税務に関する職業専門家。独立した公正な立場において、納税義務者の信頼にこたえ、納税義務の適正な実現を図ることを使命とする(税理士法1条)。第二次世界大戦後のシャウプ勧告に基づく税制改革(申告納税制度や青色申告制度の採用など)によって、それまでの税務代理士(1942年制定)にかわるものとして、1951年(昭和26)税理士法が制定されて生まれた。業務の内容は、主として税務業務と会計業務があり、具体的には以下のとおりである。
(1)税法に基づく申告、申請、請求、不服申立てなど税務調査や処分に対する主張について代理、代行する税務代理、
(2)税務署に提出する申告書や申請書等の書類を作成する税務書類作成、
(3)税務申告や主張、陳述、申告書等の作成に関し、租税の課税標準等の計算に関する事項について相談に応ずる税務相談、
(4)税理士業務に付随して財務書類の作成、会計帳簿の記帳の代行などの会計業務、
(5)租税に関する訴訟において訴訟代理人(弁護士)とともに出頭・陳述する訴訟の補佐人。
税理士資格の要件は、税理士試験の合格者、税理士試験の全科目免除者(税務署などで一定期間税務事務に従事した者など)、弁護士、公認会計士である。税理士法に定める登録により税理士となる。試験は、会計学の科目(簿記論、財務諸表論)の2科目と税法の科目(所得税法、法人税法、相続税法、消費税法または酒税法、国税徴収法、住民税または事業税、固定資産税)のうち受験者の選択する3科目である。受験者は一度に5科目を受験する必要はなく、1科目ずつ受験してもよい。2022年(令和4)10月末時点で15の税理士会と、各税理士会を会員とする日本税理士会連合会が組織されており、税理士登録者数は8万0441人である。なお、2001年(平成13)の税理士法の改正により、2名以上の税理士を社員として税理士業務を組織的に行うことを目的とする税理士法人制度が新設された(税理士法48条の2)。2022年10月末時点で4743法人が登録されている。
[中村義人 2022年11月17日]
『鳥飼重和監修、内田久美子編『税理士の業務・権限・責任――新税理士法の体系とその解釈』(2002・中央経済社)』▽『右山昌一郎・岡田利夫著、日本税理士会連合会編『税理士法人の業務の進め方と設立の手引き』(2002・中央経済社)』▽『西山恭博著『税理士になるには』改訂版(2018・ぺりかん社)』▽『日本税理士会連合会編『新税理士法』5訂版(2019・税務経理協会)』▽『湊義和著『こんなにおもしろい税理士の仕事』第4版(2021・中央経済社)』
税理士は,税理士法によってその資格が与えられ,租税に関する税務代理等をする独占的権利を有する。税理士法の前身は1942年の税務代理士法で,現在の税理士は,当時税務代理士と呼ばれていた。1951年の税理士法の制定によって税理士となり,その業務と責任が明確にされ,今日に至っている。税理士は租税(所得税,法人税,相続税,贈与税,事業税,市町村民税,固定資産税等)に関して,(1)税務代理,(2)税務書類の作成,(3)税務相談を行うことを業とする(税理士法2条)。〈税理士は,税務に関する専門家として,独立した公正な立場において,納税義務の適正な実現を図ることを使命とする〉(1条)。
税理士となる資格を有するのは,弁護士,公認会計士並びに税理士試験に合格した者及び試験科目の全部について税理士試験を免除される者である(3条)。税理士となるためには,その資格を有する者が,日本税理士会連合会に備えられている税理士名簿に登録されなければならない。また税理士会は,原則として,国税局の管轄区域ごとに一つの税理士会を設立することとされている。そして税理士会に入会している税理士以外の者は,弁護士,公認会計士たる税理士を除いては税理士業務を行ってはならないとされている。なお,弁護士は,所属弁護士会を経て,国税局長に通知することにより,随時税理士業務を行うことができる(いわゆる通知弁護士)。なお,公認会計士は当分の間,国税局長の許可を受けて,その行おうとする税理士業務が小規模なものである限り税理士登録は要さないものとされている。現在(1997)税理士の数は,約6万3000人,税理士会は14となっている。
執筆者:武田 昌輔
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