後産(読み)アトザン

デジタル大辞泉 「後産」の意味・読み・例文・類語

あと‐ざん【後産】

胎児が産み出されたあと、胎盤卵膜などが排出されること。また、その排出されたもの。のちざん。こうざん

のち‐ざん【後産】

あとざん」に同じ。

こう‐ざん【後産】

あとざん

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精選版 日本国語大辞典 「後産」の意味・読み・例文・類語

あと‐ざん【後産】

  1. 〘 名詞 〙 胎児を分娩(ぶんべん)した後、胎盤が卵膜やへその緒とともに排出されることをいう。分娩の第三期に当たる。後(あと)の物。こうざん。のちざん。
    1. [初出の実例]「跡産(ザン)のもつれにて我妻はあへなき最期」(出典浄瑠璃・弓勢智勇湊(1771)道行恋の道草)

のち‐ざん【後産】

  1. 〘 名詞 〙 胎児を分娩したあと、胎盤などが排出されること。あとざん。のちのこと。のちのもの。
    1. [初出の実例]「裏店の嚊(かみ)さん達か寄り合てしもざんとやらのち産(ザン)とやらをとりあげ手は赤蔵になりけれども」(出典:洒落本・傾情知恵鑑(1783))

こう‐ざん【後産】

  1. 〘 名詞 〙 胎児を出産してから一〇~三〇分後に軽い陣痛がおこり、子宮内に残っていた胎盤、臍帯(さいたい)、卵膜が母体外に排出されること。あとざん。のちざん。

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改訂新版 世界大百科事典 「後産」の意味・わかりやすい解説

後産 (あとざん)

〈のちざん〉ともいい,医学的には〈こうさん〉ともいう。胎児娩出後に胎児付属物である胎盤,臍帯(さいたい),卵膜が娩出されるが,この娩出されたもの,またはこの時期をいい,時期を指すときはとくに後産期placental stage,または分娩第3期ともいう。ふつう胎児が娩出されると,子宮は急速に縮小するが,まもなくさらに強い収縮(後産期陣痛)がおこって,胎盤が子宮内壁から剝離(はくり)し,次いで腟外へ排出される。これに要する時間は一般に5~10分であり,15分以上かかることは少ない。20分以上経過しても後産が終わらないときや出血が多い場合は,まず麦角製剤やオキシトシンあるいはプロスタグランジンなどの子宮収縮薬を投与する。もしこれでも胎盤剝離がおこらない場合は,手を厳重に消毒したうえで子宮内に挿入し,胎盤をはがして引っ張って娩出させる(これを用手剝離という)。後産で娩出された胎盤,卵膜,臍帯は合わせて約500~600gであり,その間の出血量はおよそ100~150mlである。
出産
執筆者:

日本では地方によってノチザンクチザン,ゴサン,エナ(胞衣),イナ,イヤなどという。エナが出ることによって分娩は終わる。エナや臍帯は,その取扱い方によって,生児の一生の安危にかかわるものと信じられていた。現在,日本では病院で始末されているが,エナの始末法にはさまざまな作法があった。エナは生児の分身であり,子の運命を定める力があるものとして,産屋の中や床下や屋敷内の木の根,便所や厩のそば,墓地など人に踏まれないところと,家の戸口や上り壇の下など,人によく踏まれるところに埋めるという二通りがあった。多くの人に踏んでもらうほどじょうぶに育つといい,最初に踏んだ者を生児が恐れるようになるので,父親が虫や犬などの通らぬうちに踏んでおくともいう。また埋め方が悪いと子が夜泣きするという。埋めるとき男児に筆・そろばん,女児に糸・針などを入れてその道に優れることを願った。エナワライといって,埋め終わるとそこに居合わせた者がどっと笑うという風習が,滋賀県大津市や沖縄などにあった。
執筆者: 後産は産婦よりむしろ胎児と結びついて信仰の対象となり,それが子どもの運命を将来にわたっても左右するという考え方は,日本のほか,中国,朝鮮マレー諸島,ヨーロッパなどで広く見いだされる。後産は産屋の中,炉の側,戸口,雨だれの落ちる軒先など,儀礼的に重視される場所に埋められることが多いが,土中に埋めずに特定の樹木に掛けて乾燥させるところもある。後産が子どもの運命に影響を与えるという信仰からさらに,その子が重体に陥ったとき,保存してあった後産や臍の緒を薬として飲ませる習慣も世界の各地で見られた。
執筆者:


後産 (こうさん)

後産(あとざん)

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百科事典マイペディア 「後産」の意味・わかりやすい解説

後産【あとざん】

〈のちざん〉〈こうさん〉とも。胎児分娩(ぶんべん)後,胎盤が卵膜および残存臍帯(さいたい)とともに排出されること。胎児分娩後10〜30分で後産陣痛とともに始まり10〜30分を要し,普通200〜400mlの出血をみる。排出物を俗に〈えな(胞衣)〉という。後産は分娩の第3期に当たり,これをもって分娩は完了する。
→関連項目胎盤

後産【こうさん】

後産(あとざん)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「後産」の意味・わかりやすい解説

後産
あとざん

胎児娩出(べんしゅつ)後に胎盤を娩出することで、分娩第3期に相当する。

[編集部]

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妊娠・子育て用語辞典 「後産」の解説

あとざん【後産】

分娩直後、再び軽い陣痛(子宮の収縮)がきて、医師や助産師の指示に従っていきむと胎盤が出てきます。これが「後産」。

出典 母子衛生研究会「赤ちゃん&子育てインフォ」指導/妊娠編:中林正雄(母子愛育会総合母子保健センター所長)、子育て編:渡辺博(帝京大学医学部附属溝口病院小児科科長)妊娠・子育て用語辞典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「後産」の意味・わかりやすい解説

後産
あとざん

胎盤」のページをご覧ください。

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世界大百科事典(旧版)内の後産の言及

【後産】より

…〈のちざん〉ともいい,医学的には〈こうさん〉ともいう。胎児娩出後に胎児付属物である胎盤,臍帯(さいたい),卵膜が娩出されるが,この娩出されたもの,またはこの時期をいい,時期を指すときはとくに後産期placental stage,または分娩第3期ともいう。ふつう胎児が娩出されると,子宮は急速に縮小するが,まもなくさらに強い収縮(後産期陣痛)がおこって,胎盤が子宮内壁から剝離(はくり)し,次いで腟外へ排出される。…

【後産】より

…〈のちざん〉ともいい,医学的には〈こうさん〉ともいう。胎児娩出後に胎児付属物である胎盤,臍帯(さいたい),卵膜が娩出されるが,この娩出されたもの,またはこの時期をいい,時期を指すときはとくに後産期placental stage,または分娩第3期ともいう。ふつう胎児が娩出されると,子宮は急速に縮小するが,まもなくさらに強い収縮(後産期陣痛)がおこって,胎盤が子宮内壁から剝離(はくり)し,次いで腟外へ排出される。…

【出産】より

…ついで胎盤が放出される。これを後産(あとざん)という。子宮筋の収縮は間欠的にかつ周期的に起こり,だんだんと強くなる。…

※「後産」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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