染みる(読み)シミル

デジタル大辞泉 「染みる」の意味・読み・例文・類語

し・みる【染みる/×沁みる/浸みる/×滲みる】

[動マ上一][文]し・む[マ上二]
液体気体が他の物に移りついて、次第に深く広がる。また、にじんで汚れる。しむ。「味が―・みる」「匂いが―・みる」「汗の―・みた下着
液体や気体などの刺激を受けて痛みを感じる。しむ。「消毒薬傷口に―・みる」「歯に―・みる」
心にしみじみと感じる。しむ。「親切が身に―・みる」
好ましくない気風の影響を受けて、その傾向をもつようになる。そまる。しむ。「悪習に―・みる」
[用法]しみる・にじむ――「血のしみた(にじんだ)手ぬぐい」「汗のしみた(にじんだ)シャツ」のように、濡れて広がる意では相通じて用いられる。◇「しみる」は液体・気体・におい・味や外部からの刺激などが、内部にまで入りこむことで、「煙が目にしみる」「寒さが身にしみる」「煮物は味がしみるのに時間がかかる」「心にしみる音楽」などという。◇「にじむ」は、その部分から周囲へ広がる、また、内部から表面に出てくる意で、「絵の具の色がにじむ」「落ちた涙で字がにじむ」「涙で街灯がにじんで見える」「涙がにじみ出る」などと用いる。
[下接句]肝に染みる骨に沁みる骨身に沁みる身に沁みる目に染みる
[類語](1滲む浸透染み入る染み込む染み透る染み渡る染み出す染み出る/(2痛むうずくずきずきするしくしくするちくちくするひりひりするひりつく差し込む痛める痛いきりきりずきんずきんがんがんぴりぴりちくり

じ・みる【染みる】

[接尾]《動詞上一段型活用[文]じ・む(上二段型活用)》体言に付いて動詞をつくる。
それがしみついて汚くなる意を表す。「油―・みる」「あか―・みる」
そういうようす・状態に感じられるという意を表す。「世帯―・みる」「年寄り―・みる」
[補説]好ましくないことに言うことが多い。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「染みる」の意味・読み・例文・類語

し・みる【染・沁・浸・滲】

  1. 〘 自動詞 マ行上一 〙
    [ 文語形 ]し・む 〘 自動詞 マ行上二段活用 〙
  2. 液体が物にぬれ通る。しみこむ。また、よごれがついてなかなかとれない状態になる。しむ。
    1. [初出の実例]「かたしきし年はふれどもさごろもの涙にしむる時はなかりき」(出典:蜻蛉日記(974頃)下)
  3. 深く心に感じる。しみじみと心にはいりこむ。しむ。
    1. [初出の実例]「堅く凝りしみたる悪の僻なる妄執を」(出典:ぎやどぺかどる(1599)下)
  4. 刺激がからだにこたえる。また、気体や液体などの刺激で、苦痛を覚える。しむ。
    1. [初出の実例]「君もさはあはれをかはせ人知れず我が身にしむる秋の夕風」(出典:源氏物語(1001‐14頃)薄雲)
    2. 「天窓(てんてん)からお湯を浴ては今のやうに目へ染(シミ)ます」(出典滑稽本・浮世風呂(1809‐13)三)
  5. なじみになる。ほれこむ。しむ。
    1. [初出の実例]「惣じて、しみるぞふかくなるぞといふも、つゐにはうけらるべきとおもふ男にならでは、なき事と見へたり」(出典:評判記・吉原すずめ(1667)上)
  6. 物事が佳境に入る。興が増す。しむ。
    1. [初出の実例]「夜に入ほど酒事染(シミ)て、よいきげん過る時」(出典:浮世草子傾城色三味線(1701)江戸)
  7. 影響を受けてその傾向に染まる。「悪習にしみる」
    1. [初出の実例]「もはや馴染に至りては、しみたる身の上をあかし」(出典:洒落本・舌講油通汚(1781))

染みるの補助注記

古くはマ行四段の「しむ」が使われたが、のち、マ行上二段(上一段)活用が現われ、以後並用されるようになる。現代でもまれに四段活用の例がみられるが、連用形は両活用同形で区別ができない。便宜上、近世口語体の例、および現代の例は上一段活用として扱った。


じ・みる【染】

  1. 〘 接尾語 〙 ( 上一段型活用 )
  2. 体言に付いて、そういうもの、様子、状態らしく感じられる意を表わす。じむ。
    1. [初出の実例]「愚痴にばかりなりて人ばかり恨(うらみ)じみて来てけっく面白く無し」(出典:洒落本・傾城買四十八手(1790)真の手)
    2. 「生質(おひたち)の善(いい)者も居候染(ジミ)ると心がさもしく成ものさ」(出典:滑稽本・浮世床(1813‐23)初)
  3. 体言に付いて、それが染みついてみえる意を表わす。「垢じみる」「油じみる」「汗じみる」など。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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