出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
江戸幕府法の未決勾留もしくは刑罰の称。江戸時代には牢屋などの拘禁施設が不十分であり,また身分による区別が複雑であったため,被疑者を同一の施設に収容することは不適当とされ,これを私人ないし団体に責付して監禁させた。武士の場合,御目見(おめみえ)以上で500石以上の者は牢屋に入れず,大名預(だいみようあずけ)とした。大名預はまた刑罰としても用いられ,大名や国事犯たる武士などに適用されたが,これには預と永預(ながあずけ)の別がある。永預は終身の監禁が予定されたものをいう。庶民についても,幕府は牢屋に勾留することをなるべく制限する方針であった。無宿(むしゆく)は原則として入牢させたが,有宿の者で軽い罪に該当するときは,手鎖(てじよう)を掛け,あるいは掛けずに私人か団体に預けた。江戸町方では宿預(やどあずけ),町預,在方では村預が主として行われた。宿預は町人のときは差添人たる町役人,江戸の公事宿(くじやど)に止宿している者はその宿に,村預は親類,五人組,村役人に命じた。町預というのは大きな自身番屋に留置するもので,その町の月行事(がちぎようじ),五人組が責任を負った。親類預は15歳未満の幼年者に適用され,遠島刑を科された幼年者は15歳まで親類に預けた。当道(とうどう)の座に加入していない盲人に遠島や追放などの刑罰を科すべきとき,刑罰に代えて親類預を命じた。盲人以外の身体障害者も追放刑に代えて親類預とし,あるいは知人,村役人に預けた。溜預(ためあずけ)というのは溜に収容することで,入牢中の病人を移したり,あるいは遠島刑を科すべき幼年者で親類預ができない場合などに見られた。未決勾留中の者が脱走すれば,吟味中の犯罪に科せられるべき刑より一等重く罰した。手鎖を外した者は百日手鎖を科された。預を命ぜられた私人ないし団体は捜索の義務を負い,尋ね出さなければ過料に処された。
執筆者:平松 義郎
平安時代以降,一部の官司,および社寺,荘園に置かれた職名。律令制の崩壊とともに,官職も中世的な形へと変化していくが,その過程で生まれた職名と思われる。9世紀ごろよりみられるが,頻出するようになるのは10世紀以降である。《延喜式》《西宮記》には,太政官厨家預,太政官文殿預,後院預,進物所預,御厨子所預,御書所預,一本御書所預,侍従所預,作物所預,画所預,楽所預,納所預,酒殿預,贄殿預,穀倉院預,供御院預,乳牛院預等が載せられている。しかし,預が置かれたのはこれらにとどまらず,たとえば,(修理職)梅津木屋預,(筑前国)公文預,(美濃国安八郡)公文預等,諸官司をはじめ国衙や郡衙の下部機構にも及び,基幹・末端を問わず〈……院〉〈……所〉と呼ばれるような官司に広く置かれた。これらの預の中には御厨子所(みずしどころ)の紀氏のように,中世に至って家柄が固定してゆくものもある。預はまた,神社や寺院にも置かれた。石清水社や春日社では正預・権預等が置かれ,ずっと後まで社務の遂行に参画している。このほか梅宮社等でも例をみる。寺院においても,たとえば(醍醐僧正房)預,(東寺僧正房)預,(東大寺)泉木屋所預,(東大寺灯油納所)預,(東大寺修理所)預等々,多様な機関に置かれている。荘園においても荘司の一員として荘務にかかわる例を多く見いだしうるが,平安末期以降あまり見られなくなる。預は一般に別当の下に位置付けられ,実務担当の責任者としてその機関の運営に参与する場合が多いが,末端組織の責任者として単独で置かれることもある。また,平安中期以降,年預という職があらわれる。その性格は預に類似したものと思われるが,これは諸院・諸家・寺社のほかに正規の令制官職にも置かれ,実務担当者として重要な役割を果たした。年預は〈年預別当〉〈年預尉〉のように,その機関の正式職員の中から選ばれる場合とそうでない場合とがあった。また預と年預双方が置かれることもあった。
執筆者:玉井 力
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
平安時代以降,一部の官司や社寺・荘園・国衙(こくが)などにおかれた下級職名。一般に長官や別当の下におかれた実務責任者であることが多いが,下部機関の責任者である場合もある。官司では太政官厨家(ちゅうけ)・文殿(ふどの)や後院庁・院庁・穀倉院や禁中所々などにおかれ,神社では平野社で早くみられるほか,石清水(いわしみず)社・春日社では正(しょう)預・権(ごん)預がのちのちまで社務を管掌した。寺院でも東大寺灯油納所・修理所などさまざまな機関にあった。
中世~近世に行われた刑事的処分のうち,未決囚を私人や団体に預けて拘留,あるいは拘禁刑に服させること。中世では召預(めしあずけ)ともいい,鎌倉幕府は御家人に囚人を預け,預けられた囚人が逃亡した場合には所領没収などの罪科に処した。江戸幕府法でも,未決拘留あるいは刑罰として私人ないし団体に責任を負わせて監禁させ,武士については大名預,庶民については町預(ちょうあずけ)・宿預(やどあずけ)・村預などがあった。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
…第4には,公共地や観光地における散在ごみの問題である。京都市が1980年に導入を試みた空缶回収のためのデポジット(預り金)制度(販売時に容器代を上乗せしておき,空き容器を持ち込んだときに返還する制度)は全国で大きな論議をよんだが,いくつかの問題があって実現は見送られた。その当否はともかく,あるいは他のいかなる方法が今後考えられるにせよ,散在ごみの問題に関しては,市民は自分たちのまちや環境や自然を自分たちできれいにしていくための市民生活のモラルやルールを問い直していかなければならないし,清掃事業や関連企業・事業者も公共地,観光地などの美化清掃に積極的な責任を果たしていかなければならないだろう。…
※「預」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
〘 名詞 〙 年の暮れに、その年の仕事を終えること。また、その日。《 季語・冬 》[初出の実例]「けふは大晦日(つごもり)一年中の仕事納(オサ)め」(出典:浄瑠璃・新版歌祭文(お染久松)(1780)油...
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