緑内障(読み)リョクナイショウ(その他表記)Glaucoma

デジタル大辞泉 「緑内障」の意味・読み・例文・類語

りょく‐ないしょう〔‐ナイシヤウ〕【緑内障】

眼圧が異常に高くなり、視神経が障害されて視力が低下する病気。急性では眼痛・頭痛・嘔吐おうとなどの症状があり、進行すると鼻の側からしだいに視野が狭くなり、失明する。瞳孔が散大して青緑色にみえるので、青そこひともいう。グラウコーマ

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精選版 日本国語大辞典 「緑内障」の意味・読み・例文・類語

りょく‐ないしょう‥ナイシャウ【緑内障】

  1. 〘 名詞 〙 眼球の圧力(眼圧)が異常に高まる病気。はげしい痛みとともに視力が減退し、症状が進むと灯火のまわりに虹(にじ)のような輪が見え、視野がせばまって、失明に至ることもある。ひとみが散大して青緑色になるところからの名。あおそこひ

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家庭医学館 「緑内障」の解説

りょくないしょうあおそこひ【緑内障(青そこひ) Glaucoma】

◎眼圧が上がり、ひとみが緑色に
[どんな病気か]
◎原因のほとんどが隅角(ぐうかく)の故障
[原因]
◎種類によって異なる症状
[症状]
◎眼圧を正し、視野の悪化を防ぐ
[治療]
[日常生活の注意]

[どんな病気か]
 緑内障は、眼球の内圧(眼圧)が高まるために、視神経が障害されて、しだいに視野が欠けていく病気です。
 40歳前後からおこる頻度が高くなり、1988~89年の疫学調査では、40歳以上の約3.5%、約194万人がかかっているとされています。
 緑内障は、急性と慢性の2つに大きく分けられます。
■急性緑内障
 眼圧の急激な上昇によっておこるもので、緑内障発作(りょくないしょうほっさ)とも呼ばれます。本来、透明な角膜(かくまく)が浮腫(ふしゅ)(むくみ)のためにガラスに息を吹きかけたようにくもり、瞳孔(どうこう)(ひとみ)が開き、緑色に見えます。このため、俗に青そこひといわれます。適切な処置をしないと2~3日で失明(しつめい)します。
■慢性緑内障
 徐々に視野が欠けていきますが、ほとんど自覚症状がなく、視力も最後まで保持されるため、なかなか発見されにくいのが特徴です。

[原因]
 眼球がその形を保ち、機能を正常に維持するためには、一定の眼圧が必要です。この眼圧は、房水(ぼうすい)と呼ばれる液体の産生と排出のバランスによって15mmHg(水銀柱)前後に保たれています。
 房水は毛様体(もうようたい)でつくられ、後房(こうぼう)~瞳孔(どうこう)~前房(ぜんぼう)と流れ、隅角(ぐうかく)と呼ばれる排出路から眼球の外へ出ていきます。緑内障は、ほとんどが、その房水の排出路の故障によっておこります。
 故障には、隅角が虹彩(こうさい)の根元によってふさがれる閉塞隅角緑内障(へいそくぐうかくりょくないしょう)と、隅角の排出路の機能に異常がおこる開放隅角緑内障(かいほうぐうかくりょくないしょう)とがあります。どちらも房水がうまく流れ出ないで眼球内にたまるため、眼圧が上がります。
 このほかに、隅角の先天的な発達異常による先天緑内障や発育異常型緑内障(はついくいじょうがたりょくないしょう)、眼圧は高くても目の機能に異常がない高眼圧症(こうがんあつしょう)、眼圧は正常なのに視神経が弱く緑内障となる正常眼圧緑内障(せいじょうがんあつりょくないしょう)がありますが、なぜこのような緑内障になるのかの原因はわかっておらず、生まれつきの素因に老化現象が加わって発病すると考えられています。

