中世武家社会において,所領の持主が,その管理を代官や家臣などに託するときに作成される文書。充行(あておこない)が永久的な所領の給付であるのに対し,一時的な給付に用いられる。室町時代,将軍が料所を家臣に預けるときには御判御教書(ごはんのみぎようしよ),あるいは御内書にて,また守護大名,戦国大名よりは書下,判物にて発せられる。いずれも文中に〈預置〉〈被預置(あずけおかる)〉の文言が用いられる。つぎに掲げるのは室町時代初期の有力武士である細川頼之が備後国小国郷の領家職の半分を日和佐新左衛門尉に預け置いた文書で,その現地における沙汰を山内刑部三郎(通継)に命じたものである。〈備後国小国郷領家職半分事,所預置日和佐新左衛門尉也,早三吉兵庫助相共,可沙汰付下地之状如件,延文二年(1357)七月廿二日右馬頭(花押) 山内刑部三郎殿〉(《山内首藤家文書》)。
執筆者:高橋 正彦
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古文書学上の用語。南北朝・室町時代、武将がその所領を配下の武士に預ける場合に作成する文書。永久に所領を給付するのが宛行(あてがい)状であるが、一時的に管理を任せるのが預状である。足利(あしかが)将軍が料所(りょうしょ)(直轄領)を奉公衆などに預ける場合には御判御教書(ごはんのみぎょうしょ)あるいは御内書(ごないしょ)の、また守護大名、戦国大名が配下の武士に預けるときには書下(かきくだし)、判物(はんもつ)の様式をとった。
[上島 有]
古文書学上の用語。中世において、所領、所職、金銭、文書などを預かったとき、預かった方が預け主に差し出す文書で、一種の請取(うけとり)である。なお室町時代、徳政逃れのため作成された預状は、利子付きの借書が徳政令の対象として破棄されたため、実際は利子付き貸借契約を結びながら、形式的には無利子の預状となっている。
[上島 有]
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