デジタル大辞泉
「楽」の意味・読み・例文・類語
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がく【楽】
- 〘 名詞 〙
- ① 楽器を用いて音曲を奏するもの。儀式に用いられる音楽や楽曲。
- [初出の実例]「宴二五位以上于内殿一、奏二諸方楽於庭一」(出典:続日本紀‐和銅元年(708)一一月辛巳)
- 「がくの声まさり、物のおもしろきほどに」(出典:源氏物語(1001‐14頃)紅葉賀)
- ② 特に、雅楽。したがって、雅楽の琵琶(びわ)を楽琵琶、箏(そう)を楽箏、太鼓を楽太鼓という。
- [初出の実例]「垣下(ゑが)には行正(ゆきまさ)、がくには仲頼(なかより)、そこらのあそび人どもにます人なくあそぶ」(出典:宇津保物語(970‐999頃)嵯峨院)
- ③ 能楽で、笛を中心としたはやしに、舞楽の技法を取り入れた舞事で、ゆったりとした異国的な舞を伴う。「唐船(からふね)」「邯鄲(かんたん)」「東方朔(とうぼうさく)」などの曲にある。
- [初出の実例]「それからいしゃうぬぐうちに、がくなり」(出典:虎明本狂言・唐相撲(室町末‐近世初))
- ④ 箏、三味線などで、雅楽の感じを出すために雅楽の手法を取り入れた合の手。箏曲「小督(こごう)」や長唄「鶴亀」の合の手の類。
- ⑤ 歌舞伎の下座音楽の一つ。太鼓に大小鼓、能管、または大太鼓、鈴を用い、三味線を入れたりして、時代物の御殿、神社、仏閣の場や天女、不動、観音などの出現の場などに用いる。
- [初出の実例]「『ナニ、高明卿の』『御社参とな』『女め、動くな』トきっと思ひ入れ。三味線入りの楽(ガク)になり」(出典:歌舞伎・四天王楓江戸粧(1804)三立)
らく【楽】
- 〘 名詞 〙
- ① ( 形動 ) 心身に苦しみや苦労がなく、齷齪(あくせく)せず安らかでたのしいこと。快いこと。また、そのさま。安楽。
- [初出の実例]「其後に人いできたりて、我が身より光をはなちて、たがひにてらして楽(ラク)をうる事、天におなじく命ち長き事、無量歳なりき」(出典:法華修法一百座聞書抄(1110)六月一九日)
- ② 好むこと。愛すること。
- [初出の実例]「楽といふは、このみ愛する事なり。これを求むることやむ時なし」(出典:徒然草(1331頃)二四二)
- ③ ( 形動 ) たやすいこと。容易なこと。あるいは、生計が豊かなこと。また、そのさま。
- [初出の実例]「ラクナ やすき」(出典:詞葉新雅(1792))
- 「僅半時か一時の間に楽に搗く事も出来るし」(出典:交易問答(1869)〈加藤弘之〉上)
- ④ 「らくやき(楽焼)」の略。
- [初出の実例]「茶碗にはふくりんなし。〈略〉和焼には瀬戸・白菴・唐津・楽の類なり」(出典:源流茶話(1715‐16頃か)上)
- ⑤ ( 「千秋楽(せんしゅうらく)」の略 ) 芝居などの千秋楽のこと。転じて、物事の終わり。
- [初出の実例]「先生、もう鬼ごっこも終局(ラク)にしやせう」(出典:当世書生気質(1885‐86)〈坪内逍遙〉一)
たのしび【楽】
- 〘 名詞 〙 ( 動詞「たのしぶ(楽)」の連用形の名詞化 ) =たのしみ(楽)
- [初出の実例]「樹の本を
倒(きりたふ)して、昇れる者を落死(おとしころ)すを、快(タノシヒ)とす」(出典:日本書紀(720)武烈四年四月(図書寮本訓)) - 「たとひ時うつり、ことさり、たのしびかなしびゆきかふとも、このうたのもじあるをや」(出典:古今和歌集(905‐914)仮名序)
たのしみ【楽】
- 〘 名詞 〙 ( 動詞「たのしむ(楽)」の連用形の名詞化 )
- ① 心身が満たされて、快いこと。また、そのような状態。悦楽。歓楽。
