ネポス(読み)ねぽす(英語表記)Cornelius Nepos

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ネポス」の意味・わかりやすい解説

ネポス
ねぽす
Cornelius Nepos
(前99ころ―前24ころ)

古代ローマ伝記作家。主著はローマ最古の伝記集『著名人伝記集』。これはもとかなりな大著で、王、政治家、将軍文人などに人物を類別し、さらに外国人とローマ人に分けて対比させる形をとっていた(外国人も対象に加え、対比を行っている点、プルタルコスの『対比列伝』の先駆をなす)。しかし現存するのは外国の将軍の伝記ほかわずかである。もっとも優れているのはキケロの親友アッティクスの伝記で、これはネポスが彼の人となりをよく知っていたためであろう。ギリシアの扇動政治家アルキビアデスの伝記も評価が高い。ただしいずれの伝記にも、重要な要素が書かれていないうらみがあって、現今では伝記あるいは史料としてよりは、ラテン語学習の読本として利用されることが多い。

[柳沼重剛]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ネポス」の意味・わかりやすい解説

ネポス
Nepos, Cornelius

[生]前99頃.ガリア,キサルピナ
[没]前24頃
ローマの伝記作家。カツルスアッチクスキケロの友人。ローマ人と外国人とを対比的に扱った伝記集『英傑伝』 De Viris Illustribusのうち 24編が現存。歴史的観点からではなく,性格や功績に視点をおいて簡潔に生涯を描いたもの。ほかにカトー (大)とキケロの伝記,3巻の世界史『年代記』 Chronica,逸話集『模範』 Exempla,恋愛詩や地誌もあった。

ネポス
Nepos, Julius

[生]?
[没]480.5.9.
西ローマ皇帝 (在位 474~475) 。東ローマ (ビザンチン) 皇帝レオ1世にイタリア統治のため派遣され,西ローマ皇帝グリケリウスを廃してみずから帝位についた。 475年西ゴート人の圧迫によりその独立承認。同年ロムルス・アウグスツルスの父オレステスに追われてダルマチアに逃れ,サロナエにあって,ガリア東方で皇帝と認められた。結局グリケリウス派の者に殺された。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

放射冷却

地表面や大気層が熱を放射して冷却する現象。赤外放射による冷却。大気や地球の絶対温度は約 200~300Kの範囲内にあり,波長 3~100μm,最大強度の波長 10μmの放射線を出して冷却する。赤外放射...

放射冷却の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android