鬱病(読み)ウツビョウ

デジタル大辞泉 「鬱病」の意味・読み・例文・類語

うつ‐びょう〔‐ビヤウ〕【鬱病】

憂鬱な気分が毎日続き、興味や喜びが感じられなくなる精神疾患気分障害一つ。不眠や過眠、食欲不振や過食、頭痛、倦怠感けんたいかんなどの身体症状を伴い、病状が進行すると、自分には価値がないと感じたり罪悪感をもつようになり、自殺を考えることもある。抑鬱症。孤立の病。大うつ病性障害。
[補説]広義には気分変調症持続性抑鬱障害)なども含まれる。また、双極性障害躁鬱病)の鬱の病相をいうこともある。

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精選版 日本国語大辞典 「鬱病」の意味・読み・例文・類語

うつ‐びょう‥ビャウ【鬱病】

  1. 〘 名詞 〙 躁鬱病の一つの型で、躁状態がないもの。憂うつになり、食欲もなく口数も少なく、外に出たがらない。自殺を企てることもある。メランコリー抑うつ症気鬱症。憂鬱症。⇔躁病
    1. [初出の実例]「程なく鬱病を生じ、又々煩ひけるが」(出典:随筆・耳嚢(1784‐1814)四)

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百科事典マイペディア 「鬱病」の意味・わかりやすい解説

鬱病【うつびょう】

抑鬱症とも。躁鬱(そううつ)病の鬱状態に似ているが,1回以上鬱病を経験したのち,躁状態にならない場合をいう。心理的な原因がわかる場合を神経性鬱病,原因のわからない場合を内因性鬱病といい,感情の憂鬱と意欲抑制を主柱とする。感情の点では気分沈滞,不安,厭世(えんせい),自己卑下感など,意欲と行動の点では決断実行の不能,抑制されて苦しむという状態など,思考の点では思考渋滞し,話のまとまりが少ないなどの症状が認められる。憂鬱感は午前中にひどく,午後から夕方にかけて軽快するという日内変動が特徴の一つで,そのほか罪業感・罪責感や自殺志向,妄想などがあり,身体的にも不眠,食欲不振,便秘,月経不順などがある。精神症状が現れず,もっぱら身体症状だけを訴えるものを仮面鬱病という。経過は数週間から数ヵ月で寛解するが数年にわたるものもある。なお45歳以降に初発し苦悶(くもん)性興奮を特徴とするものを特に初老期(退行性)鬱病と呼んでいる。
→関連項目育児ノイローゼ緘黙症気分障害境界例化粧療法抗鬱剤行動療法サンドイッチ症候群持続睡眠療法躁病電気ショック療法パニック障害マタニティ・ブルーメランコリー離人症ロボトミー

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知恵蔵 「鬱病」の解説

うつ病

主な症状として、抑うつ気分(気持ちが沈む、自信を失う等)、精神運動制止(注意が集中できない、簡単な決断ができない等)、不安焦燥感(落ち着きがなくなる、焦り等)、自律神経症状(睡眠困難、食欲不振等)がある。朝が不調で、夕方になると少し楽になるという日内変動もある。子供から老年までの幅広い年齢層で見られ、子供や青少年の場合は身体症状が出たり、ひきこもる(ひきこもり)など、行動で症状を表すことがある。他人への配慮が過剰だったり、全てに完璧を目指すような性格傾向との関連性の研究もある。選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)など、抗うつ薬の効果が大きく、認知療法などの心理療法も支えとなる。日照時間が短くなると発症する季節性うつ病、出産後に発症する産後うつ病、身体症状が前面に現れる仮面うつ病、さらに引っ越しうつ病、昇進うつ病などという命名もある。なお、うつ状態とは逆に、気分の高揚や活動性の亢進する躁(そう)状態が、単独に生じる躁病と、うつ状態と周期的に交代する躁うつ病がある。うつ病を含め、これら全体を気分障害(mood disorder)という。

(田中信市 東京国際大学教授 / 2007年)

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改訂新版 世界大百科事典 「鬱病」の意味・わかりやすい解説

うつ病 (うつびょう)