- [初出の実例]「願ふ心はねてもさめてもかの国の楽みをねがふなり」(出典:観智院本三宝絵(984)下)
- ② 将来それが実現することを心待ちにすること。
- [初出の実例]「遖(あっぱ)れ高名手柄して。父上や祖母様に誉めらるるのが楽しみと、にっと笑うた其顔が」(出典:浄瑠璃・絵本太功記(1799)一〇日)
たぬ
し【楽】
- 〘 形容詞シク活用 〙 ( 万葉仮名で、現在、「の」の甲類とされている「怒」「努」などを、近世の万葉学で「ぬ」と読んだところからできた歌語 ) =たのしい(楽)
- [初出の実例]「子供らと手たづさはりて春のぬに若菜を摘むはたぬしくあるかも」(出典:良寛歌(1835頃))
たの
し【楽】
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例
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普及版 字通
「楽」の読み・字形・画数・意味
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
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楽 (がく)
中国古代に礼と並んで重要視された概念で,人心を感化するはたらきをもつとされた。やがて今日の音楽に近い意味で用いられた。日本では,外来の音楽,あるいは雅楽の意味で用いられた。能・狂言の囃子事や歌舞伎の下座(げざ)音楽で用いられる場合は,下記のように唐楽を模した音楽を意味する。
(1)能の囃子事。唐人(《邯鄲》《唐船》)や異相の老体の神(《源太夫》《白髭》),童体の天仙(《一角仙人》《枕慈童》)などが,雅楽の舞楽を模して舞う舞事。実際には舞楽とは似ておらず,随所で足拍子を数多く踏むのが特徴。笛,小鼓,大鼓,太鼓(演目により有無両様)で奏する。笛には固有の地があり,打楽器のリズムに合う。この舞事はゆるやかに始まり,だんだん速さを増しながらリズミカルに奏演する。ただし,異相の老体の神の場合はあまりテンポを速めず,どっしりと奏する。普通は笛が黄鐘(おうしき)基調だが,特別な演出で盤渉(ばんしき)基調となることがある。これを〈盤渉楽〉というが,この舞事は浮きやかにテンポよく奏演される。(2)狂言の囃子事。唐人が舞う飄逸な舞事(《唐相撲》)。能の楽を模したもので,笛,小鼓,大鼓,太鼓で奏演する。笛はリズムに合う。打楽器は〈三ツ地〉という手組を繰り返すのみ。(3)歌舞伎の下座音楽。神仏の出現するときや,貴人の出入りするときに用いられる。普通は笛,太鼓,大太鼓で奏されるが,小鼓,大鼓が加わることもある。
執筆者:松本 雍
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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楽
がく
日本音楽の用語および曲名。 (1) 音楽の略語。 (2) 雅楽の略語。 (3) 能の囃子事 (器楽的演奏) の曲名。舞楽を擬した舞。黄鐘楽 (おうしきがく) と盤渉楽 (ばんしきがく) とがあり,単に楽といえば前者をいう。 (4) 能・狂言の囃子事。能の黄鐘楽を簡略化したもの。 (5) 歌舞伎囃子の曲名。能の囃子の「楽」を模したもの。長唄曲の出囃子などに用いられる。また,陰囃子の「音楽」の略称。 (6) 三味線音楽の旋律名称。雅楽風の感じを出す旋律。歌舞伎下座音楽としては「楽の合方」または「今様楽の合方」「小町合方」などともいい,「音楽」または「管弦 (かげん) 」「奏楽」などの陰囃子を伴う。長唄曲の同様の旋律による間奏部分名称にも用いる。 (7) 山田流箏曲の旋律。雅楽の箏の奏法に近い奏法で,雅楽的な気分を表現する特有な旋律。本手と楽の手との合奏となる。 (8) 民俗芸能では,太鼓または太鼓を打つことを中心とした芸能すなわち「楽打ち」のこと。田楽の略語にも用いる。
