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節足動物に発達した主として機械的・化学的刺激を感じる器官で,頭部体節の付属肢が変形したものである。有爪(ゆうそう)動物や三葉虫類では第1体節に1対あるが,甲殻類では第1体節は胚期にしか認められず,第2体節と第3体節に各1対,多足類・昆虫類では第3体節も胚期にしかみられなくなって,第2体節に1対ある。鋏角(きようかく)類にはない。甲殻類の第1触角は一般に短小で先の鞭状部が2本あるが,橈脚(じようきやく)類では強大な1本の鞭状となっていて,交尾のときに雌をつかまえるように変形していることもある。十脚類などでは鞭状部に感覚毛が発達して化学刺激を感じ,柄部に平衡胞が形成されて平衡器官の役割も果たす。第2触角は他の付属肢と同じように二叉型を原型とするもので,その1枝は多くのもので長大な鞭状,他は板状などに変形していることがある。幼生期および鰓脚(さいきやく)類では成体でも遊泳器官として用いられる。多足類・昆虫類の触角は基本的には1本の鞭状で,糸状,串玉状,櫛状,のこぎり状,棒状など多様に変形し,発達した鋭敏な化学感覚毛をもっている。なおカタツムリなど節足動物以外の無脊椎動物でも,体の前端部から出る突起を触角と呼ぶことがある。
執筆者:原田 英司
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
多くの節足動物の頭部第1付属肢をいい、触覚および嗅覚(きゅうかく)器官である。唇脚類(ムカデ、ゲジ)、倍脚類(ヤスデ)、少脚類(ヤスデモドキ)、結合類(コムカデ)および昆虫類は1対の触角をもち、有角類とよばれる。これに対し、剣尾類(カブトガニ)、クモ形類(クモ、サソリ、ダニ)には触角がないので無角類とよばれる。一方、甲殻類(カニ、エビ)には小触角(第1触角)および大触角(第2触角)の2対の触角がある。昆虫類の触角は、基本的には柄節(へいせつ)(第1節)、梗節(こうせつ)(第2節)および鞭節(べんせつ)(第3節以降)からなるが、種によってさまざまの形に変化している。すなわち、鞭(むち)状(バッタ、トンボ)、糸状(カメムシ)、数珠(じゅず)状(シロアリ)、鋸歯(きょし)状(ハラアカヒトリ)、球桿(きゅうかん)状(チョウ)、櫛(くし)状(ヤママユガ)などがある。また、雌雄で形の異なるものも少なくない。触角には多数の感覚毛、感覚孔などがあり、また、昆虫には梗節に機械受容器のジョンストン器官をもつものがある。さらに、甲殻類では大触角基部に排出器官の触角腺(せん)をもつものがあり、また、粘管類昆虫(トビムシ)には触角基部に湿度の受容器と思われる触角後器官がある。
なお、節足動物以外の無脊椎(むせきつい)動物では、軟体動物の腹足類や扁形(へんけい)動物の渦虫類などの体の前端に突出した1対の突起を触角という。腹足類には触角が2対あるものもあり、第2対の先端(カタツムリ)や基部(モノアラガイ)に目がある。
[町田武生]
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