院庁(読み)いんちょう

精選版 日本国語大辞典 「院庁」の意味・読み・例文・類語

いん‐ちょう ヰンチャウ【院庁】

※天草本平家(1592)四「Inchôno(インチョウノ) ヲクダシブミヲ クダサリョウズルカト マウシタレバ」

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デジタル大辞泉 「院庁」の意味・読み・例文・類語

いん‐ちょう〔ヰンチヤウ〕【院庁】

院の庁

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改訂新版 世界大百科事典 「院庁」の意味・わかりやすい解説

院庁 (いんのちょう)

上皇に付属する家政機関。別当以下の院司いんし)がその職員で,院庁下文(くだしぶみ),院庁牒などがその発給文書である。宇多上皇の院中にみえる〈院庁雑色〉がその初見で,円融上皇のとき院庁始が行われたことも記録に見える。院政が開始されるや,執政の上皇の院司は強大化し,後白河院政以降は,院庁が国政運営の一端を担った例もあるが,それでも院政の中心機関となることはなかった。ことに文献上の用例では〈院庁〉の語は限定した意味に用いられることが多く,院司機構のなかで,別納所などの分課的な機関に対し,別当-判官代-主典代の系列のもとで,院中の雑務を執行する下級庶務機関を指した。公文・雑掌を含む庁官や舎人,雑色によって構成され,鎌倉時代以降は庁年預が置かれて統轄し,主典代がこれを兼ねる例となった。なお女院(によいん)の庁は,最初の東三条院については明徴を欠くが,次の上東門院の院中にはその存在が確認できる。
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百科事典マイペディア 「院庁」の意味・わかりやすい解説

院庁【いんのちょう】

院司(上皇法皇・女院(にょいん)・後院(ごいん)などに仕えて院中の諸事をつかさどる職員)の役所をいうが,狭義には院政をとる上皇の政務機関のこと。
→関連項目院宣西面の武士別当

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「院庁」の意味・わかりやすい解説

院庁
いんのちょう

上皇や女院に付属して院中の諸務を処理する役所。とくに主典代(しゅてんだい)(庁年預(ちょうのねんよ))の管する下級庶務機関に限定した用例も多い。宇多(うだ)上皇の院中に「院庁雑色(ぞうしき)」がみえるのは、その存在を示す早い例である。譲位後または女院号宣下(せんげ)後の吉日を選んで院庁始(はじめ)すなわち開庁式を行う。院政開始以後、政務をとる上皇の院庁はとくに拡充され、しだいに国政にも関与し、その発行する院庁下文(くだしぶみ)、院の牒(ちょう)の権威も高まった。

橋本義彦

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「院庁」の意味・わかりやすい解説

院庁
いんのちょう

上皇の政務を司る場所。永観2 (984) 年円融上皇によって設置されたのが最初である。初めは王臣家の家政機関である政所と同じであったが,院政が始るとその執行機関となり,院政の進展に従って院庁も拡大強化された。その職員である院司には別当,年預 (ねんよ) ,判官代 (はんがんだい) ,主典代 (しゅてんだい) などがおり,政務を司り,院政の実権を掌握していた。院庁は院司が院の命令を奉じて出す院宣と,太政官の官宣旨の形式による院庁下文 (くだしぶみ) を発給して政治的機能を果した。女院にも院庁がおかれたが,政治的機能はなかった。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「院庁」の解説

院庁
いんのちょう

上皇・女院(にょいん)の家政機関。その職員を院司と称し,別当・判官代(ほうがんだい)・主典代(しゅてんだい)・公文(くもん)・院掌・雑色(ぞうしき)などの構成員があった。発給文書として院庁下文(くだしぶみ)・院庁牒(ちょう)などがある。宇多上皇の時代にその原型が存在し,院政時代以降,組織は拡大・整備され,国政上重要な役割をはたすようになった。鎌倉中期の後嵯峨院政の時代には,鎌倉幕府の制にならって評定衆がおかれた。狭義には,庁官など院司のなかで院内庶務を処理する下級職員によって構成される機構を院庁と称した。鎌倉時代以降は院司の1人が庁年預(ねんよ)となって統轄した。

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旺文社日本史事典 三訂版 「院庁」の解説

院庁
いんのちょう

上皇の御所である院の事務をとる役所
宇多上皇の時代に原型があった。院政開始とともにその執行機関となり重要性をもつようになった。その職員が院司。

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