開ける(読み)ヒラケル

デジタル大辞泉 「開ける」の意味・読み・例文・類語

ひら・ける【開ける】

[動カ下一][文]ひら・く[カ下二]
狭い状態から広い状態になる。「バイパスにはいると急に道が―・ける」
(「展ける」とも書く)遮るものがなく広く見渡せるようになる。「眺望が―・ける」
文明人知などが進む。「―・けた国」
人が多く住むようになってにぎやかになる。「工場の移転で急速に―・けた地域」
よいほうへ向かう。先の見通しが明るくなる。「運命が―・ける」
人情に通じ、話がわかる。「彼は―・けた人である」
悩みがなくなり晴れ晴れとする。「気持ちが―・ける」
道路・交通機関などが通じる。「鉄道が―・ける」
物事が始まる。
天地あめつちの―・け始まりける時」〈古今仮名序
10 花が咲く。つぼみがほころびる。
「それもがと今朝―・けたる初花に劣らぬ君がにほひをぞ見る」〈賢木
11 忌み詞で、遠く落ちのびる。
「敵御方一万二千余騎、東に―・け」〈太平記・三〇〉

はだ・ける【開ける】

[動カ下一][文]はだ・く[カ下二]
手や足を大きく広げる。また、目・口などを大きくあける。
「指の股を思い存分―・けた両手で」〈有島星座
衣服の前などを広げる。「胸を―・ける」
火鉢の炭を―・けて」〈風葉青春
衣服の前などが乱れてひらく。はだかる。「裾が―・ける」
[類語]諸肌を脱ぐ肌脱ぎ

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「開ける」の意味・読み・例文・類語

ひら・ける【開】

  1. 〘 自動詞 カ行下一段活用 〙
    [ 文語形 ]ひら・く 〘 自動詞 カ行下二段活用 〙
  2. 閉じているものが広がりあく。また、さえぎるものがない。
    1. (イ) ふさがれていた場所・建物などが開放される。広くなる。
      1. [初出の実例]「惟古に天軌辟(ヒラケ)ず、何ぞ純絜に紛にあへる」(出典:漢書楊雄伝天暦二年点(948))
      2. 「田野ひらけ平にして」(出典:太平記(14C後)二六)
    2. (ロ) 花などがほころびる。ひらく。
      1. [初出の実例]「一切の華葉、悉皆敷(ヒらケ)栄え」(出典:地蔵十輪経元慶七年点(883)八)
    3. (ハ) ( 「心が開ける」「眉が開ける」などの形で ) 心が晴れる。
      1. [初出の実例]「久方の月夜を清み梅の花心開(ひらけ)て吾が思へる君」(出典:万葉集(8C後)八・一六六一)
    4. (ニ) 天空が明け広がる。
      1. [初出の実例]「五かうの天もひらくれは二ゑのいしゃうを、ぬきおきてそおち給ふ」(出典:浄瑠璃・明石(1645)四)
    5. (ホ) ( 「展」とも ) 道、前途、展望などが広がる。
      1. [初出の実例]「烏帽子山脈の大傾斜が眼前に展(ヒラ)けて来る」(出典:破戒(1906)〈島崎藤村〉七)
    6. (ヘ) 道路や交通機関などが通じる。比喩的に、気持が通じ合ったり、やり方の道筋がわかったりすることもいう。
      1. [初出の実例]「未だ道路が開(ヒラ)けないので」(出典:空知川の岸辺(1902)〈国木田独歩〉一)
  3. 物事が始まる。けじめがついて、ことが新しくなる。興る。
    1. [初出の実例]「このうた、あめつちのひらけはじまりける時より」(出典:古今和歌集(905‐914)仮名序)
  4. 不明のことがわかる。解明される。
    1. [初出の実例]「上果仏田の文、万古を歴て開(ヒラケ)(す)」(出典:大慈恩寺三蔵法師伝承徳三年点(1099)一〇)
  5. 良い状態になる。繁栄したり幸運な状態になったりする。
    1. [初出の実例]「入道殿下の御栄花もなにによりひらけ給ふぞと思へば」(出典:大鏡(12C前)一)
  6. 物事が進歩する。進む。
    1. (イ) 文化などが進む。文明が進歩する。開化する。
      1. [初出の実例]「なにはの浦に年をへて、開くるよよの恵みをうくる」(出典:車屋本謡曲・難波梅(1427頃))
      2. 「世の中が開(ヒラケ)るに従て」(出典:交易問答(1869)〈加藤弘之〉上)
    2. (ロ) 人の性質などが進歩的で理解がある。世情に通じ野暮(やぼ)でない状態にある。
      1. [初出の実例]「今の世(よ)せかいにゑりもとへつかないのハやぼのゆきどまりでそれがひらけないのだと」(出典:安愚楽鍋(1871‐72)〈仮名垣魯文〉三)

はだ・ける【開】

  1. [ 1 ] 〘 他動詞 カ行下一段活用 〙
    [ 文語形 ]はだ・く 〘 他動詞 カ行下二段活用 〙 開き広げる。
    1. (イ) 手、足などを大きく広げる。
      1. [初出の実例]「大手をはたけて追ける間」(出典:梵舜本太平記(14C後)一〇)
    2. (ロ) 目や口などを大きくあける。〔運歩色葉(1548)〕
    3. (ハ) 着物胸元や裾などを広げる。
      1. [初出の実例]「此尼取もあへず、又まへをはたけ」(出典:古今著聞集(1254)一六)
  2. [ 2 ] 〘 自動詞 カ行下一段活用 〙
    [ 文語形 ]はだ・く 〘 自動詞 カ行下二段活用 〙
    1. 着物の前がだらしなくひらく。着物の前があいて肌(はだ)が露出する。
      1. [初出の実例]「寝乱れた襟は寛(ハダ)け勝に胸の白いのが覗かれる」(出典:多情多恨(1896)〈尾崎紅葉〉前)
    2. 騒動や事件がおこる。出来(しゅったい)する。
      1. [初出の実例]「ああ、とんだ事がはだけました」(出典:歌舞伎・因幡小僧雨夜噺(1887)序幕)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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