(読み)コウガイ

デジタル大辞泉 「笄」の意味・読み・例文・類語

こう‐がい〔かう‐〕【×笄】

《「かみかき(髪掻)」の音変化》
髪をかき上げるのに使った、はしに似た細長い道具。銀・象牙などで作る。
女性のまげに横に挿して飾りとする道具。金・銀・水晶・瑪瑙めのう鼈甲べっこうなどで作る。
刀のさや差表さしおもてにさしておくへら状のもの。髪をなでつけるのに用いる。
笄髷こうがいわげ」の略。
[類語]髪飾りかんざし梳き櫛ヘアピン

けい【笄】[漢字項目]

[音]ケイ(漢) [訓]こうがい
かんざし。かんざしをさす。「笄年/加笄」

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精選版 日本国語大辞典 「笄」の意味・読み・例文・類語

こう‐がいかう‥【笄】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「かみかき(髪掻)」の変化した語 )
  2. 髪をかきあげるのに用いる細長い具。男女共に用いた。箸(はし)に似て、根もとが平たく先端は細く、ふつう、象牙(ぞうげ)や銀で作る。
    1. [初出の実例]「白き蓮の花に、かうがいの先して、かく書きつけて奉る」(出典:宇津保物語(970‐999頃)祭の使)
  3. 後世、女性用髪飾りの一つ。髷(まげ)などに差すもの。金、銀などの金属、鼈甲(べっこう)、水晶、瑪瑙(めのう)などで作り、いろいろの形式がある。〔日葡辞書(1603‐04)〕
    1. 笄<b>②</b>〈鵜真似双紙〉
      〈鵜真似双紙〉
    2. [初出の実例]「根掛、櫛、笄(カウガイ)、腕時計といった小物を」(出典縮図(1941)〈徳田秋声〉裏木戸)
  4. 刀の鞘(さや)の付属品の一つ。金属で作り、刀の差表(さしおもて)に挿しておき、髪をなでつけるのに用いる。中世以降のものはほとんど実用の具ではなく、装飾品として、高彫の文様が施され、小柄、目貫と組合わされて用いられている。また、江戸時代、割笄(わりこうがい)といって二本に割ったものを作り、箸の用とすることもある。
    1. 笄<b>③</b>
    2. [初出の実例]「冠して守刀よりかうがいぬき取て、びんかいつくろひて」(出典:十訓抄(1252)一〇)
  5. 紋所の名。笄の形にかたどり、いろいろの形に組み合わせたもの。丸に笄、丸に違い笄、笄車などの種類がある。
    1. 丸に笄@丸に違い笄
      丸に笄@丸に違い笄
  6. 建築で、二本の梁間械(はりまかせ)をつなぎとめるかせをいう。〔日本建築辞彙(1906)〕
  7. こうがいぐる(笄曲)」または「こうがいわげ(笄髷)」の略。
    1. [初出の実例]「ちとかうがいに結おとよい暮」(出典:雑俳・太平楽(1724))
  8. 和船帆柱の筈(はず)に通した横木で、船首への張綱である筈緒のはずれるのを防ぐもの。桑の木で作る。また、飛蝉(とびせみ)の軸をもいう。〔菱垣廻船歓晃丸図解略説(1911)〕

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普及版 字通 「笄」の読み・字形・画数・意味


12画

(異体字)笄
10画

[字音] ケイ
[字訓]うがい

[説文解字]

[字形] 形声
声符は幵(けい)。こうがいの形。〔説文〕十四上に幵を「なり。二干對し、上のなるに象るなり」とし、干(たて)をならべた形とするが、の初文にして、の形である。〔説文〕五上に「(しん)(かんざし)なり」とあり、の初形は、横刺しのである。笄は俗字。

[訓義]
1. こうがい。
2. こうがいをする礼、女子の許嫁の礼。

[古辞書の訓]
名義抄 カンザシ・カンザシス/子 サイシ

[語系]
kyei、髻・結kyet、またkeatは同系の語。みな結髪してそれを結びとめる意がある。冠を用いるときは、冠をも合わせて留め、冠という。

[熟語]

[下接語]
・冠・玉・首・竹

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「笄」の意味・わかりやすい解説


こうがい

女性の髪飾りの一種で、棒状をなしているのが特色である。最上級品はべっこうでつくられ、象牙(ぞうげ)、金銀の蒔絵(まきえ)のなかには螺鈿(らでん)を施したものもある。まがい物のべっこうは馬爪(うまのつめ)でつくられ、色はべっこうに比べると淡い。最近は、合成樹脂に薄いべっこうを張り合わせたものもある。だいたいその形は細長い棒状で、両端を角切りにしたり、楕円(だえん)形にしたり、なかには花笄といって差し込み式になって、両端に手の込んだ牡丹(ぼたん)などの花を細工したものもある。また大きな耳かきを細工したものもある。花笄は、婚礼の際に花嫁文金高島田に挿すもので、松竹梅鶴亀(つるかめ)をあしらった寿(ことぶき)模様が多いのは、髪飾りとして一段と華やかにするためである。また日常生活では、若い人たちは笄の一方だけに花鳥の飾りをつけるのを普通とした。

 元来、笄は、当初は女性よりも男性の用いるもので、髪かきとして用いられた。つまり冠帽をかぶっていた時代には頭髪が蒸れ、また戦乱日夜打ち続くようになってからは絶えず冑(かぶと)をかぶっていたため、髪をかく必要があり使われ始めたことによる。頭をかくために、柔らかく曲げられる金属が用いられた。女性が用いるようになったのは、江戸時代になって下げ髪を始末するためであり、笄を利用した髪形の笄髷(まげ)の発生につながる。江戸時代初期の材料は、鯨(くじら)や鶴の脛骨(けいこつ)が用いられ、べっこうが用いられたのは元禄(げんろく)時代(1688~1704)、蒔絵は8代将軍徳川吉宗(よしむね)の享保(きょうほう)の改革(1716~1745)以後である。

