出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報
長野県中央部,諏訪湖の北にある車山(1925m)を主峰とする楯状火山および西部から北西部一帯にひろがる高原をさしていう。標高1500m内外の広大な高原は明治以降毎年火入れをして地元住民の牧場として利用されてきたが,昭和初期にグライダー練習場,スキー場として開発され,第2次大戦後観光地化が進んだ。富士山,八ヶ岳,木曾山脈,飛驒山脈,赤石山脈などの眺望がよく,ニッコウキスゲなど植物が豊富である。また高原の北部には,七島八島(ななしまやしま)と呼ばれる標高1665mの高層湿原があり,天然記念物に指定されている。高原の中央にある御射山(みさやま)遺跡は,中世に諏訪大社下社の御射山祭が行われたところで,周辺の階段状の地形は桟敷であったとされる。霧ヶ峰は上諏訪温泉に近く,また有料道路のビーナスライン(2002年無料開放)などの交通の便がよいことから,八ヶ岳中信高原国定公園の中心的な存在になっている。
執筆者:市川 健夫
霧ヶ峰は諏訪湖北岸に広がる古い安山岩質の成層火山の上にのっている。八ヶ岳火山列の北西延長上にあるが,さらに古い火山活動によるものである。下部の溶岩は石英安山岩ないし安山岩で,和田峠一帯に分布する黒曜石はその一部に当たる。上部の溶岩は板状節理の著しい安山岩で,石材として切り出され,鉄平石と呼ばれる。溶岩の残留磁気は現在の方向と逆向きに磁化しており,70万~250万年前の松山反転期(松山基範(もとのり)にちなんだ地球磁場の反転期のこと)に当たるとされている。カリウム・アルゴン法による噴出年代は120万年前である。霧ヶ峰高原は最後に噴出した溶岩流によってつくられた火山の原地形面が残ったものである。著しい活断層群によって切断されており,その鉛直変位は280m,水平変位は450mに達する。
執筆者:村井 勇
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
長野県中央部、諏訪(すわ)湖北東方にある高原。八ヶ岳(やつがたけ)中信高原国定公園の一中心地で、最高峰車山(くるまやま)(1925メートル)を中心に、標高1600~1800メートルの一大草原が波浪状に展開している。この草原は地元市町村の放牧地であった。起伏の間の低地には八島ヶ池(やしまがいけ)、鎌ヶ池(かまがいけ)などもあり高層湿原地帯として有名。高原一帯には数百種もの草木があるといわれるが、とくにニッコウキスゲの大群落は高原の名物。7月中~下旬の見ごろは壮観である。また、湿原に湿原植物群落があり、なかでも八島ヶ原湿原は日本の典型的高層湿原といわれ、ミズゴケ類が多く泥炭層が厚く堆積(たいせき)し、国指定天然記念物になっている。この近くには鎌倉時代、関東・信濃(しなの)の武士たちが狩猟を競い、互いに武技を競い合った場所である旧御射山遺跡(もとみさやまいせき)もある。強清水(こわしみず)近くの丘陵上には1933年(昭和8)日本初のグライダー格納庫が建設され、今日までとぎれることなくグライダー飛行が続けられている。車山の後ろ斜面は夏はパラグライダー訓練地、冬はスキー場になる。また、高原の北端和田峠付近は、石器時代の石鏃(せきぞく)の材料になった黒曜石が出る。長野県の代表的山岳観光道路ビーナスラインが高原上を走っている。上諏訪駅からバスが通じ、車山―沢渡(さわたり)―旧御射山―八島ヶ原湿原―鷲ヶ峰(わしがみね)―和田峠のハイキングコースがある。
[小林寛義]
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出典 日外アソシエーツ「事典・日本の観光資源」事典・日本の観光資源について 情報
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