銀杏(読み)ぎんなん

精選版 日本国語大辞典 「銀杏」の意味・読み・例文・類語

ぎん‐なん【銀杏】

〘名〙 (「ぎんあん(銀杏)」の連声)
▼ぎんなんの花《季・春》
空華集(1359‐68頃)三「謝少室和尚恵銀杏栽於南陽方丈西園
※鳴雪俳句集(1926)〈内藤鳴雪〉春「銀杏(ギンナン)の花や鎌倉右大臣
イチョウ種子。悪臭のある肉質の外皮を除去して保存し、白い木質の殻を割って中の胚乳と胚を食べる。《季・秋》
松屋会記‐久政茶会記・永祿二年(1559)四月二一日「菓子五種 こぶ、いりもち、きんなん、打くり、れゐし」

ぎん‐あん【銀杏】

異制庭訓往来(14C中)「柘榴桃杏梅李梨鉛桃(くるみ)銀杏柏実」
※天正本節用集(1590)「銀杏 ギンアン」

ぎん‐きょう ‥キャウ【銀杏】

※元和本下学集(1617)「銀杏 イチャウ ギンキャウ」

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デジタル大辞泉 「銀杏」の意味・読み・例文・類語

いちょう〔イチヤウ〕【銀杏/公樹/鴨樹】

イチョウ科の裸子植物。一科一種。落葉高木で、高さ約30メートルに達する。葉は扇形で中央に裂け目があり、秋に黄葉する。雌雄異株。春、葉の付け根に、尾のような雄花、柄のある2個の胚珠はいしゅをもつ雌花をつけ、4月ごろ受粉し、9月ごろ精子によって受精が行われる。果実は丸く、外種皮は熟すと黄橙おうとう色で、内種皮は白い殻となって種子を包む。種子は銀杏ぎんなんとよばれ、食用。幹や枝から気根を垂らすことがあり、ちちの木ともいう。中国の原産で、盆栽や街路樹に多用され、材は碁盤・将棋盤などに使われる。 黄葉=秋 花=春》「―散る遠くに風の音すれば/風生
やじりの一種。イチョウの葉の形をしたもの。
銀杏頭いちょうがしら」の略。
紋所の名。イチョウの葉を図案化したもので、多くの種類がある。
[補説]江戸時代以来、語源を「一葉」と考え、歴史的仮名遣いを「いてふ」としてきたが、「鴨脚」の宋音ヤーチャオに由来するもので、「いちゃう」が正しいとする。

ぎん‐なん〔‐アン〕【銀×杏】

《「ぎんあん」の連声れんじょう。「あん(杏)」は唐音
イチョウ別名
イチョウの実。黄色で悪臭のある外種皮を土に埋めておくなどして取り去り、内部の核のじんを食用とする。 秋》「―が落ちたる後の風の音/汀女

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改訂新版 世界大百科事典 「銀杏」の意味・わかりやすい解説

銀杏 (ぎんなん)

〈ぎんあん〉の転訛した語で,近世にはイチョウそのものをもいったが,今はイチョウの種子を指す。食用部位は,白く堅い内種皮の中にある黄緑色の胚乳で,おもな成分は糖質34.5%,タンパク質4.7%,脂質1.7%など,ほかにカロチン,ビタミンCを比較的多く含んでいる。内種皮のままいったり,割ってから加熱して食べる。酒のさかな,茶わん蒸し,ほうろく焼き,なべ物のあしらいなどに用い,独特の風味と歯ざわりが喜ばれる。
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百科事典マイペディア 「銀杏」の意味・わかりやすい解説

銀杏【ぎんなん】

イチョウの種子をいう。悪臭のある肉質黄褐色の外種皮におおわれ,内種皮は堅く白色でこの内部の胚乳を食用とする。特有の風味があり,内種皮のままいったり,割って渋皮を除いて加熱して食し,酒のさかな,茶碗蒸し,寄鍋のあしらい,銀杏飯などにする。外種皮はビロボールやイチョウ酸を含み,しばしばかぶれをおこす。

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普及版 字通 「銀杏」の読み・字形・画数・意味

【銀杏】ぎんきよう(きやう)・ぎんなん

いちょう。公孫樹。玉果。〔本草綱目、果二、銀杏、釋名〕白果、鴨脚子。(李)時珍曰く、~宋初始めて入貢し、改めて銀杏と呼ぶ。

字通「銀」の項目を見る

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動植物名よみかた辞典 普及版 「銀杏」の解説

銀杏 (イチョウ・ギンキョウ;ギンナン)

学名:Ginkgo biloba
植物。イチョウ科の落葉大高木,園芸植物,薬用植物

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世界大百科事典(旧版)内の銀杏の言及

【イチョウ】より

…これはビロボールbilobolやイチョウ酸ginkgolic acidを含むためで,皮膚の傷口から入るとかぶれをおこす。種子を土中に埋め,外層を腐らせ,堅い種皮中層が露出したものがぎんなん(イラスト)で,多量のデンプン,少量のタンパク質と油脂を含有し,酒のつまみや茶わん蒸しの具に好適である。また漢方では白果(はくか)と呼ばれ,薬用とされる。…

※「銀杏」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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