[症状]
 ひとくちに緑内障といっても、その種類によって、出現する症状はさまざまです。
■閉塞隅角緑内障(へいそくぐうかくりょくないしょう)
 急性と慢性で異なります。急性閉塞隅角緑内障は、頭痛、眼痛、吐(は)き気(け)、嘔吐(おうと)が急におこり、頭蓋内出血(ずがいないしゅっけつ)など内科の病気とまちがえやすいため、初期の治療が遅れて失明(しつめい)に至ることがよくあります。
 結膜(けつまく)(白目(しろめ))が赤く充血し、角膜(かくまく)(黒目(くろめ))が濁り、瞳孔(どうこう)(ひとみ)が大きく開き、視力も低下してきます。本人は気分が悪いので目を閉じているため、この目の症状に周囲の人が気づかないこともあります。
 おもに夜間におこることが多く、散瞳(さんどう)(瞳孔が開く)をきっかけにおこります。暗いところや薬物(かぜ薬、精神安定剤など)による散瞳、長時間のうつぶせ、大量の水分摂取、白内障(はくないしょう)の進行などの誘因があります。
 慢性閉塞隅角緑内障(まんせいへいそくぐうかくりょくないしょう)は、眼圧は上がりますが無症状で、徐々に視野欠損を生じます。ときどき電灯のまわりに虹(にじ)が見えたり(虹視症(こうししょう))、軽い充血、眼痛がおこります。欧米人に比べ日本人に多く、また女性に多い傾向があります。ときに急性緑内障発作になることがあります。
■開放隅角緑内障(かいほうぐうかくりょくないしょう)
 眼圧は上がりますが最初は無症状です。徐々に進行し、目が疲れやすい、目がかすむ、頭が重い、電灯のまわりに虹が見えるという症状(虹視症)が現われ、しだいに視野(見える範囲)欠損が生じ、ついには視力が衰えます。
 40歳以上の人の有病率は0.58%ですが、しばしば眼精疲労や老視と誤解され、手遅れになる傾向があります。とくに、近親者に緑内障の人がいる場合は発症率が高くなるので、一度は眼科医の診察を受けるべきです。
■正常眼圧緑内障(せいじょうがんあつりょくないしょう)
 日本人にもっとも多い緑内障で、40歳以上の有病率は約2%です。開放隅角緑内障と同様、自覚症状に乏しく、眼圧は正常なのに、緑内障性の視神経視野障害となるものをいいます。眼圧が平均値より低くても、視神経が耐えられる眼圧には個人差があるため、人によってはその眼圧(健常眼圧)が低く、視神経が障害される場合があります。このような場合には、緑内障の治療を受け、さらに眼圧を下げる必要があります。
■高眼圧症(こうがんあつしょう)
 眼圧が基準値より高いのに、目の機能に異常が出ないものをいいます。とくに治療の必要はありませんが、経過観察中に開放隅角緑内障になることもあるため、目の機能に異常がなくても定期的な検査を受けるべきです。
 眼圧は個人差だけでなく、1日のうちでも変動があり一定していません。1回だけ測った眼圧が高いからといって、すぐ緑内障と決めつけることはできません。日を変えて眼圧を測ってもらい、さらに視野検査など緑内障の精密検査を受けることも必要です。
■先天緑内障(せんてんりょくないしょう)(「先天緑内障」)
 房水の排出路(隅角)のつくりが生まれつき未発達なためにおこるもので、乳幼児や若い人にみられます。
 乳幼児の場合は、眼球壁に弾力性があるため、眼圧が高まると、眼球自体が大きくなります。正面から見ると、角膜が大きくなり、ウシの目玉のように見えるので、牛眼(ぎゅうがん)とも呼ばれます。
 角膜が濁り、明るいところでは、まぶしさのため、目をあけようとせず、涙を流します。とくに強い痛みを訴えるわけではないので、子どもにこのような症状が現われたときは、眼科を受診しましょう。
続発緑内障(ぞくはつりょくないしょう)
 病気の症状の1つとしておこった緑内障です。
 原因となる病気に、虹彩毛様体炎(こうさいもうようたいえん)・ぶどう膜炎(まくえん)、水晶体前嚢偽落屑(すいしょうたいぜんのうぎらくせつ)、過熟白内障(かじゅくはくないしょう)、新生血管(糖尿病、眼底出血)、単純および帯状ヘルペス、外傷、腫瘍(しゅよう)などがあります。
 また、副腎皮質(ふくじんひしつ)ホルモン薬(ステロイド)の副作用でおこる場合もあり、点眼や内服しているとき、眼圧が上昇します。この副作用は、ごく一部の人にみられるものですが、長い間、ステロイドを使用している人、緑内障の家系の人は眼圧を検査してもらう必要があります。

