細菌やウイルスなどによって心臓の筋肉に起こる急性の炎症を急性心筋炎という。同様に心臓の周りにある膜で炎症が生じた場合は急性心膜炎。心筋炎では風邪に似た症状や下痢などの消化器症状のほか、胸の痛み、息切れ、
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心筋自体に炎症細胞の
コクサッキーやエコーなどのウイルス、細菌などの病原微生物の感染が原因になることがありますが、原因のわからない特発性の場合も多くみられます(表18)。
急性心筋炎の場合、発熱、鼻水、咳などの
重症化すると、呼吸困難や苦しくて横になれないなど急速に進行する心不全、血圧低下や意識障害などのショック状態を示す場合もあります。重篤な
血液検査でCRP上昇、赤血球沈降速度亢進、白血球増多などの炎症所見や、クレアチンフォスフォキナーゼなど
心電図変化は多彩で、比較的短期間に変化するので注意が必要です。心膜炎を合併すれば広範な誘導でST上昇を認め、重症の場合は高度房室(ぼうしつ)ブロックや
心臓超音波検査では、心臓の壁運動異常の重症度、
ウイルス抗体価は急性期と回復期に2回採血して、その変化を調べます。
急性心筋梗塞との区別が必要な場合もあり、確定診断のために冠動脈造影と心筋生検(組織の一部を採取して調べる)が行われます。心筋生検は、病態が許せばなるべく早期に行ったほうが、診断率が上がるといわれています。
心筋炎急性期は症状が軽くても、原則として入院し、重篤な不整脈や循環動態の悪化がみられないかどうか、経過を観察する必要があります。
患者さんの約50%は後遺症を残さず完全に治り、約40%が何らかの心異常を残します。その程度は、心電図異常などの軽微なものが大部分ですが、なかには高度の心機能障害を残し、死亡する症例もあります。
感冒様症状や消化器症状に続いて、前述のような胸部症状を自覚する人は循環器専門医の診察を受け、心電図をとるのが診断の第一歩です。
ウイルス感染にかからない努力が大切で、うがい・手洗いの励行と、インフルエンザウイルスが心筋炎の原因となることから予防接種も重要です。
矢崎 善一
ウイルス、細菌などの感染症、
原因のなかで最も重要なものはウイルスによるものです。主な原因ウイルスはコクサッキーウイルス、エコーウイルス、アデノウイルスなどですが、そのほか、多くのウイルスが心筋炎を起こします。
胸痛のほか、心不全による症状、不整脈による症状があります。心不全による症状は、尿量の低下、
さらに注意すべきは、発熱、頭痛、
そのため、発症初期にはかぜなど他の疾患との区別が困難なことがありますが、経過するうちにいつものかぜや嘔吐下痢症などより重症感があり、何かおかしいと感じます。胸痛、動悸などは小さな子どもは訴えられないため、この「何かおかしい」という感じはこの病気を見つけるうえで非常に大切です。
前記の症状のほか、
ギャロップリズムとは、心音が健常な時と違い、馬が駆けるようなリズムになることです。
心不全に対しては強心薬(カテコラミンなど)や利尿薬、血管拡張薬による治療、房室ブロックによる徐脈には一時的に心臓のリズムを正常に保つ体外式ペースメーカーによる心臓ペーシング、頻拍性の不整脈には抗不整脈薬の投与などを行います。薬物治療に効果がみられない場合には、心機能が改善するまで心肺補助装置という機械によって心臓から送り出す血液を補助します。
また近年、川崎病の治療に有効な大量の人免疫グロブリン(ガンマグロブリン)投与が心筋炎にも有効との報告があり、著者らも著効例を経験しています。
心筋炎の予後は、急性期を乗り越えれば比較的良好で、約半数が後遺症を残さずに治りますが、心機能の低下が続く場合もあります。死亡率は10~15%で、急激に病状が進行する
できるだけ早く検査を受け、集中治療が可能な施設で治療を受けることが重要です。そのためにも、この病気について医療関係者に限らず広く一般の方も知ることが早期発見に役立ちます。
塚野 真也
