非同盟主義(読み)ヒドウメイシュギ(英語表記)nonalignment policy

デジタル大辞泉 「非同盟主義」の意味・読み・例文・類語

ひどうめい‐しゅぎ【非同盟主義】

対立する大国や陣営のいずれにも組せず、中立の立場で積極的な平和維持をはかろうとする主義。反帝国主義・反植民地主義をも内包し、第二次大戦後、ネルーナセルチトースカルノらの外交政策の基調となり、1961年には非同盟諸国会議が開かれた。

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精選版 日本国語大辞典 「非同盟主義」の意味・読み・例文・類語

ひどうめい‐しゅぎ【非同盟主義】

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] nonalignment の訳語 ) 第二次大戦後、東西両陣営のいずれにも組せず、中立国の団結で平和を守ろうとする立場・主義。一九五六年以降、ネール、チトー、ナセルらの外交政策の基調となった。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「非同盟主義」の意味・わかりやすい解説

非同盟主義
ひどうめいしゅぎ
nonalignment policy

いかなる種類の軍事同盟や軍事ブロックにも参加せず、外国軍隊の駐留や外国の軍事基地の設置も認めず、紛争の拡大を防止し、平和と安全の強化に努力する外交上の主義をいう。これに基づく外交路線は非同盟政策であり、この政策を基本的に採用する諸国非同盟諸国である。非同盟諸国によって形成される政治勢力を第三勢力、このような勢力によって占められている地域を第三地域とよぶこともある。非同盟主義はもともと中立主義と共通するところが多いが、一般に中立主義が紛争や戦争に対する消極的不介入の要素が強いのに対し、非同盟主義は東西軍事ブロックからの自由な地位を保ち、積極的に平和の維持を図ることを強調するとともに、反帝国主義、反植民地主義を追求することを実体的に内包する。むしろ第二次世界大戦後は後者の要素が強く、人民自決権、植民地・人種差別体制の終結、新国際経済秩序の樹立、が結束の機軸をなしている感がある。

 非同盟主義はインドの首相であったネルーの外交理念に起源を発する。彼は早くもインド独立以前の1946年に「互いに対立する同盟グループの権力政治から離れて」「独立した人々の自由の原則を固守し」「搾取のない国際協力に努力する」ことを外交方針として掲げた。この考え方は55年のアジア・アフリカ会議(バンドン会議)にも大きな影響を与えた。61年には最初の非同盟諸国会議がベオグラードで開催され、非同盟主義は一大勢力となったことを誇示したが、初期の立役者はネルーのほか、エジプトのナセル、旧ユーゴスラビアのチトー、インドネシアのスカルノ、ガーナエンクルマなどの指導者たちであった。

 初期には25か国を数えるにすぎなかった非同盟諸国も、1998年のダーバン会議では113か国に達するに至った。それとともに、内部に中立派、親米派、親ロ派、あるいは急進派、穏健派、保守派、さらに産油国、極貧国など多様な諸国を含み、経済的困難から先進国への依存度がかえって増大し、中立性の維持が危うくなる国が生じるというような問題、イラン・イラク戦争のような非同盟内部の深刻な対立の問題などに当面するようになり、つねに一枚岩の団結を示すことにはなっていない。しかし、先進大国に対して、新秩序の樹立を要求していくには、これら諸国の団結が必要であるとの共通認識に基づく結束が存在することは確かであり、非同盟主義が国際政治インパクトを与え続けてきたことは確かである。しかし冷戦の終結以来、新たな統合原理を求め、1992年のジャカルタで行われた非同盟諸国会議は、「政治から経済へ」の路線転換をみせ、「南南」および「南北」の経済協力に運動の生き残りをみいだそうとする動向を示した。

[石本泰雄]

『日本国際問題研究所編『中立主義の研究』上下(1961・日本国際問題研究所)』『岡倉古志郎編『非同盟・中立』(1977・新日本出版社)』『土生長穂著『戦後世界政治と非同盟』(1980・大月書店)』『奥野保男「非同盟運動とアフリカ」(小田英郎編『アフリカの政治と国際関係』所収・1991・勁草書房)』『岡倉古志郎著『非同盟研究序説』増補版(1999・新日本出版社)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「非同盟主義」の意味・わかりやすい解説

非同盟主義
ひどうめいしゅぎ
principle of nonalignment

いかなる種類の軍事同盟や軍事ブロックにも参加せず,外国軍隊の駐留や外国の軍事基地の設置を認めず,紛争の拡大を防止し,平和と安全の維持と強化に努力する外交上の思想をいう。この考え方に基づく外交政策を非同盟政策と呼び,非同盟政策をとる国を非同盟国と呼ぶ。また非同盟諸国によって形成される政治勢力を第三勢力と呼び,第三勢力によって占められている地域を第三地域と呼ぶ。非同盟主義は中立主義の一種であるが,軍事同盟に属すことなく積極的に平和の維持をはかる点において,積極的中立主義とも称され,また反帝国主義,反植民地主義の側面も有している。非同盟主義という言葉は,1953年2月インドの J.ネルー首相が議会演説のなかで,「戦争に反対し,平和維持に努力する諸国によって第三地域」の結成を提唱し,非同盟という概念を用いてインド外交について説明したことに由来する。この考え方は 55年のバンドン会議にも大きな影響を与えた。

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旺文社世界史事典 三訂版 「非同盟主義」の解説

非同盟主義
ひどうめいしゅぎ
non-alignment policy

東西冷戦の中でどちらの陣営にも属さない外交政策
インドのネルーが最初の提唱者であるといわれている。アメリカ,ソ連のいずれにも属さず中立を保ち,平和共存・植民地からの解放をめざした。冷戦終結後は新たな意味付けが模索されている。

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世界大百科事典(旧版)内の非同盟主義の言及

【永世中立】より

…永久中立ともいう。永世中立に類似した概念として,中立および中立主義または非同盟主義がある。国際法上中立とは,他の国家間の戦争状態を前提として交戦国との関係においてのみ成立する法的地位であるのに対し,中立主義は,国際間で多少とも持続的に中立的外交政策をとる立場一般を指し,中立政策とほぼ同義である。…

※「非同盟主義」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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