王塚古墳(読み)おうつかこふん

精選版 日本国語大辞典 「王塚古墳」の意味・読み・例文・類語

おうつか‐こふん ワウつか‥【王塚古墳】

[一] 寿命王塚古墳。福岡県嘉穂郡桂川(けいせん)町寿命にある前方後円墳で、鏡、甲冑(かっちゅう)、馬具、銀鈴など多くの遺物が出土した。横穴式石室内壁面の彩色装飾で著名。国特別史跡
[二] 小野王塚古墳。兵庫県小野市王子町にある径約四五メートルの円墳で、古墳時代後期に属す。竪穴式石室上部の盛土中から骨壺、経筒、甲冑、鏡などが出土。

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日本歴史地名大系 「王塚古墳」の解説

王塚古墳
おうづかこふん

[現在地名]婦中町長沢 下平

県を東西に分ける呉羽山くれはやま丘陵の南部、標高一三八メートルに築かれた前方後方墳で、羽根山はねやま古墳群のうちの一基である。丘陵の東方に神通川流域を見下ろすように立地する。国指定史跡。南北に延びる尾根の中央部に前方部を北東に向けて築かれている。平成元年(一九八九)から翌年にかけて測量調査が行われた。規模は全長五八メートル、前方部の長さ二七メートル、幅二六メートル、高さ三・六メートル、くびれ部幅一五メートル、後方部の長さ三一メートル、幅三三メートル、高さ七・六メートルである。両側面と後方部後方に幅約三メートルの周濠をめぐらせていたことが古い写真などから推定される。

王塚古墳
おうづかこふん

[現在地名]豊富村大鳥居

曾根そね丘陵の一支丘上標高三四二メートルに立地し、眼下には笛吹川の沖積地が広がる。眺望がよく、古くには物見台ともよばれていた。昭和五年(一九三〇)に主体部が乱掘され、その後復原された。主軸を東西にとり、前方部を西方に向ける帆立貝式古墳である。全長六一メートル、後円部径四〇メートル・高さ四メートル、前方部幅二二メートル・高さ一・五メートルほどの規模が考えられる。正式な発掘調査はされていない。外部に後円部をめぐる円筒埴輪列があり、ほかに人物埴輪馬形埴輪・器財埴輪なども確認されている。主体部は赤彩された合掌形の特殊な構造をもつ一種の竪穴式石室で、ほぼ主軸に並行して構築されている。

王塚古墳
おうつかこふん

[現在地名]西区王塚台三丁目

印南野いなみの台地東縁の標高二九メートルに位置する五世紀半ばの前方後円墳。東約一キロの明石川との間には沖積平野が開け、弥生時代前期にさかのぼる播磨吉田はりまよしだ遺跡、主として古墳時代から中世にかけて集落が営まれた出合であい遺跡がある。欽明天皇皇女の陵墓参考地。宮内庁の測図によれば全長六九メートルの前方後円墳で、後円部径三八メートル・前方部幅三四メートル、前方部頂が後円部頂より約一メートル低い前方部が発達した型式。

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改訂新版 世界大百科事典 「王塚古墳」の意味・わかりやすい解説

王塚古墳 (おうつかこふん)

王塚とよぶ古墳が各地にあるが,特定の王者の墓所と伝えたものか,大塚の転訛かは明確でない。特に重要なものに,小野(兵庫県),寿命(じゆめい)(福岡県)の王塚がある。

兵庫県小野市王子町にある5世紀中葉の円墳。加古川東岸の段丘上に位置する古墳群中の一基で,径45m,空濠をめぐらしている。1952年の調査により,内法の長さ4.8m,幅1.1mの塊石積みの竪穴式石室から,鏡,甲冑,刀,矛,鏃,刀子および碧玉製三輪玉を検出した。鏡は仿製六獣鏡1面,冑は眉庇(まびさし)付冑,甲は革綴短甲と鋲留短甲とが1領ずつあり,肩甲1組が付属している。

福岡県嘉穂郡桂川(けいせん)町寿命にある6世紀中葉の前方後円墳。装飾古墳として著名であり,特別史跡の指定を受けている。穂波川の沖積地に接する丘陵の末端に位置し,南西面する前方部の大半を失っているが,全長80m前後,後円部径52m,前方部推定幅63m,周囲に空濠の跡を残している。1934年,後円部より前後の2室をもつ横穴式石室を発見した。前室は奥行き2m,幅2.8m,高さ2.2mであるが,後室は奥行き4.3m,幅3m,高さ3.8mあって雄大である。後室の奥には,2人合葬用の棺床を石屋形(いしやかた)でおおい,前面に1対の灯明台を立てた,特殊な構造物がある。石室各部の壁面には,赤・緑・黄・黒の4色の顔料を用いた壁画を描く。その画題は,前室の後壁にあたる後室への通路左右の石に騎馬図,後室の前壁および左壁に靫(ゆき)図,同右壁に盾図,石屋形に連続三角形文など,すこぶる変化に富む。また後室の上半部をすべて赤色に塗り,その上に黄色の珠文を散らした装飾も特異である。後室にあった鏡,玉類,金環,銀鈴,刀,矛,鏃,挂甲小札(けいこうこざね),馬具,前室にあった須恵器,土師器(はじき)などの副葬品は,すべて重要文化財の指定を受けている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「王塚古墳」の意味・わかりやすい解説