[治療]
 緑内障を完全に治すことはできませんが、治療して眼圧を正常範囲に維持できれば、視野の悪化が防げます。一生治療を受ける必要がありますから、身近なかかりつけの専門医を決めておくことがたいせつです。あちこち病院を変えると、ふだんの眼圧の状態や、前の医師が行なった治療の内容がわからないため、眼圧の調整がうまくいかず、結果的に悪くしてしまうからです。
■急性閉塞隅角緑内障
 ただちに治療しないと2~3日で失明します。
 房水(ぼうすい)の流れが瞳孔(どうこう)部で遮断されているので、まず高浸透圧剤の点滴による静脈注射か内服によって眼圧を一時的に下げてから、縮瞳剤(しゅくどうざい)を何度もさし、瞳孔部での遮断を解除します。遮断が解除できたら、その後はレーザー光線照射で虹彩に孔(あな)をあけ、二度と瞳孔部で遮断されないようにバイパスをつくります。遮断を解除できないときは入院して、虹彩を小さく切除する虹彩切除術が緊急に行なわれます。
■慢性閉塞隅角緑内障、慢性開放隅角緑内障
 一度失われた視野は回復しませんから、早期発見、早期治療しかありません。いずれの緑内障も眼圧を下げることが必要ですが、視野欠損の程度や、また緑内障の程度により目標となる眼圧が異なります。
 一般的には、視野欠損が進行していれば、より眼圧を低くしなければなりません。眼圧を下げるには、まず眼圧下降剤の点眼で眼圧を調整します。効果がなければ、内服が併用され、それでも効果がなければ、レーザー治療や手術を行ないます(コラム「慢性閉塞隅角緑内障、慢性開放隅角緑内障の治療」)。
 いずれも眼圧を下げる意味しかなく、視野は回復しません。
■正常眼圧緑内障
 基本的には開放隅角緑内障の治療に準じますが、もともと眼圧はあまり高くないので困難です。
 最近では、視神経の血流回復を目的とする、点眼内服治療を行なう傾向にありますが、効果ははっきりしていません。
■続発緑内障
 もとの病気の治療とともに、慢性閉塞隅角緑内障、慢性開放隅角緑内障に準じて緑内障の治療を行ないます。
■その他の緑内障の治療
 病状に応じて、眼圧を調整したり、手術が行なわれます。

[日常生活の注意]
 心身の過労を避け、規則正しい日常生活が望まれます。
 喫煙は血流量を低下させるので禁忌(きんき)です。また、高血圧、糖尿病などの全身疾患も緑内障の悪化の危険因子です。
 いずれの緑内障も、早期発見、早期治療がたいせつですから、40歳を超えたら、定期的に眼科検診を受けるようにしましょう。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「緑内障」の意味・わかりやすい解説

緑内障
りょくないしょう
glaucoma

眼圧が正常値を越えて高い状態が続くと、その高さや持続時間に応じていろいろな程度の特徴ある視神経障害が起こる。この状態を緑内障というが、これは、いわば古典的緑内障である。緑内障は、急性または慢性に進行するが、近年の日本人に関する調査研究により、慢性に経過するタイプの90%以上は眼圧が正常範囲に留まっていることが明らかにされ、新たなタイプの緑内障として世界の注目を浴びた。そして、世界の各地にも、このタイプの多いことが改めて認識されるようになった。このタイプの緑内障は、正常眼圧緑内障とよばれる。また、これらの緑内障は原因不明であることから、すべて原発緑内障とよばれる。緑内障は遺伝病の範囲には入るが、遺伝子や形式は複雑でいまだに解明されてはいない。

 眼圧は眼房水(がんぼうすい)の産生と眼外への流出の量的バランスによって正常の一定レベル(21水銀柱ミリメートル以下)に保たれるもので、ブドウ膜炎、眼内出血、眼内腫瘍などの眼疾患で眼房水の産生が過剰になったり、流出障害が起こると、それに相当して眼圧が上昇し、持続すれば視神経障害が起こり緑内障になる。このように、何らかの眼疾患に続発する緑内障は、続発緑内障とよばれる。アレルギー性結膜炎や鼻炎に頻繁に使用されるステロイド点眼、点鼻剤は1か月以上続けると数%の人に眼圧が著しく上昇し、さらに続けると緑内障になり、非可逆的な視神経障害になるので、注意が要請される。

 このほか、先天型の発達緑内障があるが、これについては牛眼の項目を参照されたい。

 原発緑内障には、眼房水の流出部にあたる前房隅角(ぐうかく)が、開放か、閉塞(へいそく)か、により、(1)原発閉塞隅角緑内障、(2)原発開放隅角緑内障、の二つのタイプに分類される。

