(読み)タボ

デジタル大辞泉 「髱」の意味・読み・例文・類語

たぼ【×髱/×髩】

日本髪で、襟足にそって背中の方に張り出した部分。たぼがみ。たぶ。関西では「つと」という。
若い女性をさす俗な言い方。
「いい―でもあったら」〈滑・膝栗毛・初〉

つと【×髱/×髩】

たぼ(髱)」に同じ。
「―無しの大島田」〈露伴・椀久物語〉

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精選版 日本国語大辞典 「髱」の意味・読み・例文・類語

たぼ【髱・髩】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 日本髪の背の側に向かって張り出した部分の称。たぼがみ。たば。たぶ。
    1. [初出の実例]「すてにゆく・恋のおもにをおろすたぼ」(出典:雑俳・削かけ(1713))
  3. 若い女性の称。
    1. [初出の実例]「玉女といふたぼを一まいやわらかみに入」(出典:黄表紙・全交法師常々草(1794))
  4. 酌婦
    1. [初出の実例]「いいたぼが大分来た」(出典:黄表紙・世上廻親子銭独楽(1793))
    2. 「たぼが無いと酒が飲めねえよ」(出典:歌舞伎・桜姫東文章(1817)三幕)

たぶ【髱・髩】

  1. 〘 名詞 〙たぼ(髱)
    1. [初出の実例]「上村のおみよ様が、筋立てくれなさった大事の髩(タブ)を損ふて」(出典浄瑠璃神霊矢口渡(1770)四)

つと【髱・髩】

  1. 〘 名詞 〙 日本髪で、後方に張出した部分の髪をいう。たぼ。つとう。〔訓蒙図彙(1666)〕

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「髱」の意味・わかりやすい解説


たぼ

上方(かみがた)(関西)では髩(つと)という。女性の結髪後部に張り出した髪をたわめてつくった部分の称。日本髪の美しさのポイントとなる部分でもある。中世以降、女性は下げ髪(垂髪)であったが、のち唐輪髷(からわまげ)となって髷ができても髱はなかったが、江戸時代初期の被(かぶ)り物禁止以降、素顔で歩くようになって、後頭部に髪をまとめることがおこり、これを髱とよんだ。当時の髱は鴎(かもめ)の腹の形から鴎髩(かもめづと)といった。18世紀に入ると、髱が垂れ下がって着物の襟を汚すところから、髱差しを利用して反り返る形をとるようになり、せきれい髱、雀(すずめ)髱が生じた。さらに18世紀後半になると、鬢(びん)が張り出してきた結果として髱は小さくなった。また19世紀に入ると鬢が縮小したのにつれて、髱差しが再度利用されることになった。この結髪法は昭和20年代、洋髪が盛行するまで、和服を日常着とする女性の間に普及した。

[遠藤 武]

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百科事典マイペディア 「髱」の意味・わかりやすい解説

髱【たぼ】

日本髪の部分名称で,後頭部から耳裏の部分をいう。江戸時代の女性の結髪で髱の形は多く変化をみせ,寛文ごろから元禄を経て,宝暦ごろに最も発達した。自然に突き出す形から次第に技巧を加え,髱刺しという型を用いて,せきれい髱,かもめ髱などと呼ばれる曲線を帯びたものが作られた。なお関西では,髱のことを〈つと〉と呼ぶ。
→関連項目髪形兵庫髷

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【髪形】より

…貴族や武家の女性は江戸前期までは中世以来の垂髪を踏襲していたが,庶民の間では,髷を結うことに積極的であった女歌舞伎や遊里の女性たちを中心として広まり,江戸中期以後には,島田髷や勝山髷が一般女性の間で広く結われるようになり,日本結髪史上の黄金時代ともいわれる多様な髪形の誕生を見たのである。 江戸時代女髷の概要を述べると,中期以降における特徴として,髪を前髪,髷,両鬢(びん),髱(たぼ)の五つに分髪して結いあげる形式が生まれ,後世の日本髪の基礎となった。この分髪形式は同時に生まれたわけではなく,それぞれの発達経路が少しずつ異なる。…

※「髱」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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