日本大百科全書(ニッポニカ) 「ネポス」の意味・わかりやすい解説
ネポス
ねぽす
Cornelius Nepos
(前99ころ―前24ころ)
古代ローマの伝記作家。主著はローマ最古の伝記集『著名人伝記集』。これはもとかなりな大著で、王、政治家、将軍、文人などに人物を類別し、さらに外国人とローマ人に分けて対比させる形をとっていた(外国人も対象に加え、対比を行っている点、プルタルコスの『対比列伝』の先駆をなす)。しかし現存するのは外国の将軍の伝記ほかわずかである。もっとも優れているのはキケロの親友アッティクスの伝記で、これはネポスが彼の人となりをよく知っていたためであろう。ギリシアの扇動政治家アルキビアデスの伝記も評価が高い。ただしいずれの伝記にも、重要な要素が書かれていないうらみがあって、現今では伝記あるいは史料としてよりは、ラテン語学習の読本として利用されることが多い。
[柳沼重剛]