戯れる(読み)タワムレル

デジタル大辞泉 「戯れる」の意味・読み・例文・類語

たわむ・れる〔たはむれる〕【戯れる】

[動ラ下一][文]たはむ・る[ラ下二]
遊び興じる。何かを相手にして、おもしろがって遊ぶ。「子犬が―・れる」「波と―・れる」
ふざける。また、冗談を言う。「人をからかって―・れる」
みだらなことをする。また、男女がいちゃつく。「女に―・れる」
[類語](1じゃれるふざけるはしゃぐたわけるじゃらす遊ぶ遊び呆ける遊び戯れる/(3べたべたいちゃつくあつあついちゃいちゃラブラブべたつく戯れじゃらじゃら

じゃ・れる【戯れる】

[動ラ下一][文]じゃ・る[ラ下二]《「ざれる」の音変化》ふざけたわむれる。まつわりついてたわむれる。「子猫まりに―・れる」
[類語]ふざける戯れるはしゃぐたわけるじゃらす

ざ・れる【戯れる】

[動ラ下一][文]ざ・る[ラ下二]《古くは「さる」とも》
ふざける。たわむれる。「男女が―・れる」
趣がある。しゃれている。風流である。
「さすがに―・れたる遣戸口に」〈夕顔
世慣れている。気がきく。
「かくて待ちけると思ふも、―・れてをかしければ」〈落窪・一〉

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「戯れる」の意味・読み・例文・類語

ざ・れる【戯】

  1. 〘 自動詞 ラ行下一段活用 〙
    [ 文語形 ]ざ・る 〘 自動詞 ラ行下二段活用 〙 ( 文語「ざる」は古くは「さる」か )
  2. ふざける。たわむれる。はしゃぐ。
    1. [初出の実例]「いと小さき小舎人童、『御返りたまはらむ』と言ふ。〈略〉『いとされてくちをしきわらはかな』といふ」(出典:宇津保物語(970‐999頃)楼上上)
  3. 気がきいている。物わかりがよく気転がきく。
    1. [初出の実例]「おやのおはしける時より使ひつけたるわらはの、されたる女ぞ、後見とつけて使ひ給ひける」(出典:落窪物語(10C後)一)
  4. あだめいている。色めいている。くだけた感じがする。
    1. [初出の実例]「はかなきこともいふに、いみじくされいまめく人よりも、げにこそおはすべかめり」(出典:紫式部日記(1010頃か)寛弘五年一一月一日)
  5. すぐれた趣がある。風雅な味わいがある。
    1. [初出の実例]「大きやかなる岩のさまして、されたる常磐木の影、しげれり」(出典:源氏物語(1001‐14頃)浮舟)

戯れるの補助注記

( 1 )語頭清濁に関して「さる」「ざる」両形が考えられ、語源、および後世の「しゃれ(洒落)る」「じゃれる」との関連についても諸説ある。
( 2 )語形上では、「さるる」からの「しゃるる(しゃれる)」、「ざるる」からの「じゃるる(じゃれる)」の派生は自然であり、また、現代語で「しゃれる」=垢抜ける、「じゃれる」=ふざけるの分化は明瞭であるが、この対立が歴史的にどこまでさかのぼりうるのかが問題となる。


たわぶ・れるたはぶれる【戯】

  1. 〘 自動詞 ラ行下一段活用 〙
    [ 文語形 ]たはぶ・る 〘 自動詞 ラ行下二段活用 〙 ( 「たわむれる」の古形 )
  2. そのものに対して、興のおもむくままにふるまう。遊び興ずる。無心に遊ぶ。
    1. [初出の実例]「しきたへの 床のへ去らず 立てれども 居れども ともに戯礼(たはぶレ)」(出典万葉集(8C後)五・九〇四)
    2. 「夏の事なれば、何となう河の水に戯(タハフレ)給ふほどに」(出典:高野本平家(13C前)三)
  3. 本気でないことや、ふざけたことを言う。冗談を言う。また、とりとめもないことを言う。〔新撰字鏡(898‐901頃)〕
    1. [初出の実例]「我に並び給へるこそ君はおほけなけれとなむたはぶれ聞え給ふ」(出典:源氏物語(1001‐14頃)玉鬘)
  4. 本気でなく、事をする。遊び半分のふるまいをする。また、相手を軽くみて、ふざけかかる。
    1. [初出の実例]「慢(みたり)がはしく八正を乖きて、戯(タハフ)れて百非に入る」(出典:大慈恩寺三蔵法師伝承徳三年点(1099)八)
  5. 異性に対してふざけかかる。みだらな言動をする。不倫なことをしかける。
    1. [初出の実例]「あさましと思ふに、うらもなくたはぶるれば」(出典:蜻蛉日記(974頃)中)

たわむ・れるたはむれる【戯】

  1. 〘 自動詞 ラ行下一段活用 〙
    [ 文語形 ]たはむ・る 〘 自動詞 ラ行下二段活用 〙 ( 古くは「たはぶる」→たわぶれる )
  2. そのものに対して興のおもむくままに働きかけてふるまう。遊び興じる。無心に遊ぶ。
    1. [初出の実例]「宮は〈略〉火威の鎧の裾金物に、牡丹の陰に獅子の戯(タハムレ)て前後左右に追合たるを、草摺長に被召」(出典:太平記(14C後)一二)
    2. 「東海の小島の磯の白砂に われ泣きぬれて 蟹とたはむる」(出典:一握の砂(1910)〈石川啄木〉我を愛する歌)
  3. ふざけて言う。冗談を言う。
    1. [初出の実例]「大般若の櫃の中を能々捜したれば、大塔宮はいらせ給はで、大唐の玄弉三蔵こそ坐けれと戯(タハム)れければ」(出典:太平記(14C後)五)
  4. 相手を軽くみてふざけかかる。面白半分の気持でことをする。ふまじめにふるまう。
  5. 異性にざれかかる。みだらな言動をする。また、男女がいちゃつく。痴戯をする。
    1. [初出の実例]「『ソレソレ、爾(さ)う手を上げた所を、恁(か)う緊め付けたものぢゃ』ト戯(タハブ)る」(出典:歌舞伎・三十石艠始(1759)四幕)

じゃ・れる【戯】

  1. 〘 自動詞 ラ行下一段活用 〙
    [ 文語形 ]じゃ・る 〘 自動詞 ラ行下二段活用 〙 ( 「ざれる(戯)」の変化した語 ) ふざけたわむれる。子ども動物などがなれてまつわりついてたわむれる。
    1. [初出の実例]「西隣の女がかほよひほどに、謝崑がいとうてじやれたれば」(出典:京大本湯山聯句鈔(1504))
    2. 「このみけはちかごろ、なんにもげいをしませんよ。〈略〉あのこまはなんにでもじゃれますよ」(出典:幼学読本(1887)〈西邨貞〉一)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

今日のキーワード

仕事納

〘 名詞 〙 年の暮れに、その年の仕事を終えること。また、その日。《 季語・冬 》[初出の実例]「けふは大晦日(つごもり)一年中の仕事納(オサ)め」(出典:浄瑠璃・新版歌祭文(お染久松)(1780)油...

仕事納の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android