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世界大百科事典(旧版)内の楽の言及
【自由】より
… ひるがえって,liberty,freedomの語義についてもさまざまな論義があるが,その語源が共同体の成員権を意味するという説に立つならば,日本の場合も,古代の[平民](公民),中世の平民百姓,近世の[百姓]はみな自由民ということも可能であり,この場合の自由は私的な隷属を拒否し,みずからを奴隷―不自由民から区別する自由ということになる。またそれを共同体からの自由と解するならば,日本の中世においても,身寄りのない貧しさを意味する語として広く使われた〈無縁〉という言葉は,転じて親子・主従等の縁を積極的に切った自由な境地を示す語となり,私・内証(ないしよう)に対する公・世間を意味する〈[公界](くがい)〉の語は,私的な縁・保護を断ち切る自由を示す言葉として用いられ,戦国時代に用いられている〈楽〉〈[十楽](じゆうらく)〉も,同様な意味をもったといってよい。しかし江戸時代に入ると,無縁は貧困を意味するもともとの語義にもどり,公界は[苦界]に,〈らく〉は一部地域の被差別民の名称となっていった点に,さきの〈自由〉の語義のマイナス評価とも関連する日本の社会の問題がひそんでいるといえよう。…
【宗教音楽】より
…諸宗教における[典礼音楽]ばかりでなく,広くは宗教的な色合いをもつ音楽をも包含する概念。今日の未開民族における宗教と音楽との混然たる状態は,遠い昔における人類の宗教と音楽との未分化の姿を示していると考えられる。…
【舞事】より
…[囃子]と所作からなる囃子事小段(しようだん)のうち,演者(立役(たちやく)・立方(たちかた))が舞台上で演ずる所作が,抽象的な形式舞踊であるものを舞事という。能の舞事には,笛(能管)・小鼓・大鼓で奏する〈[大小物](だいしようもの)〉と太鼓の入る〈[太鼓物]〉とがあるが,その両者を含めて,笛の基本の楽句である[地](じ)の種類によって分類されることが多い。すなわち,[呂中干](りよちゆうかん)の地といわれる共用の地を用いる〈序ノ舞〉〈真(しん)ノ序ノ舞〉〈[中ノ舞](ちゆうのまい)〉〈早舞(はやまい)〉〈男舞(おとこまい)〉〈神舞(かみまい)〉〈急ノ舞〉〈破ノ舞(はのまい)〉などと,それぞれが固有の地を用いる〈楽(がく)〉〈[神楽](かぐら)〉〈羯鼓(かつこ)〉〈鷺乱(さぎみだれ)(《鷺》)〉〈猩々乱(《猩々》)〉〈獅子(《石橋(しやつきよう)》)〉〈[乱拍子](《道成寺》)〉などの2種がある。…
【礼】より
…朱熹(子)は〈天理の節文,人事の儀則(ぎそく)〉(《論語集注(しつちゆう)》学而(がくじ)篇など)と定義し,礼を人間の先天的な道徳性([天理])の表現としてとらえて,内と外の乖離(かいり)を止揚しようとした。 〈礼楽〉と並称される〈楽(がく)〉は,広く礼のなかに包摂されるが,分けて言った場合,〈楽は同をなし礼は異をなす〉〈楽は天地の和,礼は天地の序〉(《礼記》楽記篇)などとあるように,世界を分節して秩序づける礼に対し,楽はその厳格なコスモスの一時的な解体――カオス化をめざしている。 礼は〈礼治〉という語があるように,それ自体ひとつの政治思想でもあった。…
※「楽」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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