鎌倉末・南北朝の臨済宗の禅僧。京都の妙心寺の開山。信濃の高梨氏の出身で,同家は信濃源氏の一系といわれ,また禅宗との関係もあり,関山がはじめに学んだ禅僧月谷宗忠は叔父であったと伝えられる。1307年(徳治2)鎌倉の建長寺に入り南浦紹明(大応国師)にあい慧眼の名をもらい,南浦寂後も鎌倉にあって物外可什,巨山志源などに参禅して修行した。その後信濃に帰り,27年(嘉暦2)建長寺開山大覚禅師(蘭渓道隆)五十年忌出席のため再び建長寺に行き,西来院での宿忌(しゆくき)法要にのぞみ,そこで某僧から宗峰妙超(大灯国師)を教えられた。京都大徳寺の宗峰に謁して師事し,修行に専念すること2年を経て雲門の関字の公案をさとり,29年(元徳1)宗峰がそれを証明し,関山の号が与えられ,また慧眼を慧玄と改称した。この年宗峰の代理で後醍醐天皇に法を説くなどしたが,のち美濃の伊深に草庵を結んで隠棲生活に入った。37年(延元2・建武4)花園上皇は,参禅問法するための禅僧の推薦を宗峰に求め,また花園の離宮を禅苑に改めてその寺名命名を依頼されたが,宗峰は関山を推挙し,正法山妙心寺とした。関山は妙心寺開山となり,玉鳳院から参禅する花園上皇に法を説き,弟子の指導にあたったが,その後妙心寺を退き遠州に草庵を結んだ。51年(正平6・観応2)綸旨によって再び妙心寺に住して,修禅を専らとする枯淡な禅風を宣揚し,《沙石集》には〈本朝ならびなき禅哲なり〉と称賛されている。形式的な読経規式にこだわらず厳しく学徒を指導し,法を嗣ぐことを許した弟子(法嗣)は授翁宗弼(じゆおうそうひつ)(1296-1380)ただ一人であり,また妙心寺の伽藍や経営に意を用いることがなかった。1360年12月12日,関山は旅の支度をして授翁に行脚に出るといい,風水泉と称する井戸の辺で授翁に遺戒し,立ったまま息をひきとった。遺戒は授翁が門下の雲山宗峨に成文させ,今日〈無相大師遺誡〉と称し読誦されている。遺骸は妙心寺の北東隅に葬られ,塔を微笑塔と称す。本有円成,仏心,覚照,大定聖応,光徳勝妙,自性天真,放無量光の国師号が歴朝から与えられ,無相大師の号は明治天皇から追諡(ついし)された。現在語録は伝わらず,〈慧玄が這裏に生死なし〉〈柏樹子の話に賊機あり〉等の法語が知られる。また遺命して肖像を残さず,今日の関山像は後世につくられたものである。関山の禅は,近世期に白隠慧鶴がでて大いにさかえ,他の臨済宗諸派が絶法したのに対し,その法灯を今日に伝えている。
執筆者:竹貫 元勝
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南北朝初期の僧。臨済宗妙心寺派の祖。信濃(しなの)(長野県)中野の城主高梨(たかなし)氏の二子として出生、鎌倉建長寺の広厳庵(あん)で東伝士啓(とうでんしけい)(?―1374)について出家。1307年(徳治2)大応国師南浦紹明(なんぽじょうみょう)より慧眼の名を受けて修行したが、のち京都紫野(むらさきの)大徳寺の大燈(だいとう)国師宗峰妙超(しゅうほうみょうちょう)に参じ、1330年(元徳2)雲門文偃(うんもんぶんえん)がただ一字で学人を接得した「雲門の関字」の公案により悟りを開き、関山慧玄の名を与えられ、大燈の法を嗣(つ)いだ。1337年(延元2・建武4)花園(はなぞの)上皇が離宮を禅刹(ぜんさつ)に改めたとき、招かれて開山となり、寺名を正法山(しょうぼうざん)妙心寺とした。師の法系を「応・燈・関の一流」といい、すこぶる重視されている。後世、明治天皇より無相大師と追諡(ついし)された。著述に『関山和尚(おしょう)百則公案』1巻がある。
[鈴木格禪 2017年6月20日]
(竹貫元勝)
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…花園上皇は大徳寺開山の宗峰妙超(しゆうほうみようちよう)(大灯国師)に参禅して禅要をきわめていたが,1337年(延元2∥建武4)妙超が病臥すると,その離宮の萩原殿を寺に改め,住持の推挙と寺号の命名を妙超に求めた。妙超は法嗣の関山慧玄(かんざんえげん)を推し,正法山妙心寺と名づけたのが当寺の起源である。慧玄は権力に接近することを嫌い,修業第一に徹し,清素な生活の中で峻厳枯淡の禅を追求したが,この開山の禅風はその後の当寺の伝統となった。…
※「関山慧玄」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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