開闔(読み)カイコウ

デジタル大辞泉 「開闔」の意味・読み・例文・類語

かい‐こう〔‐カフ〕【開×闔】

《「かいごう」とも》
開くことと閉じること。
「―往来しばらくもやまぬ景色たえなるを賞玩しょうがんした」〈蘆花思出の記
平安時代朝廷記録所御書所和歌所・文殿などの職名書物出納雑務従事
鎌倉室町時代引付ひきつけ侍所さむらいどころなどの職名。訴訟事務の進行などにあたった。

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精選版 日本国語大辞典 「開闔」の意味・読み・例文・類語

かい‐こう‥カフ【開闔】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「かいごう」とも )
  2. 開くことと閉じること。
    1. [初出の実例]「排風封霞。無門扃開闔」(出典朝野群載(1116)三・山亭起請〈兼明親王〉)
    2. [その他の文献]〔老子‐一〇〕
  3. 朝廷の記録所、和歌所などにおかれた職名。書物、資料の出納管理等雑務のことをつかさどる。
    1. [初出の実例]「可彼所学生十二人〈略〉但開闔散位惟貞、学生巨勢為時等也」(出典:小右記‐永観二年(984)一二月八日)
  4. 中世、鎌倉・室町幕府の職名。当該機関構成員のうち、最も職務に熟達した者が任ぜられ、訴訟事務の進行等にあたった。
    1. [初出の実例]「評定沙汰事、〈略〉引付勘録事書を読上、是を読進申と云、非開闔者不之」(出典:沙汰未練書(14C初))

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改訂新版 世界大百科事典 「開闔」の意味・わかりやすい解説

開闔 (かいこう)

平安時代以降,公家武家を通じてある種の役所ないしは部署に置かれた役職の一つ。おおむね,その役所ないしは部署の事務を統轄するものであった。朝廷では,和歌所,御書所,内御書所,記録所,院文殿などに置かれ,また摂関家文殿にもみられる。たとえば記録所では,上卿-弁-開闔-寄人という職員構成であったように,開闔はその役所,部署の長官ではないが,いわば事務主任とでもいうべき要職であって,多く能吏が任命された。武家においては,鎌倉幕府,室町幕府の引付(ひきつけ)に開闔が存在した。引付は訴訟審理の専門機関であり,若干名の引付衆(室町幕府では内談衆とも呼ばれた)と若干名の引付奉行人とから成るが,引付衆の上首が頭人,引付奉行人の上首が開闔である。開闔は当該引付における訴訟事務を指揮,統轄する。特に鎌倉幕府においては,当該引付で作成した判決原案(すなわち〈引付勘録事書〉)を評定の席で読み上げることは開闔の専当事項であった。室町幕府においてはこのほか侍所,地方(じかた)にも開闔があった。また禅律方開闔,神宮開闔もあった。
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普及版 字通 「開闔」の読み・字形・画数・意味

【開闔】かいこう

開閉

字通「開」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の開闔の言及

【内談】より

…それによれば引付内談は,定期的には月6回,引付頭人邸で開かれ,引付衆および奉行人が出席する。奉行人中の古参者が会議の事務長役である開闔(かいこう)を務める。会議では,開闔による案件説明の後,メンバーがあらかじめくじによって決められた順番に従って意見を述べる。…

【和歌所】より

歌会始【藤岡 忠美】
[和歌所寄人]
 和歌所の職員は寄人(よりうど),また召人(めしうど)とよばれた。《後撰集》の撰者5人は〈梨壺の五人〉として著名だが,1201年7月,後鳥羽院の院宣によって開設された和歌所には,源家長を開闔(かいこう)(書物の出納・管理等にあたる職)として,当代の有力歌人の藤原良経,源通親,藤原俊成ら14人が寄人に任命された。同年11月にはこの寄人の中から,源通具,藤原定家ら6人が《新古今集》の撰者となっている。…

※「開闔」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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