鴛鴦(読み)オシドリ

デジタル大辞泉 「鴛鴦」の意味・読み・例文・類語

おし‐どり〔をし‐〕【鴛鴦】

カモ科の鳥。全長48センチくらい。雄の冬羽はだいだい色や緑色で美しく、翼に銀杏羽いちょうばがあり、冠羽やほおの飾り羽をもち、くちばしは赤い。雌は全体に地味な灰褐色で、目の周囲から後方へ白線がある。森の中の湖や川辺の木の洞に卵を産み、またドングリを好む。アジア東部に分布。おしかも。えんおう。 冬》「―や松ケ枝高く居静まり/茅舎
夫婦などの男女がむつまじく、いつも一緒にいること。また、そういう男女のたとえ。「鴛鴦夫婦」
女性の髪形の一。髪を左右に分け、こうがいの上でたすきをかけたように結ったもの。多く、近世、町娘が結った。
[類語]真鴨軽鴨夏鴨小鴨鵞鳥家鴨あひる合鴨

えん‐おう〔ヱンアウ〕【××鴦】

《「鴛」は雄の、「鴦」は雌のオシドリ
オシドリのつがい。
《オシドリの雌雄がいつも一緒にいるところから》夫婦の仲のむつまじいことのたとえ。

おし〔をし〕【鴛鴦】

オシドリ古名 冬》

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精選版 日本国語大辞典 「鴛鴦」の意味・読み・例文・類語

おし‐どりをし‥【鴛鴦】

  1. 〘 名詞 〙
  2. カモ科の水鳥。全長約四五センチメートル。雄は美しく、背に思羽(おもいば)と呼ばれるイチョウの葉のような形をした羽がある。雌は全体に地味な色で、背部は暗褐色。雄も夏には雌とほとんど同じ色になる。川や湖水などに群をなしてすみ、夏は深山の木のほら穴などに巣をつくって産卵する。シベリア東南部、中国、日本などに分布する。おん。おし。えんおう。《 季語・冬 》
    1. [初出の実例]「妹に恋ひ寝(いね)ぬ朝明(あさけ)に男為鳥(ヲシどり)の此ゆかく渡る妹が使か」(出典:万葉集(8C後)一一・二四九一)
  3. 夫婦や男女の仲むつまじいようすにいう語。
    1. [初出の実例]「我は名残もおし鳥の、つがひ離るる憂き思ひ」(出典:浄瑠璃・平仮名盛衰記(1739)三)
  4. (まげ)一種
    1. (イ) 髪を左右に分け、笄(こうがい)の上にたすきを掛けたように結ったもの。近世、町娘などが結ったもので、結い上げた髪形がオシドリに似ているところからいう。また歌舞伎で、お染、お夏など上方狂言の娘形のかつらとして用いる同型のものをいう。
      1. 鴛鴦<b>③</b><b>(イ)</b>〈吾妻余波〉
        鴛鴦(イ)〈吾妻余波〉
      2. [初出の実例]「鴛鴦(ヲシドリ)維新前に折々此風に結者みえしが方今廃れり」(出典:吾妻余波(1885)〈岡本昆石編〉一)
    2. (ロ) 男の髪の結い方の一種という。
      1. [初出の実例]「髪の風はをしどりといふやつもっとも小びたゐあり」(出典:洒落本・仕懸文庫(1791)一)
  5. 学科の成績で乙のこと。〔新時代用語辞典(1930)〕

鴛鴦の語誌

和歌では「をしどり」より「をし」の形で使われることが多く、同音の「惜し」を導く序詞もしくは「惜し」との掛詞としても用いられる。「書紀歌謡」に「をし二つ居て」と詠まれて以来、一般には「鴛鴦、匹鳥」〔詩経‐小雅・鴛鴦・毛伝〕の理解に基づき、雌雄仲の良いたとえとして用いられた。


おしをし【鴛鴦】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 鳥「おしどり(鴛鴦)」の古名。《 季語・冬 》
    1. [初出の実例]「山川に 烏志(ヲシ)二つ居て たぐひよく たぐへる妹を たれか率(ゐ)にけむ」(出典:日本書紀(720)大化五年三月・歌謡)
    2. 「鴛(ヲシ)のきて物潜なる小池哉〈尚白〉」(出典:俳諧・其袋(1690)冬)
  3. 紋所の名。オシドリの形、または一つがいのオシドリを円形にかたどったもの。江戸時代、近衛家の替え紋。
    1. [初出の実例]「紺地の錦のひたたれに、萌黄匂のよろひに、鴛のすそ金物打ちたるに」(出典:平治物語(1220頃か)上)

鴛鴦の語誌

→「おしどり(鴛鴦)」の語誌


えん‐おうヱンアウ【鴛鴦】

  1. 〘 名詞 〙
  2. ( 「鴛」は雄、「鴦」は雌のオシドリ ) =おしどり(鴛鴦)
    1. [初出の実例]「鴛鴦鳧鴨、戯水奏歌」(出典:性霊集‐二(835頃)大和州益田池碑)
    2. [その他の文献]〔詩経‐小雅・鴛鴦〕
  3. ( オシドリは決して雌雄が離れないといわれるところから ) 仲のよい夫婦、男女。また、そのたとえ。
    1. [初出の実例]「鴛鴦袂を連ねて謳吟す 窈窕簾を隔てて談咲す〈藤原斉信〉」(出典:新撰朗詠集(12C前)下)

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普及版 字通 「鴛鴦」の読み・字形・画数・意味

【鴛鴦】えんおう(ゑんあう)

おしどり。〔詩、小雅、鴛鴦〕鴛鴦于(ここ)に飛ぶ 之れを畢(あみ)し之れを羅(あみ)す 君子年 祿之れに宜(かな)ふ

字通「鴛」の項目を見る

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歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典 「鴛鴦」の解説

鴛鴦
(通称)
おしどり

歌舞伎・浄瑠璃の外題。
元の外題
鴛鴦容姿の正夢
初演
文政11.1(江戸・中村座)

鴛鴦
おしどり

歌舞伎・浄瑠璃の外題。
初演
天明6.秋(京・嵐座)

出典 日外アソシエーツ「歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典」歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典について 情報

動植物名よみかた辞典 普及版 「鴛鴦」の解説

鴛鴦 (オシドリ)

学名:Aix galericulata
動物。ガンカモ科の鳥

出典 日外アソシエーツ「動植物名よみかた辞典 普及版」動植物名よみかた辞典 普及版について 情報

世界大百科事典(旧版)内の鴛鴦の言及

【オシドリ(鴛鴦)】より

…雄の非繁殖羽は雌によく似ているが,くちばしは赤色をしている。多くの場合つがいか小群で見られるので,仲のよい鳥の代表のように思われ,昔から〈鴛鴦の契(えんおうのちぎり)〉とか〈おしどり夫婦〉などということばがあるが,実際は,つがいは毎年新しくつくられる。雄の美しい羽毛は,つがいになるときに雌を引きつけるためのディスプレーに用いられる。…

※「鴛鴦」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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