習慣流産(読み)シュウカンリュウザン(その他表記)Habitual Abortion

家庭医学館 「習慣流産」の解説

しゅうかんりゅうざん【習慣流産 Habitual Abortion】

[どんな病気か]
 流産することは、確率的にはめずらしいことではありません。
 しかし、二度三度くり返すとなると、なにか流産をおこす原因が存在し、それを取り除かないと、またつぎに妊娠したときも流産すると考えるのが妥当です。
 続けて3回以上自然流産をくり返す場合を習慣流産といい、2回続けて自然流産した場合に反復流産(はんぷくりゅうざん)といいます。
 従来は、3回続けて流産した場合に、習慣流産として検査治療を行なっていましたが、最近では、結婚、妊娠の高齢化にともない、2回続けて流産した場合にも、習慣流産に準じた検査、治療をする傾向にあります。
[検査と診断]
 流産の原因を調べます。習慣流産の原因は多岐にわたり、すべての検査を一度に行なうのは不可能です。
 まず、よくありそうな原因疾患の有無を調べることから始まります。
 原因は母体側だけでなく、胎児たいじ)側に問題があることもありますが、治療は不可能なことが多いものです。
 母体側に問題がある場合には、おもにつぎのような原因があげられます。
①子宮の形態異常や、子宮腫瘍(しゅよう)、頸管無力症けいかんむりょくしょう)(「頸管無力症」)などの子宮の病気。
ホルモンのはたらきの異常。
感染症。
④糖尿病などの代謝異常。
⑤心血管系や腎機能障害(じんきのうしょうがい)などの婦人科以外の病気によるもの。
 母児ともに関連したものでは、血液型適合妊娠(「血液型不適合妊娠」)や、免疫異常などがあります。
[治療]
 原因となる病気を治療します。子宮に病気があるときは、子宮機能を改善するための手術をすることもあります。
 ホルモン異常は、卵巣(らんそう)だけでなく、甲状腺(こうじょうせん)など、ほかの内分泌臓器(ないぶんぴつぞうき)に障害がある場合も含まれます。
 妊娠の維持には、免疫系のはたらきが重要です。免疫的な考え方をすると、母体にとって胎児は、自分以外のものとして認識され排除されるはずです。
 しかし、ふつうは免疫的な維持機構がうまくはたらいて、妊娠を継続することができるのです。
 免疫的な妊娠維持機構に問題があり、自然流産をくり返すときは、免疫療法が効果がある場合もあります。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「習慣流産」の意味・わかりやすい解説

習慣流産
しゅうかんりゅうざん
habitual premature delivery

自然流産を連続3回以上繰返すことをいう。自然流産の原因の多くは受精卵の異常によるものであるが,習慣流産の原因には,子宮の異常,黄体機能不全,染色体異常,母体合併症,免疫学的異常などがある。最近,免疫学の進歩とともに母児間の免疫不均衡が解明されつつある。妊娠は免疫学的には同種移植と考えられるが,母体血中には胎児に対する拒絶反応を抑制する物質が存在している。ところが,夫婦間の HLAID/DR抗原 (組織の適合性に関係している) の適合性が高いと,逆に母体内で抗体がつくられにくくなる。この場合に胎児が母体から拒絶反応を受け,流産にいたるのではないかと考えられる。習慣流産の原因が子宮筋腫,頸管無力症,子宮の奇形などにある場合は外科手術が必要で,黄体機能不全の場合はホルモン療法が行なわれる。

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百科事典マイペディア 「習慣流産」の意味・わかりやすい解説

習慣流産【しゅうかんりゅうざん】

自然流産が少なくとも3回,妊娠中のほぼ同時期に反復する場合をいい,習慣性になる。原因は子宮の発育不全や奇形,内分泌機能障害,頸管(けいかん)無力症,血液型不適合,栄養異常,感染,精神的因子などが考えられるが,不明のものが多い。妊娠前期の流産には,受精卵の細胞遺伝的な異常によるものが多い。治療は安静,ホルモン療法,子宮弛緩(しかん)剤投与など。子宮奇形,頸管無力症に対しては手術。→流産
→関連項目人工流産

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改訂新版 世界大百科事典 「習慣流産」の意味・わかりやすい解説

習慣流産 (しゅうかんりゅうざん)

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世界大百科事典(旧版)内の習慣流産の言及

【流産】より

…さらに流産の様式により,妊娠が自然に中絶し流産するものを自然流産,人工的に妊娠を中絶し流産させるものを人工流産と呼ぶ。なお連続3回以上流産を繰り返すものを習慣流産という。
[原因]
 流産は多種多様の原因によって起こるが,現在,原因として比較的明確であり頻度が高いものを,大別して表に示す。…

※「習慣流産」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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