雅楽,管絃,舞楽の曲名。唐楽にふくまれ盤渉(ばんしき)調。二人舞の文ノ舞(平舞)。清海波,静海波,青海破とも書く。舞楽のときは,《輪台(りんだい)》(盤渉調,四人舞)を序,《青海波》を破として続けて舞う。舞楽の中では珍しく,箏と琵琶が伴奏に用いられるので,〈管絃舞楽〉と呼ばれる。番舞(つがいまい)は《敷手(しきて)》。《輪台》は左方襲(さほうかさね)(常)装束に別甲(べつかぶと)を,《青海波》はこの曲用の別装束の袍を片肩袒(かたかたぬぎ)に,別甲をかぶり,太刀を腰につけて舞う。《青海波》の袍は青海波の地紋に千鳥模様を刺繡した麴塵袍(きくじんのほう)といい,舞楽装束のうちでもっとも華麗なものである。輪台,青海はともに中国の西域地方の地名とされ,《輪台》は唐時代に中国で作られ日本に伝えられたとする説や,承和年間(834-848)に勅命によって,大納言良岑安世(よしみねのやすよ)が舞を作り,小野篁(おののたかむら)が詠(えい)(現在,詞のみ残っているが,発声法が伝わっていない)を作ったという説もある。一方,《青海波》は,音楽を太田麿あるいは大戸清上(おおとのきよがみ),舞を良岑安世が作ったとされる。この曲を正式に演奏するには多くの人数と時間,それに複雑な作法を必要とするので,近来は省略した形で行われている。演奏次第は,盤渉調調子・音取-延輪台(《輪台》の曲をゆっくり奏する。早八拍子,舞人登場)-早輪台(《輪台》を舞楽吹で早く奏する。早八拍子,当曲舞)-青海波(早八拍子,当曲舞)-延輪台(退場)。《輪台》の舞人4人のうち上位2人は先に舞台を降り,残り2人は舞い続ける。《輪台》の舞が終わらないうちに《青海波》の舞人が登場し,《輪台》の2人と行違いに舞台に登る。《輪台》が終わるとすぐに《青海波》の演奏がはじまり,舞人も舞いはじめる。《青海波》には両手を振り上げたり下ろしたり,波を思わせる振りが多く,打物にも千鳥懸(ちどりがけ),男波(おなみ),女波(めなみ)など特殊な手法が用いられる。また《輪台》《青海波》ともに管絃曲としても奏されるし,《青海波》は黄鐘調に渡物(わたしもの)がある。
なお同名の曲が清元節(1897,作詞永井素岳,作曲2世清元梅吉)および都山流尺八本曲(1904,作曲中尾都山)にあるが,雅楽曲との関係はない。
執筆者:加納 マリ
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雅楽の曲名。「静海波」「清海波」「青海破」とも書く。唐楽で、左舞(さまい)。舞人は2人で、四人舞の『輪台(りんだい)』と続けて一組で奏される。曲名は西域の青海(せいかい)地方(中国青海省)の地名による。『輪台』と同じく伝来当時は平調(ひょうじょう)であったが、仁明(にんみょう)天皇(在位833~850)のとき、勅命により盤渉(ばんしき)調に改作される。当曲を繰り返し奏する間に、「詠(えい)」「音取(ねとり)」「唱歌(しょうが)」「吹渡(ふきわたし)」といった一連の小曲を差し挟む長大なもので、最後はふたたび『輪台』が奏され、舞人は楽人とともに行列をして退場する。実際には「詠」の詞(ことば)など、伝承が欠け不明な部分が多いため、略式で奏される。打物には「千鳥懸(ちどりがけ)」「男波(おなみ)」「女波(めなみ)」の特殊奏法がある。装束はこの舞専用の別装束で、下襲(したがさね)の波文がいわゆる「青海波文」である。舞楽であるが、正式演奏のときは「管絃(かんげん)舞楽」といい、箏(そう)、琵琶(びわ)を用いる。番舞(つがいまい)は『敷手(しきて)』。
[橋本曜子]
イチョウ形の波を左右45度の方向に反復した一種の割付け模様。元来は雅楽『青海波』の舞人の下襲(したがさね)にこの模様がつけられていたところから名づけられたという。日本では奈良時代以降今日に至るまで吉祥(きちじょう)模様の一つとして愛用されている。なお、元禄(げんろく)年間(1688~1704)江戸の塗師(ぬし)勘七が、特殊な刷毛(はけ)を使って黒漆でこの波模様を描くのを得意としたため、青海勘七とよばれた。彼により当時の流行模様となったという。
[村元雄]
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…品種には関寺(せきでら),藤万葉,白万葉などがある。またモチツツジそのものの品種には胡蝶揃(こちようぞろい),花車(はなぐるま),青海波(せいかいは),駿河万葉(するがまんよう)がある。 サツキはツツジの仲間であるが,江戸時代からツツジとサツキは区別されてきた。…
※「青海波」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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