アメリカのトルーマン大統領の国内政策の総称。この言葉は,彼が絶対に劣勢といわれた選挙に勝利した直後の1949年1月の年頭教書の中で用いられ,のちしだいに一般化したが,彼自身は1945年9月の立法計画案に始まるとしている。それは〈ニューディールの延長であり,大衆の経済的機会の拡大である〉と説明され,さまざまな進歩的な政策を提示したが,実現しないものが多かった。その中には完全雇用の実現(理念としては1946年雇用法に織りこまれた),人種差別撤廃のための公民権委員会設置,国民健康保険制度の実施,労働組合を抑制するタフト=ハートリー法の廃止などがある。他方,成功した政策としては最低賃金引上げ(公正労働基準法の改定),社会保障の受益者増加(法の適用範囲改定),低所得者向け公共住宅の建設などがある。これら国内政策は,冷戦や朝鮮戦争で対外政策が優先されたため,十分な努力が払われなかった。
執筆者:長沼 秀世
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アメリカのトルーマン大統領が1949年の年頭教書でルーズベルトのニューディールに倣って初めて使ったことばで、「アメリカ国民はすべて公正な扱い(フェア・ディール)を受ける権利がある」として、連邦政府の経済規制、社会保障充実、タフト‐ハートレー法廃止、農産物価格支持の継続などを内容としていた。しかし同年なかばにアメリカ経済は戦後初めての不況に突入し、税収も減少したため、これらの政策実施のための財源も不足し、トルーマン政権自身の対ソ強硬政策とも相まって、フェア・ディールの諸政策実施よりも軍拡政策に不況打開のコースが向けられていったため、フェア・ディールのもとでニューディールの実績はかえって縮小していった。
[陸井三郎]
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トルーマン政権の社会政策。ニューディールを継承してリベラル派の立場に立ち,社会保障の拡充,最低賃金引上げ,低廉住宅建設などの施策を推進,連邦公務員における人種差別の廃止でも成果をあげた。
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…戦後はソ連との対決姿勢を強め,47年に〈トルーマン・ドクトリン〉を発表したのをはじめ,48年ソ連のベルリン封鎖に対抗して空輸作戦を指令,49年北大西洋条約機構(NATO)を結成するなど,〈冷戦〉外交を展開し,さらに50年朝鮮戦争にあたって韓国援助のため派兵を決定した。48年の大統領選には彼の政策に対する批判から民主党内が3派に分裂する中で一般の予想をくつがえして勝利をおさめ,内政面ではニューディールを継承・拡大する〈フェアディール〉政策を提唱した。その中西部風の素朴な人柄や凡庸な風采は,ローズベルトとあまりに対照的で国民をとまどわせたが,大統領としてのトルーマンは国防総省,中央情報局(CIA)の設置など政府機構の改革を実現したり,一貫して公民権の擁護を主張し,また,朝鮮戦争に際し方針を異にするマッカーサー司令官を断固解任して文官優位の原則を守ったことなどにみられるように,強力な指導者でもあった。…
※「フェアディール」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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