翻訳|external ear
爬虫類以上の脊椎動物において,鼓膜が体表よりくぼんだ位置にある場合,鼓膜より外側にある部分の全体を外耳という。いわゆる耳の穴がその主体である。外耳は中耳および内耳と一体になって耳を構成する。進化的にみれば,外耳は中耳およびエウスタキオ管(耳管ともいう)とともに,祖先である原始魚類の前方鰓孔(えらあな)に由来したもので,サメのもつ呼吸孔(退化した鰓孔)と相同のものである。したがって魚類では,耳は主として平衡器官であって,外耳や中耳は存在しない。聴覚器としての耳は両生類以上の動物が備えるが,両生類では鼓膜は体表の皮膚と同じ面に張っているので,外耳は形成されない。爬虫類のうちワニ類と一部のトカゲ類では鼓膜が多少とも落ちこんだ位置にあるため,外耳といえる部分がある(ヘビ類では耳が退化し,鼓膜も外耳もない)。ワニ類,鳥類,および哺乳類では鼓膜は深いくぼみの奥に位置し,外耳は管状になって体表に開く。この管状の部分は外耳道といい,ふつうは軟骨によって取りまかれている。哺乳類のうち,原始的な単孔類,水中生活に適応したアザラシ類,および地中生活に特殊化したモグラ類を除く大半のものでは,外耳道の外口の後上方に集音装置として耳介(耳がら)が発達している。耳介の内部には頭蓋につながる耳介軟骨があり,耳介を支える支柱になっている。耳介軟骨と頭蓋側壁とは動耳筋は耳介筋と総称されるいくつかの筋肉によって結ばれ,これらの作用によって耳介を微妙に動かすことのできる動物が多い。
執筆者:田隅 本生
ヒトの外耳は,体外に突出した耳介と,体内で約2.5cmの深さをもち鼓膜に連なる外耳道とからなる。外耳道は,軟骨に囲まれ後方に向かう軟部外耳道と,骨に囲まれ前方に向かう骨部外耳道とがある。
耳介は音を集め,音の方向決定に役だつといわれているが,人間では動耳筋が痕跡化しており,あまり作用をもたない。外耳道は,音を鼓膜に伝えるとともに,2000Hz近くの音に共鳴して音を強くする作用がある。外耳道には迷走神経が分布しているので,ここをいじると(耳あかをとるときなど)咳がでることがある。耳介は,熱・凍傷や,血豆など外傷をうけやすく,自分の耳あかにもかぶれて耳介・外耳道湿疹をおこす。また外耳道の外側,軟部外耳道は,耳垢(じこう)腺などがあり,細菌感染をおこしやすいため,耳癤(じせつ),外耳道炎などで炎症がおこると激痛を伴う。その際には冷罨法(れいあんぽう)をする(冷やす)とよい。
→耳
執筆者:鳥山 稔
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
哺乳(ほにゅう)類と鳥類にみられる、聴覚器のうち、鼓膜より外の部分をいう。哺乳類の外耳は、耳介(耳殻)と外耳道(外聴道)よりなるが、鳥類に耳介はなく、ミミズクやキジで耳介のようにみえるものは耳羽である。耳介は集音の役目をし、ウサギなどでは耳介を音源に向ける反射が発達するが、ヒトではこれを行う耳介筋は退化している。外耳口(外聴口)から鼓膜までは音振動を空気伝導によって伝える外耳道である。
[村上 彰]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
… 脊椎動物は例外なく聴覚器官をもっている。魚類の聴覚器官は内耳だけからなり,いわゆる中耳や外耳を欠く。コイやナマズのようなコイ類(骨鰾(こつひよう)類)では中耳の代りにウェーバー器官があり,音はうきぶくろからウェーバー小骨連鎖を経て内耳に伝わる。…
…脊椎動物の頭部にある有対の感覚器官で,平衡覚と聴覚をつかさどる。ふつう〈耳の形〉などというときには,哺乳類の頭の両側に突出した耳介を指すが,解剖学的にいえば耳には内耳,中耳,外耳の3部分が含まれる。内耳は刺激を受容する中心的部分で,最も奥深く位置し,進化的にみて最も由来が古く,すべての脊椎動物が例外なく備えるものである。…
※「外耳」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
働き手が自分の働きたい時間に合わせて短時間・単発の仕事に就くこと。「スポットワーク」とも呼ばれる。単発の仕事を請け負う働き方「ギグワーク」のうち、雇用契約を結んで働く形態を指す場合が多い。働き手と企...
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