[岩田和雄]

原発閉塞隅角緑内障

通常毛様体から産出された眼房水は、虹彩の裏面を通って瞳孔(どうこう)から前に流れ出て、前房を充たし、その隅の前房隅角からシュレム管を通り、静脈に排出される。なんらかの原因で瞳孔部で流れがブロックされると、眼房水が虹彩の裏面にたまり、虹彩をドーナツ状に前方にふくらませ、前房隅角を閉塞してしまうので、その閉塞の程度に応じて眼圧が上昇する。急性に高度に起こることが多く、急性閉塞隅角緑内障という。眼痛、頭痛、嘔吐(おうと)などで苦しみ、他疾患と誤診されやすい。前駆症状として、疲労時などに目がかすんだり、電灯のまわりに虹がかかってみえたりすることがあり、安静にすると症状が消える。眼圧上昇で角膜に浮腫(ふしゅ)がくることによる。急性発作時には可及的にすみやかに眼圧下降治療を受けないと、失明またはそれに近い視機能障害を残す。基本的治療法は、虹彩に小さな孔(あな)を開ける虹彩切除で治療せしめ得るが、現在は、外来で、レーザーを用い短時間で実施される。予防的に実施しておけば、発作を防ぐことができるが、数年後に水泡性角膜症となり、角膜移植が必要となることがあり、慎重な適応が要請されている。隅角閉塞が不十分に起こっているときには慢性に経過するが、同じ治療法が施行される。なお、水晶体を剔出(てきしゅつ)し、人工レンズ(眼内レンズ)を挿入する白内障治療手術があり、緑内障治療にも適応される場合がある。半永久的治療が得られるので、近年、白内障がなくとも、初期からその手術がなされる傾向となった。

 瞳孔部のブロックのほかに、解剖学的異常で平坦な虹彩が前方に張り出し、隅角を閉塞する別のタイプがある。これはプラトー虹彩緑内障とよばれる。レーザーで虹彩周辺を焼き縮めて隅角を開放するが、その方法で効果がないときは、水晶体を摘出するなどする。

 閉塞隅角型の緑内障は、統計によると、女性に多く、男性の3倍あり、発生地域としては沖縄に多いことが知られている。

[岩田和雄]

原発開放隅角緑内障

慢性に徐々に視神経障害が進行するタイプで、放置すると、20~30年以上の長い経過で失明に近くなる。正常眼圧の範囲(21水銀柱ミリメートル以下)にあっても、眼圧が低いほど進行が緩く、正常範囲を越えた場合はその程度に応じて進行が速くなる。視神経障害は視野が周辺から中心に向かって狭くなるもので、自覚症状なしで進み、視野狭窄(きょうさく)が高度になって、見えるはずのものが見えないことで初めて気付かされるので、これが早期発見を妨げている。日本のある地方の調査で、発見された緑内障の90%の人は自分が緑内障であることを知らないでいたという。

 ヒトには1500万本を越える大量の視神経線維があり、眼に映る映像を脳に送っているが、その視神経線維がいまだ不明の機序で次第に減少し、それによる視野欠損がこの種の緑内障では、徐々に拡大するのが特徴であり、失われた視神経線維が再生することはない。視野欠損の映像は脳に送られないので、欠損が自覚できない。日本人では40歳代で約2%の人が罹患(りかん)し、加齢とともに増加して70歳代以上では8%にもなる。

 現在、点眼による強力な眼圧下降剤が多種類使用可能となり、早期に発見して十分な眼圧下降を保つことができれば、進行はきわめて緩くなり、生涯生活に支障をきたさない程度に抑えることができる。薬だけでは治療が不十分の場合は手術による眼圧下降も必要となる。早期発見が予後を決める重要な鍵をにぎっているので、年1回の成人病検診や眼科専門医の検査を受けることが奨められる。検査は、眼圧検査、視野検査、眼底検査、前房隅角検査、必要に応じてCT、MRI、全身検査など多義にわたるが、コンピュータの介在により効率よく実施される。一度発見されると、生涯にわたり管理が必要となる。

[岩田和雄]

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改訂新版 世界大百科事典 「緑内障」の意味・わかりやすい解説

