中~長波長で最終的に1平方キロメートルの電波集光能力をもつ画期的な超大型電波望遠鏡(単一パラボラ鏡では直径1キロメートルに相当する)の実現を目ざす大型国際計画。Square Kilometer Arrayの略で、1平方キロメートル干渉計と訳される。短波長の電波であるミリ波・サブミリ波に主眼を置いたALMA(アルマ)に対し、長波長版の次世代電波望遠鏡として、ヨーロッパ、オーストラリア、南アフリカを中心に9か国の参加で進められている。日本は今のところオブザーバー参加。SKAの準備は1兆円ともいわれた資金面、建設場所に関する意見の相違などで難航していたが、2012年、第一フェーズの建設を2か所で並行して進めることで合意した。
SKAの特徴は、最大3000キロメートルに及ぶ広大な範囲に数百基のアンテナ群(ステーション)を設置し、全体を大陸規模の巨大開口合成電波望遠鏡とすることで、1平方キロメートルの大集光面積と高い空間分解能を達成しようとするところにある。さらに現代のデジタル技術を最大限に生かして多数の受信ビームを合成し、観測天体の方向や運動に応じてそれぞれの指向方向を自由に操作するなど、画期的な高能率観測を実現する予定である。2020年代からの開始を想定する第二フェーズの建設で最終的な性能が達成されれば、大集光力はもちろんのこと、百分の一秒角というALMAの高い空間分解能をさらに上回るシャープな電波画像や天体の原子・分子の電波分光データを量産するなど、宇宙の研究に画期的なインパクトを及ぼすものになるだろう。検討されている観測対象でもっとも期待されるのは、膨張宇宙による宇宙の晴れ上り(ビッグ・バンの開始から38万年後と推定)と同時に大量に形成された水素原子の波長21センチ波の観測である。その後宇宙最初の星や銀河が形成されるまでの数億年間は今のところ観測手段が乏しく、「宇宙の暗黒時代」とよばれる。その時期の水素原子の21センチ波はドップラー効果で波長が数十倍~数百倍に引き伸ばされて低周波の電波としてみえるはずだが、SKAはこれを観測して、膨張宇宙初期の天体形成のようすを明らかにするだろう。そのほか、ダークエネルギー、宇宙磁場の形成、ブラック・ホールやパルサーの詳細観測、宇宙初期重力波の検出、星・惑星形成、惑星形成現場での有機分子の形成と進化など、観測対象は広範にわたる。またその強力な電波受信能力を生かし、地球外の文明がさまざまな形で宇宙に放出している人工的電波を探査し地球外文明の検出を試みる宇宙文明探査(SETI(セチ))も、科学的目標に含まれている。
第一フェーズSKAの総建設予算は6.5億ユーロ(約800億円)で、2020年までの完成を目ざす。設置場所は南アフリカとオーストラリアで、中~高周波と低周波の二つの周波数帯(波長帯)をそれぞれ分担する形で、2012年からスタートした。南アフリカでは既存の口径13.5メートルパラボラ64基を中核に200基程度を建設し、広い範囲に配置して、中~多波長帯(センチメートル波帯)電波による運用・観測を行う。アフリカ最初の広範な国際共同科学計画である。電波天文学先進国であるオーストラリアでは長波長(メートル波帯)電波用の面開口型アンテナ250基程度からなる局を500局以上、これも広範囲に分散設置して運用・観測を行う。両者はSKA機構のもとで統合を保ち、本部は2013年からイギリスのジョドレルバンク電波天文台に置かれている。
その成果を踏まえて建設を目ざす第二フェーズSKAでは、アフリカではパラボラ数を2000基に増やし、南アフリカを中心にマダガスカル島を含むアフリカ南部全域に配置する。オーストラリアでは、これもオーストラリア全土とニュージーランドに4000局(総アンテナ基数100万基)を配置する。第二フェーズの資金集めはまだこれからだが、その完成でSKAは名実ともに二つの大陸にまたがって運用される、超巨大な「1キロメートル電波望遠鏡」となるだろう。
[海部宣男 2017年7月19日]
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