(読み)ユキ

デジタル大辞泉 「靫」の意味・読み・例文・類語

ゆき【×靫/×靭】

《「ゆぎ」とも》矢を入れ、背に負った細長い箱形道具。木製漆塗りのほか表面を張り包む材質によって、錦靫にしきゆき蒲靫がまゆきなどがある。平安時代以降の壺胡簶つぼやなぐいにあたる。

うつぼ【×靫/空穂】

矢を納めて射手の腰や背につける細長い筒。ふつう竹製で漆塗り。上に毛皮鳥毛毛氈もうせんの類を張ったものもある。うつお。

うつお〔うつほ〕【×靫/穂】

うつぼ(靫)

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精選版 日本国語大辞典 「靫」の意味・読み・例文・類語

うつおうつほ【靫】

  1. 〘 名詞 〙うつぼ(空穂)
    1. [初出の実例]「うつをより文書をとり出でて、時秋に見せけり」(出典:時秋物語(鎌倉初か))

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普及版 字通 「靫」の読み・字形・画数・意味


12画

[字音] サイ・サ
[字訓] うつぼ・ゆぎ

[字形] 形声
声符は叉(さ)。〔玉〕に「(や)の室なり」とあり、矢を入れる革袋。うつぼ。また、ゆぎ。古くは「ゆき」といい、〔神代紀上〕「千(ちのり)の靫(ゆき)」「五百(いほのり)の靫」のようにいう。宮門を護衛する武人を、わが国では「靫負(ゆげひ)」といい、衛門府のことをまた靫負府といった。

[訓義]
1. やいれ、うつぼ、ゆぎ。

[古辞書の訓]
名義抄〕靫 ユキ・ツホヤナクヒ 〔字鏡集〕靫 ヤヒツ・ヤナクヒ・ムカハキ

[熟語]
靫戟
[下接語]
千靫・靫・倒靫

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改訂新版 世界大百科事典 「靫」の意味・わかりやすい解説

靫 (ゆき)

矢をいれて背におう容器。材質・形状には種々の変化があったらしく,《日本書紀》神武天皇即位前紀には,たがいに歩靫(かちゆき)を見せあって同族であることを確認した物語がある。三重県伊賀市石山古墳出土の革製漆塗靫は,長さ70cm,幅16cm,厚さ5cmの長方形の深い筒で,表面および両側面に文様を彩色し,上端に近く2個の巴形銅器を綴じつけてある。福島県会津若松市大塚山古墳出土の編物製靫は,長さ80cm,幅20cmの下方ですこしひろがった筒で,直弧文などを施した漆膜が付属している。ともに銅鏃・鉄鏃をつけた50本の矢を,鏃(やじり)を上に向け矢羽を下にして収めていた。近畿地方の4,5世紀の靫形埴輪は,左右両側に鰭(ひれ)をもち,上部に複雑な板状の装飾があって,編物製靫の系統である。関東地方の6,7世紀の靫形埴輪は,九州地方の装飾古墳の壁画に見る靫と同様に,本体の上部の左右に板状の袖をはりだした,奴凧(やつこだこ)形の形式になっている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「靫」の意味・わかりやすい解説


ゆぎ

上古時代に矢を入れて携行した武具の一種。靭とも書く。古墳時代前期後半の会津大塚山古墳からは,長さ 80cm以上の縦長の箱形のものが発見されているが,古墳時代後期には,武人埴輪や装飾古墳の壁画などにみられる奴凧形の靫が使用された。靫は背中に背負って携行し,平安時代までは「ゆき」と発音した。伊勢神宮の御神宝中に姫靫,蒲 (かば) 靫がある。

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