緑内障 (りょくないしょう)
glaucoma

眼圧の上昇と上昇した眼圧による視野等の視機能の障害を特徴とする疾患。瞳孔が青く見えることもあるので青底翳(あおそこひ)とも呼ばれる。40歳以上の人の約1%近くにみられるといわれる。眼圧は,毛様体上皮からの房水産生と前房隅角部(角膜の内側と虹彩が交わる部分)を経ての房水流出のバランスによって決定される。したがって,理論上,房水産生過多ないしは房水流出障害のいずれか,あるいはその両者の合併によって,眼圧上昇が起こりうるが,日常みられる緑内障は,ごくまれな例外を除き,房水流出障害に起因する。視野異常の程度は,眼圧レベル,罹病期間等によりさまざまである。ただし眼圧は高くても視野にまったく異常のないものは高眼圧症という。また緑内障のために失明したものを絶対緑内障という。

なにかが原因となり生ずる続発緑内障と,原因を他に帰することのできない原発緑内障と,胎生期の隅角発育異常により生ずる先天緑内障の三つに大別される。原発緑内障と続発緑内障は,さらに開放隅角緑内障と閉塞隅角緑内障とに分けられる。

(1)原発開放隅角緑内障 房水の流出障害から,眼圧が上昇して起こる。徐々に発病し,その進行は一般にゆるやかではあるが,放置すれば最後には視神経萎縮で失明に至る。40歳以上に比較的多い。自覚的には,初期の段階では,無症状のことも多いが,軽度の眼精疲労,頭重感,視力低下等を訴えることもある。したがって,たまたま眼圧を測定し,発見されることもある。視野の異常は,初期には固視点(視野の中心)近くのブエルム領域の欠損(ザイデル暗点ともいう)であるが,進行すると周辺も侵され,ついには全欠損となる。隅角検査を行うと,隅角は通常広隅角であるが,繊維柱帯からシュレム管までの間に最大の房水流出障害があると考えられている。なお,眼圧が正常範囲内にあるにもかかわらず視野が侵され,かつ視神経乳頭に典型的緑内障性陥凹のあるものを,一般に低眼圧緑内障という。

(2)原発閉塞隅角緑内障 一般に前房が浅く隅角の狭い眼に起こりやすく,隅角の閉塞によって眼圧は上昇する。この閉塞が急激に発症したものを急性型,ゆるやかにかつ進行性に閉塞するものを慢性型という。前者では,症状として急激に発症する眼痛,頭痛,悪心・嘔吐,視力低下等がある。眼圧は多くの場合50mmHg以上に上昇するため,放置すれば短期日の間に失明しやすい。精神感動や過労が誘因となることもある。後者では,無症状のことが多く,視機能障害の進行型式は原発開放隅角緑内障に似る。

(3)続発緑内障 おもな原因として,ぶどう膜炎,内眼手術,副腎皮質ホルモン剤や散瞳薬の使用,外傷等がある。

(4)先天緑内障 胎生期の隅角部発育異常による房水流出障害のため眼圧は上昇する。通常,隅角だけの発育異常の場合が多く,これを原発先天緑内障という。また隅角部以外の発育異常,例えば無虹彩症やスタージ=ウェーバー症候群などの発育異常を伴う場合もある。原発先天緑内障では,角膜が浮腫混濁し,また高眼圧のために,角膜径が増大する。眼球がやや突出して,牛の眼のようにも見えることから牛眼とも呼ばれる。

緑内障のため損なわれた視野や視力は回復しない。そこで,現在の視機能をできるだけ保存させようとする目的で,薬物療法や手術療法が行われる。薬物では,ピロカルピン,エピネフリン,β遮断剤の点眼薬,炭酸脱水酵素阻害剤の内服,高浸透圧剤の点滴静注などがおもに用いられる。手術療法としては次のようなものがある。(1)虹彩切除術 角膜輪部を切開し,虹彩を一部引き出して切除する。(2)繊維柱帯切除術 強膜を半層切開し,シュレム管を中心とし繊維柱帯を含む深部強角膜片を切除する。(3)繊維柱帯切開術 隅角部を直視下で,繊維柱帯を切開する。(4)毛様体冷凍凝固術 毛様体を-70~-80℃で冷凍する。(5)隅角切開術 先天緑内障に行われる。なお近年,(1)(2)の観血的手術の代りに,レーザー光線の照射によって眼圧を下降させる虹彩切開術や隅角形成術が主流となっている。
目,眼
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食の医学館 「緑内障」の解説

