桃山~江戸初期の画家で,雲谷派の祖。肥前国(佐賀県)藤津郡能古見城主原豊後守直家の次男で,もと原治兵衛直治といった。主家滅亡後,画家となったものとみえ,天正年間(1573-92),佐世宗孚を寄親(よせおや)として,広島城主毛利輝元に,知行200石で召し抱えられた。1588年筑前に移封された小早川隆景の名島城の襖絵と伝える《梅に鴉図》(京都国立博物館)があり,同年新造の大徳寺塔頭(たつちゆう)黄梅院(小早川・毛利家外護)には,《山水図》《竹林七賢図》《芦雁図》などの障壁画が残るので,遅くとも40歳前後には,独自の風格ある画境を確立していたといえる。画風は雪舟流の水墨山水を,桃山的な大画面様式に適応させたもので,師承関係は明らかでないが,中国・北九州地方にあって,雪舟系統の作家・画跡に学び,京都で狩野派に学んだものであろう。93年(文禄2)毛利輝元から雪舟筆《山水長巻》(毛利報公会)を与えられ,雪舟の旧居雲谷庵を賜って剃髪し,雲谷等顔(雪舟等楊の等字を継承)と改名した。再興雲谷庵主として雪舟正系を標榜し,狩野派,長谷川派と画技を競ったが,雪舟に私淑する度合が大きく,復古的,もしくは観念的という批判もある。しかし,その筆致構成の大胆・克明さと冷厳沈着な武家好みの画境は,単なる旧派や雪舟亜流の位置を脱し,茶の湯,連歌のたしなみもあったという人格と合わせて,すぐれた時代精神の表白と見ることもできる。1611年(慶長16)法橋叙位。《山水人物図屛風》(東京国立博物館),《群馬図屛風》(京都国立博物館),《竹林七賢図屛風》(永青文庫)などのほか,《花見鷹狩図屛風》(MOA美術館)など彩色の風俗画もある。
執筆者:中島 純司
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桃山時代の画家。雲谷派の祖。肥前国藤津(ふじつ)郡(佐賀県)能古見(のごみ)城主原豊後守(ぶんごのかみ)直家の次男として生まれ、名を直治(なおはる)、通称を治兵衛といった。天正(てんしょう)年間(1573~92)父直家は肥前国有馬で戦死、自家は絶えた。このころ広島城主毛利輝元(もうりてるもと)に知行200石で召し抱えられ、のち1604年(慶長9)輝元の国替(くにがえ)に伴い、長門(ながと)国(山口県)の萩(はぎ)に移った。しかし、都での画名も高く、上京することもしばしばであった。画(え)は、初め狩野松栄(かのうしょうえい)に学ぶが、また他の桃山期の画家がそうであったように、狩野永徳(えいとく)の作品からの影響も見逃せない。
のち雪舟(せっしゅう)に私淑、輝元の命で雪舟筆『山水長巻』を模写し、その恩賞によって、1593年(文禄2)雪舟ゆかりの雲谷庵(あん)と、この長巻とが彼にゆだねられた。これを機に剃髪(ていはつ)し、姓も雲谷と改め、名も雪舟の諱(いみな)「等楊(とうよう)」から一字をとって等顔と称したという。自ら雪舟3代を主張し、山口の地にあって桃山画壇に独自の流派を形成した。画は雪舟の雄勁(ゆうけい)な水墨法を受け継ぎながらも、整然たる構図のなかに端正で高雅な様式をもったものが多い。1611年法橋(ほっきょう)にも叙せられ、元和(げんな)4年5月に没した。墓は山口県萩市の楞厳寺(りょうごんじ)にある。代表作には、大徳寺黄梅院障壁画(しょうへきが)、東福寺普門院(ふもんいん)障壁画、『梅に鴉図(からすず)』襖絵(ふすまえ)(京都国立博物館)、『春夏山水図屏風(びょうぶ)』などがある。
[榊原 悟]
『河合正朝著『日本美術絵画全集11 友松/等顔』(1981・集英社)』
(川本桂子)
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1547~1618.5.3
桃山時代の画家。雲谷派の祖。名は直治。肥前国能古見城主原直家の次男。父の戦死後,広島城主毛利輝元のお抱え絵師となる。1593年(文禄2)命により雪舟筆「山水長巻」を模写。雪舟の旧跡雲谷庵を復興して雪舟正系を標榜(ひょうぼう)し,雲谷等顔を名のる。雪舟様の形式美を示す水墨山水図を数多く描いた。代表作は88年(天正16)創建の大徳寺黄梅院方丈障壁画。1611年(慶長16)法橋に叙せられる。
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