QT延長症候群(読み)キューティーエンチョウショウコウグン(英語表記)long QT syndrome

デジタル大辞泉 「QT延長症候群」の意味・読み・例文・類語

キューティーえんちょう‐しょうこうぐん〔‐エンチヤウシヤウコウグン〕【QT延長症候群】

心臓の活動電位の持続時間(QT時間)が異常に長くなり、脈が乱れ、立ちくらみや失神などの発作を起こす遺伝性の疾患。トルサードドポアント(トルサデポワンとも)と呼ばれる独特の心電図波形を示す心室頻拍がみられ、心室細動に移行すると突然死に至ることもある。家族性突然死症候群の一つ。治療法は、交感神経の働きを抑制するベータ遮断薬などの服用、心臓に命令を伝達する交感神経の切断、ペースメーカーICDの植え込みなど。LQTS(long QT syndrome)。

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六訂版 家庭医学大全科 「QT延長症候群」の解説

QT延長症候群
(循環器の病気)

どんな病気か

 QT延長症候群は、心電図でQTと呼ばれる部分の持続時間が正常な範囲を著しく超えて延長していて、トルサード・ド・ポアンツと呼ばれる特徴的な心室頻拍(しんしつひんぱく)を生じる症候群です。

 トルサード・ド・ポアンツとは、日本語では倒錯型多形性心室頻拍(とうさくがたたけいせいしんしつひんぱく)と訳されることもある不整脈で、この心室頻拍が起きると失神やけいれんが生じます。頻拍が自然停止せずに、心室細動といわれる不整脈にまで進行した場合は死に至ります。

 この症候群は、先天性のものと後天性(二次性)のものとに分類されます。先天性のものは遺伝性で、QT延長に聴力障害を伴うものと伴わないものとがあります。後天性のQT延長症候群は、薬剤投与によって引き起こされたり、電解質の異常(低カリウム血症や低マグネシウム血症)や徐脈(じょみゃく)(脈が異常に遅くなること)によって引き起こされたりします。

 QTを延長させる可能性がある薬剤は抗不整脈薬、抗生剤(マクロライド系)、抗真菌薬、抗ヒスタミン薬、向精神薬、抗うつ薬、抗潰瘍薬、脂質異常症治療薬など多岐にわたっています。同じ薬剤でも著しくQTが延長する人と延長しない人がいることから、後天性QT延長症候群でも先天性の異常が潜在している可能性もあります。

診断と治療

 先天性QT延長症候群の診断は、心電図所見、失神発作の有無(とくにストレス後の失神の有無)、血縁者にQT延長や突然死した人がいるかどうか、などを基準になされます。

 近年、遺伝子診断によっても診断が可能になり、先天性QT延長症候群のなかにさらにいくつかのタイプが存在することもわかってきました。

 予防治療としては薬物療法があり、徐脈を伴う症例には人工ペースメーカーの植込術も有効です。あるタイプでは薬剤が極めて有効ですが、症状がなくなっても内服を続けなくてはなりません。もちろん、QTを延長させる可能性のある薬剤は禁忌となります。

 また、一部のQT延長症候群では、運動や精神的ストレス、水泳、夜間睡眠中の騒音による急な覚醒(かくせい)目覚まし時計、電話)などがトルサード・ド・ポアンツの誘因になる可能性があるので、そのような誘因を避けることも重要です。一方、心停止病歴のある症例では、確実な突然死の予防治療として植込型除細動器(うえこみがたじょさいどうき)コラム)が推奨されます。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「QT延長症候群」の意味・わかりやすい解説

QT延長症候群
きゅーてぃーえんちょうしょうこうぐん
long QT syndrome

不整脈の一種で、心電図のQ波の開始点からT波の終了点までの時間、すなわちQT間隔の延長(作用)のために、心室性不整脈による失神発作を伴い、ときに心停止に陥る症候群。略称LQTS。

 遺伝性のものは遺伝性(先天性)QT延長症候群とよばれ、T波の変調のほか、高頻度で心室性不整脈すなわちトルサード・ド・ポアントTorsades de pointes型心室頻拍(Tdp、倒錯型心室頻拍)や心室細動による失神発作を伴い、ときに心停止から死に至ることもある。イェルベル・ラング‐ニールセン症候群Jervell and Lange-Nielsen syndromeやロマノ‐ワード症候群Romano-Ward syndromeなどの種類があり、前者は常染色体潜性遺伝であるが後者は常染色体顕性遺伝で、前者には先天性聾(ろう)を伴うが後者には伴わない。近年になって、心筋細胞膜にある、カリウムやナトリウムイオンを通す孔(イオンチャネル)を正しく機能させる遺伝子情報の異常によりQT間隔の延長がみられることがわかり、これまで原因不明であった特発性QT延長症候群はこれが原因と考えられている。

 ほかにカリウムやナトリウムなどの電解質異常や抗不整脈薬など薬物の作用、あるいは高度の徐脈、脳出血や脳梗塞(のうこうそく)など脳血管障害といった後天的な要素がかかわる二次的QT延長症候群がある。

[編集部]

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家庭医学館 「QT延長症候群」の解説

きゅーてぃーえんちょうしょうこうぐん【QT延長症候群 Long QT Syndrome】

[どんな病気か]
 心筋(しんきん)の興奮異常によって特殊な心室頻拍(しんしつひんぱく)や心室細動(しんしつさいどう)がおこり、失神(しっしん)をくり返す病気です。
 先天性のQT延長症候群では、学童期から失神とけいれんをくり返すため、てんかんとまちがえられることがあります。
 心電図のQTという部分の時間間隔が異常に間延びしたときに、危険な不整脈が生じやすくなります。
[原因]
 先天性のQT延長症候群と、後天性のQT延長症候群があります。
 後天性のQT延長症候群は抗不整脈薬の副作用として、または血液中のカリウム濃度が極端に低下したときに生じやすいことが知られています。
 治療は、致死的な不整脈を予防するための薬物治療が中心になります。

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