翻訳|date
もともと〈日付け〉を意味するデートという言葉が,〈男女が日時を決めて会うこと〉という意味で広く使われるようになったのは,19世紀末から20世紀初頭のアメリカにおいて男女交際に関する新しい独特の社会慣習(いわゆるデート制度)が形成されてからのことである。
結婚前の若い男女,とくに10歳代の男女が,結婚を前提とすることなく(したがって,必ずしも相手を固定することなく)交際するというデートの慣習は,はじめ都市の中産階級を中心として形成されたが,20世紀に入るころから一種の若者文化として広く普及しはじめ,同時にさまざまのルールやエチケット(たとえば,男性が女性を自宅まで迎えに行くこと,帰りはきちんと送り届けること,デートにおける性的行為はペッティングまたはネッキングを限度とすること,など)も整備されるにいたった。こうしてデートは,思春期のすべての男女に期待される行動様式となり,一つの社会制度として確立される。制度としてのデートは,一方で思春期の男女の異性への関心を満たし,彼らに交際の機会を与えるものであるが,他方では中産階級の道徳観を反映するルールを設定することによって,結婚以前の男女関係を一定の枠内に抑制する役割をも果たす。もっとも,この抑制的機能は近年とみに弱化している。若者の性意識や性行動の〈自由化〉が進展し,デートのルールやエチケットが大幅にくずれてきているからである。
デートは,結婚の前段階というよりむしろ恋愛の前段階とみなされている。したがってそれは,結婚をめざす交際ではなく,原則的には恋愛関係でさえないから,次々と相手をとりかえても,また一時に複数の相手と並行的にデートしてもかまわない。そのため,デートの世界はしばしば人気をめぐる競争の場となる。この意味で,デート制度はアメリカ社会の競争原理や人気の価値観に強く結びついており,そのままの形では他の社会に移入されにくい性質をもっている。
日本では,第2次大戦後のアメリカニゼーションの風潮のなかで,1950年代後半からデートという言葉が使われはじめ,60年代の初頭には日常語のなかにほぼ定着するにいたった。あいびきという旧来の日本語が〈人目を忍んで会う〉というニュアンスをともなうのに対し,デートという言葉には明るい開放的なひびきがあり,当時の若い人たちに好まれた。ランデブーというフランス語も戦前から使われていたが,この言葉はいささかハイカラにすぎる感じが強く,大衆的な用語とはなりにくかった。むろんこれは主として言葉のうえでのことであり,アメリカ流のデート制度が日本に移入されたわけではない。とはいえ,デートという言葉の普及が,戦後における男女交際の開放化と大衆化を象徴し,またいくぶんかはそれを促進したという風俗史上の意味は無視できないであろう。
執筆者:井上 俊
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…子房は3個で離生。果実(この果実をデーツdateという)は液果状で,なかに1個の種子を有し,長楕円形で,黄,橙,朱,紫黒を帯び,種子には深い縦溝があり,胚乳は硬角状,胚は小型で通常,背生。台湾からインド,ヒマラヤ,スリランカ,イラン,イラク,アラビア半島,アフリカ,カナリア諸島,マダガスカルなど広域に分布し,17種を産する。…
※「デート」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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