痛い(読み)イタイ

デジタル大辞泉 「痛い」の意味・読み・例文・類語

いた・い【痛い/甚い】

[形][文]いた・し[ク]
肉体に痛みや苦しみを感じるさま。「歯が―・い」「つねられて―・い」
心に苦痛を感じるさま。精神的につらい。「欠損続きで頭が―・い」
弱点を攻撃されたり打撃や損害をこうむったりして、閉口するさま。「―・いところに触れられる」「―・い目にあう」「この時期に出費は―・い」
俗に、さも得意そうな言動がひどく場違いで、見るに堪えないさま。また、状況や立場・年齢にふさわしくない言動が周囲をあきれさせるさま。
(甚い)程度のはなはだしいさま。多く、連用形を用いる。→いた
(甚い)はなはだしくりっぱなさま。すばらしい。
新発意しぼちの娘かしづきたる家いと―・しかし」〈若紫
動詞の連用形に付いて、その動詞の表す状態がはなはだしい意味を示す形容詞をつくる。「あまえいたし」「うもれいたし」など。
[派生]いたがる[動ラ五]いたげ[形動]いたさ[名]
[類語]痛むうずくずきずきするしくしくするちくちくするひりひりするひりつくしみる差し込む痛める

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「痛い」の意味・読み・例文・類語

いた・い【痛・甚】

  1. 〘 形容詞口語形活用 〙
    [ 文語形 ]いた・し 〘 形容詞ク活用 〙
  2. [ 一 ]
    1. 肉体的に苦痛である。からだの内部の故障や、外から加えられる打撃などで苦しくつらい。
      1. [初出の実例]「いとのきて 痛伎(いたキ)傷には 鹹塩(からしほ)を そそくちふがごとく」(出典万葉集(8C後)五・八九七)
      2. 「みぐしもいたく、身も熱き心地して」(出典:源氏物語(1001‐14頃)夕顔)
    2. 精神的に苦痛である。また、困ることをされて閉口する。とりかえしがつかないほどひどい。つらい。情けない。
      1. [初出の実例]「秋といへば心そ伊多伎(イタキ)うたてけに花になそへて見まくほりかも」(出典:万葉集(8C後)二〇・四三〇七)
      2. 「いと胸いたきわざかな。世に道しもこそはあれ」(出典:蜻蛉日記(974頃)上)
    3. 程度がはなはだしい。おもに連用形を用いる。→いたくいとう
    4. すぐれたさま。気に入ったさま。ほめてよい。すばらしい。
      1. [初出の実例]「新発意(しぼち)の娘かしづきたる家、いといたしかし」(出典:源氏物語(1001‐14頃)若紫)
  3. [ 二 ] 動詞の連用形に付いて、その動詞の表わす状態がはなはだしい意味を示す形容詞をつくる。「あきれいたし」「くんじいたし」など。また「あきたし」「めでたし」のように、熟合することもある。

痛いの語誌

( 1 )「痛む」と同根の、程度のはなはだしさを意味するイタから派生した形容詞で、上代では肉体的・精神的な苦痛をいうのに用いられた。
( 2 )連用形「いたく」は、上代では胸中に苦痛を伴う哀切感を表わす。それが平安時代になると、苦痛を伴わない精神的な驚愕や感動をも表わすようになっていった。また、単に程度が甚だしい意でも用いられるようになって、程度を表わす副詞「いたく」が誕生した。→「いたく(痛)」の語誌。

痛いの派生語

いた‐が・る
  1. 〘 自動詞 ラ行五(四) 〙

痛いの派生語

いた‐げ
  1. 〘 形容動詞ナリ活用 〙

痛いの派生語

いた‐さ
  1. 〘 名詞 〙

痛いの派生語

いた‐み
  1. 〘 名詞 〙

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