 笄の華やかな発達は、遊里と関係が深く、仏像の光背のように挿すようになったのは寛政(かんせい)の改革(1787~1793)以後で、錦絵(にしきえ)の世界からこれを知ることができる。そして、民間でも2本挿すのが普通となったばかりでなく、上方(かみがた)では笄ざしというものを紙でつくり、これを、髪を結うときに髷の下に結び付けて、この中に通すようになった。明治になって、日本髪よりも手早く簡単に結える束髪(そくはつ)が流行してから、しだいにその影が薄くなったが、それでもその命脈は、第二次世界大戦までは年配者の間にわずかに残っていた。

[遠藤 武]

『喜田川守貞著『類聚近世風俗志』(1934・更生閣)』『貴志孫太夫稿本『鵜真似草子』(安政年間・国立国会図書館本)』


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改訂新版 世界大百科事典 「笄」の意味・わかりやすい解説

笄 (こうがい)

髪飾の一種。笄は平安時代中期の《和名抄》には加美賀岐(かみかき)という名でみえている。これは毛筋立の一種で,鬢(びん)の毛を整える用具である。《源氏物語》《宇津保物語》には笄の名がみえ,中世の貴族や武士は守刀に差し込み,携帯し,女性も懐中に入れて,ともに髪搔き用具としたものであろう。近世には,刀の鞘に組み込む形式になった刀装具に笄が用いられている。これも武士の整髪というはじめの目的から,しだいに形式化されたものといわれる。笄の本来の用途は,その形が棒状であることから,髪の束をまとめ,毛を巻きつけてまとめるのに用いられた実用品であったが,笄と簪(かんざし)の用途が同一視されている時期もある。中国では古くから,女子が15歳になると,髪に金銀玉を飾った笄をつけて成人の仲間入りをするという儀式があった。この場合の笄は簪と区別がつかない華やかなものを飾るらしく,日本のように笄と簪が形や使途の上で区別されてはいない。もっとも日本においても,笄と簪が区別されたのは,近世の結髪が鬢,髱(たぼ),髷(まげ),前髪と分かれ,複雑な髪形になってきた元禄期(1688-1704)以後である。笄で髷をまとめた笄髷という名の髪形が京都で流行し,以来盛んに髪形に用いるようになった。材質や加飾も豊富になり,江戸後期になると櫛と笄の揃物がつくられ,材質や意匠が同じもの,あるいは組物の意匠を分けて,例えば鶴亀を櫛と笄に別々に模様づけする方法などで一対の効果を出したものなどが流行した。また棒状の中央は髷の中にかくれるため,両端に加飾をして中央は無地,あるいは材質を変えている笄もあり,中央が離れる差込み式のものもあった。これは髷を結ったあと,左右から笄を差し込み髷の中で一本につなげる方法である。実用品として髷を巻く用具の笄がこのように形式的になり,髪飾用具となった。取りはずし自由の華やかな装飾を両端につけたものを花笄といい,御殿女中の髷や花嫁の文金高島田に用いられていた。材質は木,べっこう,金属,竹,ガラスなどがあり,珍しいものでは鶴の脛骨でつくられた笄などもある。
髪飾
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百科事典マイペディア 「笄」の意味・わかりやすい解説

笄【こうがい】

日本髪用の髪飾。もと髪をかき分ける用具で男女とも用いた。男性はふつう刀の鞘にはさんだ。女の笄が髪飾となったのは桃山期以降で,下げ髪をこれに巻きつけて結髪した。髷(まげ)に挿して,見える部分だけに彫りや蒔絵(まきえ)・花飾などが施されることが多い。材質はツゲなどの木のほか竹,骨,角,べっこう,象牙,金属,ガラスなど。
→関連項目一宮長常後藤祐乗三所物

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「笄」の意味・わかりやすい解説


こうがい

「髪かき」の意味で,中国では簪 (かんざし) と同一であった。男子の笄は小刀や短刀の鞘に差して髪の乱れを整えるのに用いた。平安時代初期,女性に「笄始め」の儀式が定められ,後期には棒の形になったことが『類聚雑要抄』から知られる。室町時代には三味線の撥 (ばち) の形になり,江戸時代に女子の結髪が盛んになると,棒状の笄を横に挿すようになり,のちにはそりのあるもの,両頭でぬきさしのできるもの,耳かきのついたものなどができ,髪飾りの1つとして使用された。材質は象牙,鼈甲 (べっこう) ,木,竹,馬骨,銀,ガラス,クジラなど多種にわたり,珍しいものではツルの脛骨製のものや蒔絵を施した装飾的なものもつくられた。

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【金銅仏】より

…鋳銅の仏像の表面に鍍金(ときん)をして金色に仕上げたもの。《法華経》方便品や《大乗造像功徳経》などの経典には,造像素材の金属として,金,銀,銅,鍮石(ちゆうじやく),白蠟,鉛,錫,鉄などがあげられており,銀仏鉄仏なども現存しているが,各種の金属製仏像の中で金銅仏が最も広く作られ,製法としては押出仏などの一部を除いてほとんどが鋳造像である。
[歴史]
 金銅仏の製作は仏像造顕の最初期から行われており,北インド,ガンダーラの遺品として,2世紀中ごろ製作のカニシカ王舎利容器の上にあらわされた金銅三尊仏がある。…

※「笄」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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