食指が動く(読み)ショクシガウゴク

デジタル大辞泉 「食指が動く」の意味・読み・例文・類語

食指しょくしうご・く

ていの子公が人さし指が動いたのを見て、ごちそうにありつける前兆であると言ったという、「春秋左伝」宣公四年の故事から》食欲が起こる。転じて、ある物事に対し欲望興味が生じる。「条件を聞いて思わず―・いた」
[補説]文化庁が発表した平成23年度「国語に関する世論調査」では、「何かを食べたくなる、転じて、あることをしてみようという気になる」ことを表現するとき、本来の言い方とされる「食指が動く」を使う人が38.1パーセント、本来の言い方ではない「食指をそそられる」を使う人が31.4パーセントという結果が出ている。
[類語]手を出す乗り出す触手を伸ばす首を突っ込む手を延ばす手を広げる手を染めるちょっかいを出す

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精選版 日本国語大辞典 「食指が動く」の意味・読み・例文・類語

しょくし【食指】 が 動(うご)

  1. ( 鄭の子公がひとさしゆびの動いたのを見て、ごちそうになる前ぶれだと言ったという「春秋左伝‐宣公四年」の「子公之食指動、以示子家曰、他日我如此必嘗異味」の故事から ) 食欲がきざす。また、広く物事を求める心がおこる。
    1. [初出の実例]「廼復有王奉常集者。台下能無食指不一レ動邪」(出典:徂徠集(1735‐40)二〇)

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故事成語を知る辞典 「食指が動く」の解説

食指が動く

何かをしたい、手に入れたいという欲望が起こることのたとえ。また、野心を抱くこと。

[使用例] 原は貧乏士族の娘で堅気であったのだが、ろうかつこの娘を見ると食指大いに動いた訳で[尾崎紅葉金色夜叉|1897~98]

[使用例] 仲間の一人であった林嘉雄と組んで、より知的な企業犯罪に食指を伸ばした[藤本義一*少年と拳銃|1979]

[由来] 「春秋左氏伝―宣公四年」に見える話から。紀元前六〇五年の中国でのこと。あるとき、ていという国の君主一族こうが、君主の霊公のところに行こうとしていたら、自分の「食指(人差し指)」がぴくっと動くのを感じました。こういうときには、何かおいしいものにありつけるのが、彼にとってのジンクス。期待しながら霊公の屋敷に入っていくと、ちょうど、献上されてきたスッポンが料理され始めるところだったのでした。

[解説] ❶これだけであれば、むしろほほえましいお話ですが、実は、この話には続きがあります。子公のジンクスを聞き知った霊公は、意地悪をして、スッポンのスープを食べさせないことにします。怒った子公は、スープの入ったお鍋に指を突っ込み、なめてから出て行ってしまいました。それに腹を立てた霊公は、子公を殺してしまおうと考えます。かくしてお家騒動が勃発、結局は霊公が命を落とすことになったのでした。まったく、食いもののうらみは恐ろしいものです。❷以上のような血なまぐさい背景を持っているところから、この故事成語には、「露骨な欲望」のイメージがあります。欲望をプラスの意味で表現したい場合には、避けた方が無難でしょう。

〔異形〕食指を動かす/食指を伸ばす。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「食指が動く」の意味・わかりやすい解説

食指が動く
しょくしがうごく

食欲がおこること、転じて物を欲しがったり、なにかをしたくなることをいう。中国、鄭(てい)の子公(公子宋(こうしそう))が霊公に会いに行く途中で、人差し指の動くのを同行した子家に見せながら、「こうなると、いつも御馳走(ごちそう)にありつけるのだ」といった。その予告どおり、2人が霊公の家に着くと、霊公は大きなスッポンを料理中だったので、2人は顔を見合わせて笑った。霊公がそのわけを問い、子家が食指の動いた顛末(てんまつ)を話したところ、霊公はわざと子公にはスッポンを食べさせなかったので、怒った子公は料理を入れた鼎(かなえ)の中に指を突っ込み、それをなめて予言を実行したと伝える、『春秋左伝』「宣公四年」の故事による。

[田所義行]

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