りょくないしょう【緑内障】

《どんな病気か?》


 緑内障(りょくないしょう)は、眼球の内側の圧力(眼圧)が高まるために、視神経が害されて、しだいに視野が欠けていく病気です。
 大きく急性緑内障と慢性緑内障とにわかれ、急性緑内障は適切な処置をしないと2、3日で失明してしまいます。
 中高年に多いのは慢性緑内障です。この場合は進行が遅いため、ほとんど自覚症状がなく、発見されにくいのが特徴です。
 老眼後に発症することが多いので、老眼になったら、眼科で緑内障の検査もしてもらうといいでしょう。

《関連する食品》


〈予防に有効なビタミンB12眼圧を下げるCとフラボノイド〉
○栄養成分としての働きから
 緑内障に効果があるのは、ビタミンB12、C、フラボノイドです。視神経の働きを助けるビタミンB12は、緑内障の予防に有効で、アサリ、カキ、レバーに多く含まれています。
 また、ビタミンCやフラボノイドには、コラーゲンの生成を助けて毛細血管を丈夫にする働きがあります。ビタミンCは、ミカン、ネーブルオレンジに、フラボノイドはミカンなどの柑橘類(かんきつるい)や、アンズ、そば粉に多く含まれています。
○注意すべきこと
 ストレス、カフェイン、喫煙は、血流量を低下させるのでよくありません。
 また、糖尿病や高血圧も緑内障を悪化させるもとになります。
 過労やストレスを避けて、規則正しい生活を心がけることがたいせつです。

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百科事典マイペディア 「緑内障」の意味・わかりやすい解説

緑内障【りょくないしょう】

青そこひとも。眼圧が病的に上昇する疾患。虹彩炎などの眼疾患に続発するもの(続発緑内障)もあるが,多くは他の眼疾患を認めず,原発緑内障と呼ばれる。また,房水の隅角に生まれつき異常があるために起こる先天性緑内障もある。原因は未確定。そのうち,単純緑内障は,自覚症状が少なく,長い間に次第に眼圧が上昇し,視野がせまくなり,視力も低下し,ついには失明に至る。これに対し,初期に眼圧が急昇し,視力も急激に減退し,眼痛,頭痛,眼球の発赤などの症状を伴うものを炎性緑内障といい,これも最終的には失明に至る。難治な病気であるが,ピロカルピンなどの薬物療法または手術により眼圧の低下を図る。
→関連項目そこひ瞳孔散大白内障

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「緑内障」の意味・わかりやすい解説

緑内障
りょくないしょう
glaucoma

あおそこひ。眼圧の異常上昇が続いて,そのため視神経がおかされ,眼の機能的あるいは器質的障害が起り,放置すると失明する疾患。多くは眼のちらつき,夜,灯火の周囲に虹のような輪が見えるといった視覚障害と同時に頭痛を伴い,視野が狭くなることもある。血液やリンパの循環障害のほか,素質や強い情動,ストレスの影響の認められる場合がある。緑内障は広隅角緑内障と狭隅角緑内障に分類され,通常,前者には保存的療法 (点眼薬による) ,後者には手術を行う。

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栄養・生化学辞典 「緑内障」の解説

緑内障

 俗にあおそこひという.眼圧の調整機構の障害によって眼圧が上昇して視機能に障害が生じる症状.ときに失明する.

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世界大百科事典(旧版)内の緑内障の言及

【眼圧】より

…したがって,房水排出能が低下したり房水産生が増加するという病的な状態では,眼圧は上昇する。一般に21mmHg以上の眼圧を高眼圧といい,これに視機能障害の加わったものは緑内障と呼ばれる。その反対に,眼圧の異常に低いものを低眼圧という。…

【白内障】より

…先天白内障の原因としては,妊娠3ヵ月以内の妊婦の風疹,麻疹感染,X線被曝,栄養不良,ステロイド剤の投与などがある。(c)併発白内障 ぶどう膜炎,網膜色素変性症,網膜剝離(はくり),絶対緑内障,眼内腫瘍等の疾患から,二次的に起きるものである。これらの疾患からの毒素が水晶体の代謝を障害し,混濁すると考えられている。…

【光凝固】より

…凝固力や位置の微細なコントロールは不可能であるが,やや広範囲で穏やかな組織反応をもたらすので,主として網膜剝離手術に用いられる。また続発緑内障で毛様体に対して,あるいは光凝固が不可能な進行した増殖性網膜症で眼底に対して試みられることがある。【小林 義治】。…

※「緑内障」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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