モーセ五書(読み)モーセゴショ(英語表記)Pentateuch

翻訳|Pentateuch

デジタル大辞泉 「モーセ五書」の意味・読み・例文・類語

モーセ‐ごしょ【モーセ五書】

旧約聖書最初の五書「創世記」「出エジプト記」「レビ記」「民数記」「申命記」の総称ユダヤ教トーラーと呼ばれる部分で、内容は「創世記」がモーセ以前、「出エジプト記」以下はモーセを中心として、神より与えられたイスラエル律法が述べられている。前13世紀以降長期にわたる伝承集成の末、400年ごろ現形に編集された。モーセの著作と考えられたためにこの名がある。→モーセ

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改訂新版 世界大百科事典 「モーセ五書」の意味・わかりやすい解説

モーセ五書 (モーセごしょ)
Pentateuch

ギリシア語ペンタテウコスpentateuchos(〈五つの巻物〉の意)の訳であって,旧約聖書の最初の五つの書物,つまり《創世記》《出エジプト記》《レビ記》《民数記》《申命記》の総称。この呼称は後1世紀ごろから登場するが,ユダヤ教では〈律法(トーラー)〉と呼んだ。古代イスラエル民族の揺籃の時代を,天地創造の場面設定から説き起こし,世界と人類の諸問題を堕落物語,カインの兄弟殺し,ノアの洪水物語,バベルの塔建設による人類の傲慢などの神話,口碑を用いて明らかにし(《創世記》1~11),次いで,アブラハムイサクヤコブというイスラエルの族長物語を置いて,この人類の悲劇性に対する答としての神による選びの使命を明らかにする(《創世記》12~50)。ヤコブのエジプト下りを介し,《出エジプト記》-《レビ記》-《民数記》は,迫害苦難の中で指導者とされたモーセによるエジプト脱出,荒野のさまよいとつぶやき,試練を通しての民族の約束の地への旅が描かれる(《出エジプト記》1~18,《民数記》10:11以下)。荒野彷徨物語の中心には,シナイ山における神ヤハウェと民イスラエルの契約(《出エジプト記》19~24,32~34),礼拝に関する詳細な規定(《出エジプト記》25~31,35~40,《レビ記》,《民数記》1~10:10)を置く。《申命記》は,約束の地カナンを目前にしたモーセの遺言の形をとる。資料的には前2千年紀より前5世紀に及ぶ一大国民文学であって,旧約聖書全体の基本を成し,イスラエルの民の生の範型を示すとされる。
律法
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のモーセ五書の言及

【旧約聖書】より

…この配列は,ユダヤ教団における正典化の順を示している。〈律法〉,すなわち《創世記》から《申命記》にいたる最初の5巻は,〈モーセ五書〉とも呼ばれる。〈預言者〉はさらに二分され,前半は《ヨシュア記》から《列王紀》までの歴史書であり,後半が《イザヤ書》から〈小預言書〉までの預言書である。…

【シナゴーグ】より

…その起源については種々の説があるが,一般には前586年のユダ王国滅亡後のバビロン捕囚時代に,焼失したエルサレムの神殿(第一神殿)に代わる彼らの公的祈りの場所として発達したとする説が有力である。捕囚後の前515年にエルサレムの神殿が再建され(第二神殿),彼らの宗教的生活規範である律法書(〈モーセ五書〉)が完成してからは,これを共に読み学ぶ機関となった。とくにパレスティナでは,律法の知識をユダヤ全国民の間に徹底させることによって民族の一体性を維持しようとするパリサイ派によって,律法教育の場として用いられた。…

【律法】より

…また,福音=新約聖書と対立させ,律法=旧約聖書の意味に用いる場合もある。より狭義に用いる場合は,旧約聖書内の〈律法〉,つまり旧約聖書の最初の五書(モーセ五書)の別名として,とくにユダヤ教で用いられ,〈トーラーTorah〉ともいわれる。その場合は,〈律法(トーラー)〉〈預言者(ネビーイーム)〉〈諸書(ケスービーム)〉という三区分の一つとして用いられる。…

※「モーセ五書」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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