ロボトミー(英語表記)lobotomy

翻訳|lobotomy

精選版 日本国語大辞典 「ロボトミー」の意味・読み・例文・類語

ロボトミー

〘名〙 (lobotomy) 一九三五年、ポルトガルの神経病医E=モニスにより始められた精神外科療法。視床前頭葉との間の神経線維のつながりを切断し、それによって生ずる人格変化を用いて、主として重症統合失調症てんかん治療しようとしたもの。一九四九年ノーベル賞を受けたが現在は行なわれていない。ロベクトミー。
頭脳(1958)〈林髞〉四「フロンタル・ロボトミー(前頭切截術)があまねく行われるようになった」

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デジタル大辞泉 「ロボトミー」の意味・読み・例文・類語

ロボトミー(lobotomy)

統合失調症などの治療を目的に、前頭葉白質の一部に切開を加えて神経線維を切断する外科療法。人格変化・知能低下を起こしやすく、日本では現在行われない。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ロボトミー」の意味・わかりやすい解説

ロボトミー
lobotomy

脳葉(→大脳)の神経回路を脳のほかの部分から切り離す外科手術。前頭葉白質切断術ともいう。かつては,統合失調症,双極性障害(→うつ病),その他の精神疾患をもつ重篤患者に対する抜本的な治療法として実施された。1935年ポルトガルの神経科医アントニオ・エガス・モニスは,精神病患者に反復的な思考パターンを引き起こすと思われる神経回路を遮断するため,前頭葉前皮質に高純度のエチルアルコール注入する手術を行なった。モニスはやがて脳内白質(→白質)を切断する専用の器具を開発し,前頭前野と視床をつなぐ神経線維の束を物理的に切り離した。手術の結果にはばらつきがあったが,当時は興奮状態,幻想,自己破壊行動,暴力などの症状を抑える治療法がほかにほとんどなかったことから,広く行なわれるようになった。1936年アメリカ合衆国の神経科医ウォルター・フリーマンとジェームズ・ワッツが改良を加え,1940年代には短時間で行なえる術式を開発し,多くの患者に実施した。ロボトミーを受けた患者の大部分は,緊張,興奮などの症状が軽減したが,無気力,受動的,意欲欠如,集中力低下,全般的な感情反応の低下などの症状も多く現れた。しかし,こうした副作用は 1940年代には広く報じられず,長期的影響はほぼ不明だった。ロボトミーが幅広い成功を収めたとして,モニスは 1949年にノーベル生理学・医学賞を受賞した。1950年代半ばに入り,精神病患者の治療や症状緩和に効果的な薬が普及すると,ロボトミーはほとんど行なわれなくなった。

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改訂新版 世界大百科事典 「ロボトミー」の意味・わかりやすい解説

ロボトミー
lobotomy

精神障害,とりわけ統合失調症や人格異常による興奮などに対して行われた精神外科的手技である〈前頭葉白質切截術〉をさす。この種の精神外科は,すでにブルクハルトG.Burckhardt(1888)やダンディW.E.Dandy(1922)らによって試みられていたが,事実上の創始者になったのはポルトガルのモニス(1935)であり,1949年,彼は,この業績によってノーベル生理学・医学賞を受賞している。モニスは,精神病者の精神症状は前頭葉に至る神経経路を遮断することによって改善されると考え,前頭葉白質内への無水アルコールの注入による神経繊維の凝固,および白質切截器leucotomeによる手術法を明らかにした。しかしモニスの原法である前頭葉白質切截術frontal leucotomyはヨーロッパではあまり行われず,むしろアメリカにおいてフリーマンW.Freeman,ワッツJ.W.Wattsらによって発展させられた。日本では,とくに第2次大戦後の一時期,精神科の治療法の一つとして施行されていたが,向精神薬の導入や,脳に回復不能な影響を与えるだけに,とり返しのつかない後遺症をもたらし,治療効果にも疑問があることなどから,手術そのものへの厳しい批判もあり,行われなくなっている。
精神外科
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百科事典マイペディア 「ロボトミー」の意味・わかりやすい解説

ロボトミー

精神障害の治療法の一つ。大脳の前頭葉白質を切断破壊する外科手術で,前頭葉と他の脳部との繊維連絡が部分的に遮断(しゃだん)される。一般に統合失調症精神分裂病),鬱(うつ)病,爆発性精神病質などの,著しい興奮,不安,妄想(もうそう)などを呈するものに適用した。近年は薬物療法の進歩と回復不能の後遺症をもたらすことへの厳しい批判があることにより行われない。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ロボトミー」の意味・わかりやすい解説

ロボトミー
ろぼとみー

精神外科

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世界大百科事典(旧版)内のロボトミーの言及

【精神外科】より

…モーニスは,精神病者の観念や常同行為は神経細胞間の異常なシナプス形成にあるとし,それらを遮断することが精神症状の改善につながると考えた。初期には前頭葉白質内に無水アルコールを注入し,神経繊維を凝固させる方法をとったが,後には白質切截器による手術(ロボトミー)を行うようになっている。この手術はヨーロッパよりむしろアメリカにおいて発展し,フリーマンW.FreemanやワッツJ.W.Wattsらの前部前頭葉白質切截術および標準白質切截術を生んだ。…

※「ロボトミー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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