高鍋(たかなべ)各藩の農業経営、農政および農地の制度。固有名詞に「門(かど)」をつけた記載は大隅(おおすみ)(建久図田帳(けんきゅうずでんちょう))などで12世紀に見えているが、内容はわからない。中世には、島津氏が複合家族による農業経営のおもな単位を門とした。島津氏は近世成立期には、農地の一定期間ごとの割替(わりかえ)と均等配分を念頭に、均質的な農地による門を基礎とした農業経営体を確立しようとした。これを領内全域に適用したのが門割で、18世紀の享保(きょうほう)の検地以降に完成した。門は、各家族を率いる1人の名頭(みょうず)と複数の名子(なご)、すなわち複数の家族(家部(かぶ))で構成されていた。1家族からなるなど小規模なものは屋敷などという。模式的には門は数家族で構成され、一定の土地(農地)を受け、一定期間ごとに、村長(むらおさ)(庄屋ともいう、郷士(ごうし)層)のもとで名頭が、籤(くじ)などで農地を割り替え、配分した。耕作、夫役(ぶやく)の担当責任者は15~60歳の男性「用夫(いぶ)」で、配置換えも行われ、この用夫の人数が農地配分の基礎になった。年貢、夫役は規定上では過多だったが、地目が多様で、運用にくふうができた。門は「門-方限(ほうぎり)-村-郷-国」という鹿児島藩農政上の基礎単位でもあった。鹿児島藩だけでなく、隣接藩も制度として採用した。
[三木 靖]
『『鹿児島県史』(1939~2006)』▽『松下志朗著『幕藩制社会と石高制』(1984・塙書房)』▽『『宮崎県史』(1997~2000)』▽『桑波田興著「外様藩藩政の展開」』
…1878年から1940年までつづいた日本独特の地方税。戸数割の原型とみられるものとしては江戸時代から門割(かどわり),小間割,間口割と呼ばれる家屋税に近いものもあり,人頭税に類するもの(沖縄ほか)もあった。明治に入り,1878年7月の地方税規則により,それまでの府県税(1875年雑税・賦金を整理)および民費を,地租割,営業税・雑種税,戸数割の3種と定めたことによって,三新法体制下の地方税として登場した。…
…その内容,形式は各地で異なり,田のみを割り替える場合,田畑ともに割替えを行う場合,古田のみ行われる場合,新田のみの場合,山林・秣場(まぐさば)についても行われる場合などがあり,年限も3年,5年,10年あるいは20年などいろいろで,割替えの標準も,そのつど配当割数に増減のある場合と,配当数がつねに一定不動の場合とがある。その呼名も割地・地割のほか碁盤割(加賀,能登,越前),苗割もしくは名割,軒前割(越後),田分け(丹後),鬮持(くじもち)(宇和島),地組(筑後),門割(かどわり)制度(薩摩)など,いろいろである。 割地発生の由来については,共同開墾地の利益の均分から発生したとする共同開墾説,水損を均分するためという水損均分説,土地の肥瘠・便否を平均し貢租の負担を公平にするために行われたとする徴税便宜説,班田制を耕地共有制とみなしてその遺制とする班田遺制説などがある。…
※「門割」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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