デジタル大辞泉
「藤」の意味・読み・例文・類語
ふじ〔ふぢ〕【藤】
1 マメ科の蔓性の落葉低木。山野に自生し、つるは右巻き。葉は卵形の小葉からなる羽状複葉。5月ごろ、紫色の蝶形の花が総状に垂れ下がって咲く。豆果は秋に暗褐色に熟す。園芸品種が多く、棚作りなどにして観賞する。つるから繊維をとり布に織った。野田藤。《季 春 実=秋》「草臥て宿かるころや―の花/芭蕉」
2 「藤色」の略。
3 紋所・文様の名。藤の花房や葉を図案化したもの。上がり藤・下がり藤などがある。
4 襲の色目の名。表は薄紫、裏は青。藤襲。
5 「藤衣」の略。
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ふじ ふぢ【藤】
[1] 〘名〙
① マメ科のつる性落葉木本。本州、四国、九州の山野に生え、観賞用に栽植される。幹は長さ一〇メートル以上に達し右巻きに他物にからむ。葉は一一~一九個の小葉からなる
奇数羽状複葉。各小葉は長楕円形または卵形で、花期には黄緑色、長さ約四センチメートル。四~五月、
淡紫色の蝶形花が長く垂れ下がる房となって咲く。果実は偏長楕円形。長さ一五センチメートル内外の硬い莢で、乾くと裂けて中の
種子を飛ばす。つるは丈夫で古代から縄
(なわ)の代用にしたり、籠などの細工に用いる。シロバナフジ・アケボノフジ・ヤエフジ・クジャクフジなど多数の園芸品種がある。漢名に当てる紫藤は正しくは中国産のシナフジの名。《季・春》
※万葉(8C後)一四・三五〇四「春べ咲く布治(フジ)のうら葉のうら安にさ寝る夜そなき子ろをし思へば」
② ①や葛などのつる。かずら。ふじかずら。〔交隣須知(18C中か)〕
※栄花(1028‐92頃)御裳着「ふぢの末濃の
織物の御几帳に」
④ 襲
(かさね)の色目の名。表は薄紫、裏は青。一説に、表は経青、緯黄、裏は萌葱とも。
女房の五つ衣には上は薄色を匂わせて三つ、次の二つは表白、裏青とし、単は白または紅の生絹。三、四月頃用いる。ふじがさね。
※枕(10C終)二八二「
狩衣は 香染の薄き、〈略〉
青葉、桜、柳、また青き、ふぢ」
※万葉(8C後)一七・三九六六・左注「俗語云以レ藤続レ錦 聊擬二談咲一耳」
⑥ 紋所の名。藤の花や葉などを種々に図案化したもの。上り藤、下り藤、三つ葉藤、三つ蔓藤など多くの種類がある。また、藤を模様としたものもいう。
※栄花(1028‐92頃)若水「
中宮よりは、藤をぞ紫に濃く薄く織り重ねさせ給へる」
⑦ 花札で、四月を表わす札。藤にほととぎすの
図柄の一〇点札、藤に
短冊の五点札各一枚と、一点札二枚がある。
[2]
謡曲。三番目物。
観世・
宝生・金剛流。作者不詳。都の僧が越中国多祜
(たご)の浦で盛りの藤の花をながめ、花によせてわが身の零落をなげいた古歌を口ずさむと、女が現われて、自分は藤の花の精だと、僧につげて姿を消す。その夜、僧の夢の中に藤の花の精が現われ、歌舞を奏し藤の花をたたえる。
[語誌](一)①は「
万葉集」では、浦や山野に花を咲かせる姿がとりあげられ、
ホトトギスとともによまれることが少なくない。平安時代になると、
屏風絵の題材・歌合の歌題とされ、なかでも松に咲きかかる姿が多くうたわれた。「源氏物語」ではそれが晩春から初夏にかけて貴族の庭園にみられる光景として描かれる。「枕草子‐八八」も「めでたきもの」として、色深い藤の花房が松に咲きかかる姿を挙げる。藤原氏に
ゆかりのあるフジと、常緑樹であり、千年の寿命を保つという松のとりあわせとして好まれたものか。また、フジの花は、紫の雲とも見立てられ、鎌倉時代になると
阿彌陀如来の来迎を暗示する紫雲(往生雲)の意が重ねられていく。
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
出典 講談社デジタル版 日本人名大辞典+Plusについて 情報 | 凡例
藤 (フジ)
学名:Wisteria floribunda
植物。マメ科の落葉つる性低木,園芸植物,薬用植物
出典 日外アソシエーツ「動植物名よみかた辞典 普及版」動植物名よみかた辞典 普及版について 情報