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世界大百科事典(旧版)内の鬱病の言及

【仮面鬱病】より

…内因性鬱病には違いないが,抑鬱気分や制止などの定型的な抑鬱症状が目立たず,身体的な症状の仮面をつけている鬱病のこと。1958年,精神医学者クラールV.A.Kralの命名による。…

【感情】より

感情論【木田 元】
[感情障害]
 感情障害は正常な範囲の感情変化のほかさまざまな精神疾患に見いだされる。鬱(うつ)病では生命の流れが遅滞し,そのために抑制と同時に悲哀感が,躁病では生命の流れが促進し,行動促迫と同時に生命感情の高揚が生ずるのが特徴的である。鬱病では無力感,自信喪失感,絶望感から,自殺観念,鬱病の三大妄想である心気,貧困,罪業妄想が発展し,躁病では自我感情の高揚感,万能感から誇大妄想が発達し,社会的逸脱行為に走る。…

【感情】より

感情論【木田 元】
[感情障害]
 感情障害は正常な範囲の感情変化のほかさまざまな精神疾患に見いだされる。鬱(うつ)病では生命の流れが遅滞し,そのために抑制と同時に悲哀感が,躁病では生命の流れが促進し,行動促迫と同時に生命感情の高揚が生ずるのが特徴的である。鬱病では無力感,自信喪失感,絶望感から,自殺観念,鬱病の三大妄想である心気,貧困,罪業妄想が発展し,躁病では自我感情の高揚感,万能感から誇大妄想が発達し,社会的逸脱行為に走る。…

【自殺】より

…自殺そのものが遺伝するとはまず考えられないが,自殺を生じやすい精神病(たとえば鬱(うつ)病や精神分裂病など)や異常性格の遺伝的要因は考えられることである。自殺者多発家系の存在も決してまれではなく,鬱病,精神分裂病,異常性格,敏感関係妄想(内気で対人関係に敏感な性格の持主が,困難な社会的状況に置かれたときに抱く種々な妄想)などでは,一般社会人に比べて自殺頻度が高く,なかでも鬱病は自殺の主役である。これらの病気の多くは思春期に好発するが,例外として老年痴呆(初期に自殺が多い)やアルコール中毒などがある。…

【躁鬱病】より

…二大内因性精神病の一つ。躁鬱病が精神分裂病とともに精神病の一つとして医学的に位置づけられたのは,19世紀末ドイツの精神医学者クレペリンによってであった。彼はフランスの学者ファルレJ.P.Falretの循環精神病,バイヤルジェJ.Baillargerの重複型精神病の後を受け,〈躁〉と〈鬱〉との気分の周期的変動を繰り返すが人格崩壊を起こさない精神病を躁鬱病と呼んだ。…

【体液】より

…しかし,20歳を越すと,脈管には豊富な血液が充満するから,粘液の流入が生じにくく,したがって,発作はまれにしか起こらなくなるとされた(ヒッポクラテス《神聖病論》)。また,今日の鬱病(うつびよう)にあたるメランコリアmelancholiaが体内の黒胆汁の過剰から起こり,その名も,ギリシア語のメランmelas(黒い)+コレcholē(胆汁)に由来することなどはよく知られている(メランコリー)。体液は,そのどれが優勢であるかによって,個人の心的特性を類型化する基準にもなり,ここから有名な四つの気質,すなわち,粘液質,血液質(または多血質),黒胆汁質,胆汁質ができあがった。…

【メランコリー】より

…人間の基本的な感情の一種で,日本語でいえば〈憂鬱(ゆううつ)〉または〈悲哀〉にあたる。もとは古代ギリシア・ローマで医学用語として使われたのが始まりで,この伝統は二千数百年後の今日も精神医学の分野でなお受け継がれており,その限りでは〈鬱病〉というふうに意味がせばまる。ギリシア語のメライナmelainaまたはメランmelan(黒い)とコレcholē(胆汁)の合成からなることでもわかるように,体液のなかで黒胆汁が過剰になるのがこの病で,ギリシア語ではメランコリアmelancholiaと呼ばれた。…

※「鬱病」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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