遊ぶ(読み)アソブ

デジタル大辞泉 「遊ぶ」の意味・読み・例文・類語

あそ・ぶ【遊ぶ】

[動バ五(四)]
スポーツ・趣味など好きなことをして楽しい時間を過ごす。「野球をして―・ぶ」「よく学び、よく―・べ」
何もしないでぶらぶらして時を過ごす。決まった仕事・職がなく暇でいる。「失業して―・んでいる」
飲酒・色事・ギャンブルなどに身を入れる。遊興する。「―・ぶ金欲しさに盗みをはたらく」
労力機械土地などが有効に使われずに捨て置かれる。「手が―・んでいる」「―・んでいる資本
(「…にあそぶ」の形で)見物勉学のために他の土地へ行く。旅行する。遊学する。「京都に―・ぶ」「三年間パリに―・ぶ」
野球で、投手打者のねらいをさぐったり、打ち気をそらしたりするために、わざとボールになる球を投げる。「ツーストライクのあと一球―・ぶ」
相手をもてあそぶ。からかう。「力が違いすぎて、すっかり―・ばれてしまった」
詩歌管弦などを楽しむ。
「をとこは、うけきらはず呼び集へて、いとかしこく―・ぶ」〈竹取
[可能]あそべる
[類語]遊び呆ける遊び戯れる戯れる遊び回る遊び歩く遊び明かす遊び暮らす

あす・ぶ【遊ぶ】

[動バ五(四)]あそぶ」の音変化。
「卒業してから三年になるが、まだ―・んでるぜ」〈漱石野分

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「遊ぶ」の意味・読み・例文・類語

あそ・ぶ【遊】

  1. [ 1 ] 〘 自動詞 バ五(四) 〙
    1. [ 一 ] 興のおもむくままに行動して楽しむ。神事に伴う舞楽を行なうことがもとといわれるが、広く楽しむ行動をいうようになり、現代では、多く子どもが遊戯する、おとなが運動、行楽、遊興などすることをいう。
      1. 思うことをして心を慰める。遊戯、酒宴、舟遊びなどをする。
        1. [初出の実例]「いや年のはに 思ふどち かくし安蘇婆(アソバ)む 今も見るごと」(出典:万葉集(8C後)一七・三九九一)
        2. 「碁打ち韻ふたぎなどしつつあそび給ふ」(出典:源氏物語(1001‐14頃)東屋)
      2. 詩歌、管弦、舞などを楽しむ。遊楽をする。
        1. [初出の実例]「此程三日うちあげあそぶ」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))
      3. 鳥獣、魚などが)楽しそうに動きまわる。
        1. [初出の実例]「潮瀬の 波折(なを)りを見れば 阿蘇比(アソビ)来る 鮪(しび)鰭手(はたで)に 妻立てり見ゆ」(出典:古事記(712)下・歌謡)
      4. いつもいる所を離れて、広い場所で気楽に歩きまわって楽しむ。
        1. [初出の実例]「郊野に逍遙(アソビテ)」(出典:日本書紀(720)雄略即位前一〇月(図書寮本訓))
      5. 学問を修めたり、見聞をひろめたり、さらには、気晴らしなどの目的で他の土地に行く。遊学する。
        1. [初出の実例]「ともに洞庭にあそびての詩也」(出典:中華若木詩抄(1520頃)下)
      6. 料亭、遊里などに行って楽しむ。酒色などにふける。遊興する。
        1. [初出の実例]「丁字屋であそんで来たが、中の町も半分の余出来たの」(出典:洒落本・中洲の花美(1789)小通の登楼)
    2. [ 二 ] 仕事、勉強、働きなど、期待される生産的効果を果たしていない状態にある。
      1. 仕事や勉強をしないで、また、職が得られないでぶらぶらしている。上の学校にはいれないで、浪人することにもいう。
        1. [初出の実例]「いや、あそんでさへをれば、なをりまする」(出典:狂言記・緡縄(1660))
        2. 「常はぶらぶら遊(アソ)んで計(ばかり)居て、試験に優等の点をとるし」(出典:当世書生気質(1885‐86)〈坪内逍遙〉二)
      2. 金、道具、場所などが使われないでいる。
        1. [初出の実例]「王、然れば、一の遊ぶ所の閑なる、令見(みしめ)給へば、童子、其を定(さだめ)つ」(出典:今昔物語集(1120頃か)一一)
        2. 「誠に商人抔(なぞ)は遊んだ金は無(ない)もので」(出典:怪談牡丹燈籠(1884)〈三遊亭円朝〉一八)
      3. 工学上、応力を受けるはずの物がそれを受けていなかったり、付着するはずの物がしていない状態になる。〔改訂増補日本建築辞彙(1931)〕
      4. 本気で立ち向わず、わざと気を抜いた態度をとる。野球で、投手に有利な条件の時、打者の打ち気をそらすために、ボールになる球を投げるなどはその一例。
  2. [ 2 ] 〘 他動詞 バ四段活用 〙
    1. ( 楽器や曲名を目的語にして ) 舞楽を行なう。奏する。
      1. [初出の実例]「我が天皇、猶其の大御琴阿蘇婆(アソバ)せ」(出典:古事記(712)中)
    2. 人をからかう。もてあそぶ。
      1. [初出の実例]「いまいましい。けっくあっちにあそばれた」(出典:滑稽本・東海道中膝栗毛(1802‐09)二)

あす・ぶ【遊】

  1. [ 1 ] 〘 自動詞 バ五(四) 〙 ( 「あそぶ(遊)」の変化した語 )
    1. 思うことをして心を慰める。遊戯をしたり、気楽に歩いたり、遊興したりする。
      1. [初出の実例]「二日や三日、あすんだと云て」(出典:天理本狂言・引括(室町末‐近世初))
      2. 「御説法があるから、あすびながらおざい」(出典:滑稽本・東海道中膝栗毛(1802‐09)三)
    2. 仕事や勉強をせず、また、職が得られずぶらぶらする。
      1. [初出の実例]「きみがわるい・あすんでおじやはみくだり」(出典:雑俳・軽口頓作(1709))
      2. 「仮名垣先生の内に寄食(アスン)でゐる、兵亭定岡さんの作だぜ」(出典:西洋道中膝栗毛(1874‐76)〈総生寛〉一二)
  2. [ 2 ] 〘 他動詞 バ五(四) 〙 人をからかう。もてあそぶ。
    1. [初出の実例]「子ぞうだと思ってそんなにあすんでくんなせへすな」(出典:洒落本・文選臥坐(1790)河東の艷詞)

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