翻訳|pinniped
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
食肉目鰭脚亜目Pinnipediaに属する哺乳類。食肉目の中で水中生活に適応した仲間で,系統的にはイヌ,クマなどに近い。生活の大部分を水中で過ごし,水中で食物をとるが,繁殖期には必ず陸上か氷上で過ごす。セイウチ科,アザラシ科,アシカ科の3科からなる。水かきのあるひれ状の前・後肢をもつのでこう呼ばれる。北極海から南極海に至る世界の海洋に広く分布するが,種ごとに分布は異なる。セイウチ科は1属1種で,北極海を中心に分布するが,ベーリング-チュクチュ海系と北大西洋系の2亜種がある。アザラシ科は11属19種がある。北極海や北太平洋,北大西洋の海氷域にはタテゴトアザラシなど6種,南極海の海氷域にはウェッデルアザラシなど4種,海氷と関係ない中・低緯度にはゾウアザラシやモンクアザラシなど7種,またバイカル湖やカスピ海にはバイカルアザラシなど2種が分布する。アザラシ類は水生適応が進み,海氷の発達する高緯度海域や内水面まで広く適応分散している。一方,アシカ科の分布範囲はやや狭く,北大西洋には1種も分布せず,また海氷域にも分布しない。北太平洋にトドやオットセイ,中・低緯度にはカリフォルニアアシカやオタリアなど10種が,南極海,亜南極海にナンキョクオットセイなど2種が分布する。
セイウチ科の特徴は大きな上顎犬歯にある。セイウチはこのサーベルのような犬歯で海底を掘って貝類を食べる。アザラシ科は前肢がクジラのひれのように短く退化し,後肢は後方にのび前方に曲げられない。このため四肢歩行はできない。アシカ科は前・後肢ともひれ状をしているが,四肢歩行ができる。陸上での運動機能が劣化しているため,陸岸で繁殖する種はアザラシ科,アシカ科ともに集団繁殖をし,ハーレムをもつ。雄は雌の数倍の大きさになる。良質の毛皮をもつ種は毛皮を目的に,またゾウアザラシは脂肪を目的に乱獲された。
執筆者:内藤 靖彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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