預状(読み)あずけじょう

精選版 日本国語大辞典 「預状」の意味・読み・例文・類語

あずけ‐じょうあづけジャウ【預状】

  1. 〘 名詞 〙 中世文書形式。所領を預け証拠として、預け主から預かり主に渡したもの。中世、直轄領部下に管理させるとき、一時的に預ける形式が多く、預かり主はその土地に対して預け主と同様の権限を有したから、恩賞としての意味をもった。
    1. [初出の実例]「下野国皆河庄内闕所事、所置上椙安房守也、早任預状之㫖、可沙汰付之状」(出典上杉家文書‐建武三年(1336)一〇月一九日・高師直奉書)

あずかり‐じょうあづかりジャウ【預状】

  1. 〘 名詞 〙 中世、近世の文書形式。資財、文書等を他人から預かった証拠として、預かり主から預け主に出す受取状。中世後期の金銭貸借においては、徳政令適用を避けるために、預け主(貸し手)の希望によってこの文書形式をとることが多かった。近世以後、預かり証文といった。
    1. [初出の実例]「志野彌三郎氏祐に預置百貫文事、預り状一乱中紛失畢、氏祐書状有之上者、紛失状可御下知云々」(出典:親元日記政所賦銘引付・文明一一年(1479)四月二九日)

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改訂新版 世界大百科事典 「預状」の意味・わかりやすい解説

預状 (あずけじょう)

中世武家社会において,所領の持主が,その管理を代官家臣などに託するときに作成される文書。充行(あておこない)が永久的な所領の給付であるのに対し,一時的な給付に用いられる。室町時代,将軍が料所を家臣に預けるときには御判御教書(ごはんのみぎようしよ),あるいは御内書にて,また守護大名,戦国大名よりは書下,判物にて発せられる。いずれも文中に〈預置〉〈被預置(あずけおかる)〉の文言が用いられる。つぎに掲げるのは室町時代初期の有力武士である細川頼之が備後国小国郷の領家職の半分を日和佐新左衛門尉に預け置いた文書で,その現地における沙汰を山内刑部三郎(通継)に命じたものである。〈備後国小国郷領家職半分事,所預置日和佐新左衛門尉也,早三吉兵庫助相共,可沙汰付下地之状如件,延文二年(1357)七月廿二日右馬頭(花押) 山内刑部三郎殿〉(《山内首藤家文書》)。
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百科事典マイペディア 「預状」の意味・わかりやすい解説

預状【あずけじょう】

中世の武家社会において,所領や半済(はんぜい)分などを家臣や代官など特定の人物に委託する(預ける)場合に発給される文書。名称は,文中に〈預置〉などの文言があることによる。南北朝期から室町時代に将軍・守護・大名らにより発給され,将軍は御判御教書(ごはんのみぎょうしょ)または御内書(ごないしょ),守護らは判物(はんもつ)・書下(かきくだし)の形式で発給した。充行(あておこない)が永久的な給付であるのに対し,一時的に給付する場合に用いられた。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「預状」の意味・わかりやすい解説

預状(あずけじょう)
あずけじょう

古文書学上の用語。南北朝・室町時代、武将がその所領を配下の武士に預ける場合に作成する文書。永久に所領を給付するのが宛行(あてがい)状であるが、一時的に管理を任せるのが預状である。足利(あしかが)将軍が料所(りょうしょ)(直轄領)を奉公衆などに預ける場合には御判御教書(ごはんのみぎょうしょ)あるいは御内書(ごないしょ)の、また守護大名、戦国大名が配下の武士に預けるときには書下(かきくだし)、判物(はんもつ)の様式をとった。

[上島 有]


預状(あずかりじょう)
あずかりじょう

古文書学上の用語。中世において、所領、所職、金銭、文書などを預かったとき、預かった方が預け主に差し出す文書で、一種の請取(うけとり)である。なお室町時代、徳政逃れのため作成された預状は、利子付きの借書が徳政令の対象として破棄されたため、実際は利子付き貸借契約を結びながら、形式的には無利子の預状となっている。

[上島 有]

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