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報
心筋の炎症性病変で,症状を表さずに治癒するものから心筋収縮力の低下によって心不全に至るものまである。発病のしかたが異なるため通常心内膜炎,心外膜炎と区別して述べられるが,炎症性病変は局所的なものから全壁性に及ぶものまであり,厳密には二つを区別することは不可能である。原因としては感染性と非感染性とがあり,前者では細菌,ウイルス,真菌が,また後者では膠原(こうげん)病に伴う血管炎性病変,薬物に対する過敏性などが原因となる。1950年代以後になると,従来問題にされてきたリウマチ熱,ジフテリア菌などによる細菌性心筋炎に代わって,コクサッキーBウイルス,インフルエンザウイルスなどによるウイルス性心筋炎およびマイコプラズマ心筋炎が注目されるようになってきた。とくに各種のウイルス性心筋炎は,原因不明の心筋炎も含めて,特発性心筋症の原因となるのではないかという点で重要であり注目されている。ウイルス性心筋炎は6ヵ月以内の乳児,思春期以後に多くみられる。胸痛,発熱,動悸などを訴えるが,熱のわりには脈拍が多く,各種の不整脈を伴うことがある。検査によって白血球数増加や血沈促進などの炎症所見がみられ,心筋由来の酵素が血中に逸脱してくる。心電図上心筋障害がみられ,心臓肥大を認めるようになる。炎症経過が急性か慢性か,孤立性か瀰漫(びまん)性かによって,臨床症状と病理組織所見が必ずしも一致しない。急性進行性の病変では明らかな心不全の症状を伴う。他方,症状として明らかなものがなく心電図所見にのみ異常が出現することもある。一般的には自然軽快する例が多いが,ウイルス性心筋炎を示す症例が慢性的な経過をたどり,非特異的な間質性心筋炎が数ヵ月から数年にかけて成立し,しだいに心不全に陥り死亡するものがある。治療は心不全,不整脈などに対して対症療法を行う。急性心筋障害に伴う心不全例にはステロイドホルモンの投与が試みられている。
→心筋症
執筆者:柳沼 淑夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
感染症などに伴って心筋障害を生ずる一連の疾患群の総称。原因は多彩で、ジフテリア菌などの細菌やコクサッキーAおよびB型などのウイルスに起因するものをはじめ、急性リウマチ熱や全身性エリテマトーデスなどの膠原(こうげん)病、サルコイドーシスに起因するもの、特発性心筋炎(フィードレルFiedler心筋炎)などが知られている。自覚症状は一般に軽度で、倦怠(けんたい)感、発熱、感冒様症状などが出現するだけで、心筋炎と気づかれないことが多い。発熱のわりには頻脈が続き、動悸(どうき)や前胸部痛を伴うときには心筋炎が疑われる。定型的な例では、しだいに運動時の息切れをはじめ、浮腫(ふしゅ)、チアノーゼ、不整脈などの心症状、あるいはうっ血性心不全症状が出現する。治療は、うっ血性心不全に対しては安静臥床(がしょう)を守らせるとともに、ジギタリス剤や利尿剤を用い、塩分を制限する。副腎(ふくじん)皮質ホルモン剤や抗生物質の投与は、ときに症状の寛解に有効なことがある。ウイルス性心筋炎の場合は一般に予後はよく、後遺症を残さないことが多いが、心筋だけに炎症が限局する特発性心筋炎は難治性で、不幸な転帰をとることが多い。
[井上通敏]
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…(4)その他のジフテリア 女性外陰部,眼結膜,皮膚,耳にも発赤,腫張,偽膜,潰瘍を生ずる。
[合併症]
心筋炎を合併することがあるが,これは心電図異常でわかる無症状のものから,不整脈,嘔吐,顔面蒼白などを呈するものまである。第2病週に起こりやすく,突然死亡することもある。…
※「心筋炎」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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