王塚古墳
おうづかこふん

福岡県嘉穂(かほ)郡桂川(けいせん)町にある前方後円墳。1933年(昭和8)の採土工事で前方部の大半を失ったが、墳丘は全長約80メートルを測る。後円部にある複式の横穴式石室の壁面は、美しい彩色画で飾られていることで名高く、わが国の代表的な装飾古墳として著名である。壁画は赤、緑、黄、黒の4色の顔料(がんりょう)を用い、前室の奥壁左右には黒色、赤色の騎馬像を精細に描き分け、その周囲は蕨手文(わらびてもん)、双脚輪状文、三角文を埋めている。後室は左壁に盾(たて)を、右壁に靭(ゆき)を上下2段に配するほか、図の空間は三角連続文などを描く。また後室にある石屋形にも三角形を4色に塗り分けた文様を描くなど変化に富んだ装飾が施されている。鏡、玉類、金環、銀環、馬具、挂甲(けいこう)など豊富な出土品が知られているが、装飾古墳のうち副葬品の内容が明らかな例は少なく、貴重な存在である。52年(昭和27)特別史跡に、副葬品は56年重要文化財に指定された。

[三輪嘉六]

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百科事典マイペディア 「王塚古墳」の意味・わかりやすい解説

王塚古墳【おうづかこふん】

福岡県嘉穂郡桂川町にある6世紀中ごろの前方後円墳(特別史跡)。全長80m。後円部の横穴式石室に赤,緑,黄,黒の顔料で盾(たて),馬,靫(ゆぎ),蕨手文,三角文などが描かれ,すぐれた装飾古墳として知られる。馬具,鏡,須恵器など副葬品も豊富。
→関連項目桂川[町]

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「王塚古墳」の解説

王塚古墳
おうづかこふん

福岡県桂川(けいせん)町にある古墳後期の前方後円墳。装飾古墳。1934年(昭和9)墳丘の土砂採掘中に横穴式石室の一部が破壊され,壁画を発見。墳長約80m,後円部径約50m,高さ約8m。前方部は北側の一部が残る。後円部に横穴式石室があり,全長6.5m。玄室は長方形で広くて高く,奥壁に枕座を彫った床石をもつ石屋形があり,その前に隔障と灯明台がある。これらをはじめ石室内全面に赤・黄・緑・黒・白で,連続三角文を基調に蕨手文(わらびてもん)・双脚輪状文・珠文,靫(ゆぎ)・盾・大刀(たち)などが描かれる。玄門の左右袖石前面には赤馬・黒馬なども描く。副葬品は仿製鏡・武器類・玉類・馬具など。国特別史跡。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「王塚古墳」の意味・わかりやすい解説

王塚古墳
おうづかこふん

福岡県嘉穂郡桂川町寿命にある装飾古墳。前方後円部のくびれ部に開口している横穴式石室の内部に壁画が描かれている。石室は2室に分れ,そのいずれにも壁画がみられる。赤,黒,緑,黄などで彩色し,馬,盾,大刀などの形象的なものから双脚輪状文や三角形の連続文などもみられる。遺物には,鏡,玉類,馬具類,刀,挂甲類などがあったといわれる。

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事典・日本の観光資源 「王塚古墳」の解説

王塚古墳

(福岡県嘉穂郡桂川町)
福岡県文化百選 歴史散歩編」指定の観光名所。

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世界大百科事典(旧版)内の王塚古墳の言及

【装飾古墳】より

… 横穴式石室の壁面に彩色による壁画を描いたものでは,同心円,三角形,蕨手文(わらびでもん)などの抽象的文様と,靫,盾,大刀,舟などの器物と,人馬犬鳥などとの,大別すれば3種類の要素を組み合わせて用いている。たとえば,福岡県日ノ岡古墳のように,抽象的文様を主とするもの,福岡県王塚古墳のように,主室の壁画は器物を主として抽象的文様を加え,前室の壁画は人馬像を主として,余白を抽象的文様でうずめたもの,福岡県五郎山古墳のように,器物と人馬犬鳥とを用いたものなどの,各種の組合せを見いだすことができる。関東地方の茨城県虎塚古墳の場合は,靫,盾,鞆(とも),大刀,矛などの器物と,三角形,円文,渦文などの文様との組合せであるが,赤1色を用いた彩画に先立って,壁面に白色粘土の下塗りを行っているのが特色である。…

※「王塚古墳」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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