日本の百科全書。中国や日本の先行の類書の体裁にならう。30部,1000巻(和装本350冊,洋装本50冊)。ほかに総目録索引1冊。1914年完成。初版は1896-1914年刊行。日本の歴史上,1867年(慶応3)までの制度・文物および社会全般の事項について,古今の書籍・文書などから関係する史料を原文のまま引用し理解させようとする。事項は天部,歳時部,地部,神祇部,帝王部以下,動物部,植物部,金石部まで30部に分けられ,さらに編・条・項と分類し,必要あるときは,付・併入などの配列を加えて,事項の遺漏がないように努めている。一つ一つの事項には編者の説明はないが,各部の初めに総説,各編の初めには解題が,編者によって付けられている。1879年,文部大書記官西村茂樹の建議により,文部省内に国学者の小中村清矩,榊原芳野と漢学者の那珂通世3名からなる古事類苑編纂掛を置き編纂開始。次いで完成を急がせるため,編纂年限を計9年半と定め,小杉榲邨,佐藤誠実,松岡明義ら8名の国学者,漢学者を参加させ,小中村に協力させた。しかし期限内に完成する見込みが立たず,1885年の官制改革のとき,編纂中止となった。翌年,文部大臣森有礼は事業の再興を図り,小中村を編纂委員長とし,東京学士会院(会長加藤弘之,幹事重野安繹)の監督下に文部省内で編纂を再開した。90年神道事務局が設立した皇典講究所は,文部省の委託をうけて,稿本と収集史料とを引き継いで編纂することになり,漢学者川田剛を検閲委員長として,国学者,国文学者,考証学者などを集め,40部1000巻の構想を立てた。しかし完成期限を2年延長しても完了できず,事業を援助してきた皇典講究所所長山田顕義らの病死があり,再び中絶するかにみられた。95年神宮司庁は内務省社寺局の斡旋をうけ,東京に古事類苑編纂事務所を設け,川田を編修総裁に,佐藤を編修(のちの編修長)にあて,5年以内に編纂出版完了を目標に再出発した。川田の死後,細川潤次郎が受け継ぎ,期限をさらに7年余延長して,1907年編纂を完了した。この間,校合員ほか多くの所員の報酬を出来高によって支払い,完成を急がせた。また水火部,祥災部,朝儀部を歳時部,政治部に併入したりして,40部を36部に,さらに30部に整理した。編纂完了時には,1896年出版の帝王部以下,18冊が刊行されていた。その後,未刊12部の校訂と印刷のため,出版準備委員に松本愛重,山本信哉をあて,6年をかけて刊行を終わった。編纂建議後35年。神宮司庁に移ってから19年間で18万8790円余りを要した。刊行完了後,直ちに竹島寛を索引編纂主任として,総目録索引1冊を作成し出版した。事業は幾度も中絶したが,学問・教育が欧化するなかにあって,参加した国学者,漢学者たちがこれに執念をもやしてあたったことが,完成に導いた要因であった。
執筆者:益田 宗
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
百科事典。和装351冊、洋装51冊。1896~1914年(明治29~大正3)にかけて刊行された。文部省大書記官西村茂樹(しげき)が類書編集を1879年に建議し、小中村清矩(きよのり)らが編集に着手したのに始まる。90年に皇典講究所に委託、95年に神宮司庁が編集を継続し、35年を費やして全1000巻が完成した。官撰(かんせん)の百科事典としてはわが国唯一のものである。古代から1867年(慶応3)までの文化、社会など諸般の事項を採録し、その事項に簡単な解説を付し、関連する記述を広く引用し、出典名を記す。天、歳時、地、神祇(じんぎ)、帝王など30の部門に分類し、各部は関係のある項目ごとにまとめる。江戸時代以前の日本文化の研究に大きな便益を供している。
[沖森卓也]
『神宮司庁蔵版『古事類苑』普及版全51冊(1976~80・吉川弘文館)』
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日本の百科史料事典。1000巻,和装本350冊,洋装本50冊,総目録・索引1冊。1896~1914年(明治29~大正3)刊行。1879年文部大書記官西村茂樹が,中国や西洋の類書にならい日本の百科事典の作成を建議し,同年文部省で編纂に着手した。のち東京学士会院に委託,ついで皇典講究所,さらに神宮司庁に委任。96年から完成した部門が順次刊行された。神代から1867年(慶応3)に至る日本歴代の制度・文物・社会全般の事項を30部門にわけ,各事項について古今の典籍・記録・文書・金石文などを引用している。
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… 欧化を推進した政府は,他方で神道国教化などの復古的な性格をもち,古典・古文書などを抄出して類聚しながら日本の制度・文物の沿革を明らかにする国学的な類書の編纂に着手した。1879年文部大書記官西村茂樹の建議に始まる《古事類苑》の編纂は,紆余曲折を経て1913年に和装本350巻,洋装本50巻・索引1巻という大部のものとして完成したが,江戸時代の《類聚名物考》や《古今要覧稿》を受け継ぎ集大成した日本に関する百科事典として,現在でも利用されている。また,物集高見(もずめたかみ)が独力で30年の歳月を費やして編纂した《広文庫》20巻,索引《群書索引》3巻も,同じ流れをくむものである。…
※「古事類苑」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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