宮城県北西部、大崎市(おおさきし)鳴子(なるこ)温泉鬼首にある温泉群。荒雄(あらお)岳の山麓(さんろく)を流れる荒雄川(江合(えあい)川)の本・支流に沿って散在する鬼首、轟(とどろき)、神滝(みたき)、宮沢、吹上(ふきあげ)、荒湯などの温泉の総称で、鳴子温泉郷の一つともされる。鬼首温泉は川渡(かわたび)温泉、中山平温泉とともに奥鳴子・川渡温泉郷として国民保養温泉地に指定されている。宮沢、吹上には一定時間を置いて熱湯を噴出する間欠泉(かんけつせん)があり、また片山地獄や吹上沢の噴泥もある。付近にはリゾートパーク・オニコウベ(ゴルフ場やスキー場など)、鳴子ダムなど観光要素が多い。JR鳴子温泉駅からバスが通じる。
[長谷川典夫]
宮城県大崎市の旧鳴子町に属し,荒雄岳(984m)の西・南麓に,荒雄川に臨んで散在する轟(とどろき),神滝(みたき),宮沢,吹上,荒湯などの諸温泉の総称。轟温泉(食塩泉,80℃)の古湯は元和年間(1615-24)ころ,新湯はその後に発見された。神滝温泉(食塩泉,58℃)は荒雄湖畔にあり,女の湯と俗称されるほど婦人病に卓効があるといわれ,宮沢温泉(食塩泉,45~98℃)は標高300mにある古くからの湯治場である。宮沢と轟の中間に吹上温泉があり,地鳴りを伴って噴出孔に湯をため約2時間おきに噴き上げる間欠泉がある。また宮沢から6kmの赤沢の東岸にも雌釜および雄釜の間欠泉があって特別天然記念物に指定されているが,1948年の台風災害で噴泉が止まっている。荒雄岳の南麓には泥火山の片山地獄があり,付近には75年地熱発電所の鬼首発電所(最大出力1万2500kW)が運転を開始した。付近一帯は鬼首高原と呼ばれて,栗駒国定公園に指定され,ブナの原生林をはじめ森林美と渓流美に加え,間欠泉,アーチ式の鳴子ダムの景観もよく,新緑・紅葉の観賞,冬のスキーなど観光客が多い。この地域を通る仙秋サンラインは1965年産業観光道路として完成し,鬼首峠(830m)を経て横手盆地へ通じている。この道はかつては鬼首街道と呼ばれ,秋田藩領と仙台藩領を結ぶ重要な街道であり,鬼首の木地を横手盆地へ,川連(かわつら)の漆器を栗原地方へ運ぶ道であった。
執筆者:長谷川 典夫
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